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第66話 vs 知的生命体!……特に思う所はなァい!!


「方角、北北西!数、無数……来るぞッ!!」


 バレリアさんが鋭く声を上げる。

さっきまでツルハシ片手に岩山を掘っていた兵隊さんたちが、即座に持ち場を離れる。

ある人は武器をかき集めて走り、ある人は走竜を全部影の方に誘導している。

うわあ……すっごい練度。

みんな、とってもキビキビしてる!


「アカ!」「あいっ!」


 マーヤの頭からこっちへ飛んできたアカに、干しリンゴを放る。


『今はこれで我慢してね!あとでいっぱいご飯食べよ!』『あいっ!』


 マントを羽織り直し、黒棍棒を背中から引き抜く。

それを右手に持ち、左手の棘に……魔力を、集中!!

いつでも、攻撃できるように!


 轟音を立てて、飛来した色んな魔法が結界に激突していく。

おおお……凄い結界だ、ビクともしてない!


『多人数で展開した上に、バレリアさんがあの魔力量で補強をしたのです。おそらく、竜種のブレス……しかも複数回の直撃にも耐えるでしょう』


 強すぎでは!?

あ、じゃあこのままここにいれば安全じゃん!


『いえ、魔法が通用しないなら次は……』


 トモさんが言っている間に動きがあった。

魔法がバンバン飛んで来る岩山の向こうから、全身黒ずくめの影が何人も躍り出た!

うわあ!見た感じで最高に怪しい格好!ニンジャだ!ニンジャ!!


「近接用意!前衛は身体強化詠唱!!弓隊、構えーッ!!」


 だけど、この展開は予想していたのか。

バレリアさんの指示に兵隊さんがサッと動く。

槍を構えた人たちは前に、この世界に来て初めて見るでっかい弓を持った兵隊さんは後ろに展開した。


「すまんが、自分の身は自分で守ってくれ!」


「ハイ!」


 まあ、それは当然だよね。

別にボクたちは、守られるほど弱い存在じゃないし!


「デモ、結界ガアルノニドウヤッテ攻撃ヲ……」


 思わずこぼした言葉に、バレリアさんが反応する。


「安心しろ、この結界は外からの攻撃は通さんが、内からの攻撃は通す」


「便利!」


 そんな都合のいいものがあるなんて!

魔法ってやっぱすっごいや!!


「フフフ、これでもそこそこの使い手なのでな……来るぞ!弓隊、斉射用意――」


 金属製の重そうな槍を片手で持ち、バレリアさんの空いた片手が真っ直ぐ上がる。


「おやびん、うつ?うつ?」


 頭上のアカが聞いてくるけど、連携の邪魔になっちゃいけない。


「イヤ、兵隊サンニ最初ハ任セルヨ」「あいっ!」


 そんな話をしている間にも、黒ずくめの一団は岩山を凄い速さで駆け下りて……こっちへ向かって突撃を開始した。

武器はこれまた真っ黒なロングソードと、丸い盾。

足が速いなあ……シルエットからじゃ性別も、種族もわかんない。

それにしても、警告とかナシでいきなり撃っちゃっていいんだねえ、乱世乱世。


『先制攻撃されましたし、当然のことかと』


 そういえばそうでした!

あの魔法が直撃したら大ダメージになるのはなんとなくわかるし、忖度も必要ないってことか……


「向こうさんも身体強化の使い手か、魔法を撃ったのはまだ後ろに控えてやがんな」


「揃えの装備といい、ただの盗賊ってワケじゃない、ね」


 ターロが斧を、マーヤが扇子のようにナイフをズラっと並べて構えた。

そんなに持ってたんだ、在庫。


「組織的な相手でやんす。動きに迷いがねえのす」


 ボクの横で槍を構え、穂先に魔力を集めているロロンが言う。

そういえばこの子、放つタイプの魔法も上手だよね。

バレリアさんみたいに、珍しい獣人なのかな。


「――放てッ!!」


 バレリアさんが叫んで手を振り下ろす。

それとほぼ同時に、引き絞られた弓から無数の矢が水平に飛ぶ。

はっや、ロクに見えないや!


 放たれた矢は、真っ直ぐに相手へと向かっていく。

避ける素振りもない、いや、早すぎてそれもできないのかな?

これならどう考えても直撃する……


「――フムン、そうでなくては」


 結論から言うと、矢は誰にも刺さらなかった。

奴らはロングソードと盾を使って、矢を切り払ったり防御したりしながら速度を落とさずに突っ込んでくる。

ひええ、凄いや。

で、でも結界さんがいるから――


「っち、反転……いや、同化浸透術式か」


 えええ!?

黒ずくめの人たち、なんか……水中に潜るみたいに、結界の中に入ってきた!

波紋みたいなのが浮いて、じわって入って来る!?!?


「だがまあ、そうだろうな……構え!」


 だけど、バレリアさんも。

そして部下の皆さんも一切動じていない。

前列の全員が、一斉に槍を構えた。

同時に、穂先に凝縮された魔力が渦を巻く。


「殺しても心の痛まん最高の下衆共だ……かかれーッ!!」


「「「ウオオオオッ!!!!」」」


 号令と共に、兵隊さんたちは一斉に雄たけびを上げて黒ずくめ達を迎え撃った。



・・☆・・



「馬鹿め、結界術式だけが我々の得手だと思ったか。あたら命を無駄遣いしよって」


 ……し、仕事が、ない。


 強キャラムーブを醸し出しながら殺到してきた黒ずくめの一団。

そいつらは――


「ぎゃばぁッ……お、ぁあ!?!?」


 はい、今最後の一人が胸を槍で貫かれたところです。

……そういえば、知性ある生き物どうしが殺し合うのを見るのは初めてだけど……その、特に何も思わないね。

ボクはひょっとして無慈悲ジャンル虫なのかもしんない。


 ともかく、バレリアさん配下の兵隊さんはみんな強かった。

無茶苦茶、強かった。

ロングソードで斬りかかる黒ずくめの攻撃を躱すか弾くかして、即座にグサーッ!!って感じ。

派手な動きは何もなかったけど、無駄を排除した機械のような正確さだった。

『見事な突きの所作でやんす……!』ってロロンが感心していたから、やっぱりすごいんだと思う。

ボクはおそらく武術の心得が皆無なので、凄いな~ってことしかわからない。


 あ、ちなみに兵隊さんはみんな無傷です。


「隊長ォ!やはり――」


 そんな無事だった兵隊さんが、死んだ黒ずくめの覆面を剥いだ。

ニンジャめいたその覆面の下にあったのは……


「人族、だろうな」


 人間の男だった。

その後も、襲ってきた全員の覆面が剥がれたけど……年齢層は違っても全員、人間だった。


「人間ノ盗賊、ダッタノカナ?」


 自分でもそんなワケないと思うけど。


「あんなに装備の揃った盗賊なんざいねえって。結界に同化するんだぜ?そんなもん一介の盗賊が用意できるはずねえよ」


「ダヨネー」


 ターロに同意だ。

結界を破るでもなくじゅわ~って入ってくるんだもん。

絶対に高いや。


「まあ、普通に考えて【アーゼリオン】か【オルクラディ】の兵隊だと思う。身元が分かるようなものは絶対に持ってないだろうけど」


 マーヤが言うのは、いつか聞いたキツい人間の国!!

ふえ~……やっぱり攻めてくる気満々なんだね。


「ジャア、密偵カナニカ?ヨク【セヴァー】ガ発掘サレタノワカッタネ」


 レーダーでもあるのかな。

そんな風に考えていると、バレリアさんが戻ってきた。


「いやいや、予想よりもかなり弱兵だった。装備は随分と立派だが、実力が伴わっていない……【トカゲに竜鞍】というやつだ」


 豚に真珠的なことわざなのかな?


「ソンナニ弱カッタデスカ?」


「ン、初めに魔法を撃ってきた連中の方が主だろうな。初手で結界の強度を推測し、捨て駒を投入して……敵わぬと見ればサッと退く、損得を知る厄介な相手だよ」


 あの黒ずくめさんたち、捨て駒なのか。

貴重な装備を着ているのにポイポイ捨てるって……お金持ち!

そういえば、魔法ボコボコ撃ってた人達は影も形もないや。

あっちはちょっとデザインの違う黒装束だった気がする、フードとかあって。


「どちらにせよ油断は出来ん……どこからか街を監視し、我々が動いたのを察知して即座に展開してきたのだからな。まさか、アレほどで諦めるとも思えん」


「なんで、なぁんで?」


 バレリアさんの肩に飛んでいったアカ。

その頭を撫で、彼女は続ける。


「フフ、人族どもにとって【セヴァー】は垂涎の的。なんとしても手中に収めようとするだろう……厳重に封印されては手出しもできんからな、チャンスは掘り出してから移送するまでの間しかない」


「あはは!あははは!!」


 真面目なことを言っているのに、バレリアさんの手は的確にアカの首や耳のあたりにちょっかいをかけている。

アカは猫じゃらしに襲い掛かる猫ちゃんヨロシク大興奮だ。

うーん、マルチタスク。


「死体を片付けたら発掘に戻る、すまんが食事でもしながら待っていてくれ。アレだけで終わるとも思えん……今の状況では伝令も放てんからな」


「アッハイ」


「しぇば、ワダスも」


「薪、割るか~」


 ロロンとターロが動き出す。

キミたち!目の前で人が死んだってのにご飯なんか……普通に食べれるね、ボク。

やっぱり冷血虫なんかな~?

でも魔物の死体とかさんざん見たからな~……不可抗力で。


「おやびん、ごはん、ごはーん!」


「今日ハナンダロウネ~?」


 まあ、いいか。

襲ってきた相手に同情する程平和主義者じゃないし。

大事なのはアカに、ロロンに、そしてお友達!

加えて……トモさーん!!


『あらまあ……お上手虫!』


 嬉しそうで何よりで……さっきもやったね、このくだり。

ま、とにかくご飯だご飯。

何にもしてないのにお腹は減るのだ。

働かずに食べるご飯もまたおいしいのだ。



「ンマイ、ンマイ!」「んま!んま~!」


 出がけに市場で買ったレタスの異母兄弟みたいなのとお肉が挟まってるパン、美味しい!

炒めたマルモもイイ感じだね……!

ロロンが一生懸命コネコネしたハンバーグもジューシー!

異世界バーガー、最高!

胡椒っぽい香辛料オンリーの味付けだけど、無茶苦茶おいしい!


 ……異世界にもこの料理方法あったんだね~、ボクの地球産お料理無双計画が消滅した!

消滅したけど、おいしいからいいや!


「んっめ、ロロンは料理上手だなぁ……マーヤ、見習えよ」


「肉を焼くことしかできないターロにだけは、言われたくない」


「おめえだって揚げるか茹でるくらいしかしねえじゃねえかよ!ムークも何か言ってやってくれ!」


「バ、万物ハ揚ゲレバ食エルッテ言ウシ……」


 急に話題を振らないでいただきたい!!


「にゃ、にゃ~♪」


 マーヤがニャって言った!

何か嬉しいことがあったんかな!?


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