第98話
アメジストは弾丸を散弾へ交換し前線に立つ。
「さてと、ここからミーの伝説が始まるですヨ」
「アメちゃん、意気込むのは良いけれど装填した銃でチャンバラは止めなさいよ? 暴発するから」
パールからいくつかの指摘を受けアメジストは迫り来るモンスターの群れに向けて銃を構える。
「メインカメラを壊した罪により銃殺刑!」
モンスターが約4メートルまで接近した所でアメジストがトリガーを引き散弾が発射される。1発の威力は低くともそれが数十発ともなれば話は別だ。全身に散弾を受けたゾンビやスケルトンは塵へと還った。
「やったね! すごいよアメちゃん!」
「これがミーの実力ですヨ」
「調子に乗らないの。使える事が判ったんだからここで使い切っていくわよ」
喜ぶサファイアとアメジスト。一方パールは不良在庫となっていた散弾を全て処分する腹積もりだ。
戦闘が始まり3刻、4刻が過ぎてもまだモンスターが減る気配が無い。全員に疲労の色が見え始めた頃ルビーの頭上で電球が光った!
「火遁円舞!」
火遁の術が渦を巻きモンスターを数匹呑み込んだ。
「ルビーちゃん、今のって何?!」
「判らない。けど突然閃いたんだ」
「上位の術を覚えたんだと思うわ。ずっと火遁の術を使っていたからでしょうね」
「よっしゃ、これでアタシも範囲攻撃が出来るって訳だ!」
指を鳴らしながらルビーは火遁円舞を連続で放つ。
「無駄に触媒を消費していざって時に役立たず、なんて事は止めてよね?」
嬉々としてモンスターを薙ぎ払うルビーにパールは釘を刺す。しかし上位術の会得により後衛の負担が減ったのは確かだ。
休憩しつつMPを回復させるサファイア、パール、ペリドット、アイリス、リザ。その隙間を埋める様に立ち回るのが触媒を使用するルビー、アルミナ、セリアだ。前衛のシトリン、ローラ、レシルも範囲スキルで援護する。
◇◆◇◆◇
「これで最後だよ~、ヒーリング!」
サファイアの回復魔法がゾンビ3匹を包み込む。不浄な力を浄化され塵へと還るゾンビ達。
それが消えると反対側まで行くのが億劫なほど広い広場の全貌が明らかになった。点在する宝箱は全部で7つ。先走るサファイアをルビーとパールが慌てて止める。
1つ目の宝箱は5,000ケロだった。ルビーとアメジストは微妙な金額だと不満を漏らす。
2つ目はレア属性のオリハルコンブレットだ。
「これはアメちゃんね」
「1発しか持てないレア属性の弾丸なんて意味あるですカ?」
「ここぞと言う時に取っておくしかありませんね」
またも不満を漏らすアメジスト。苦笑しながらアイリスがフォローする。
3つ目の宝箱は片手刀のにっかり青江が入っていた。
「これはアタシが貰って良いんだよな?」
「ルビーちゃんしか装備出来ないから問題無いよ」
正確には侍のローラも装備出来るが、今回のダンジョン攻略は入手アイテムは全てジュエルボックスへ譲渡する。という取り決めが成されている為、にっかり青江はルビーが受け取った。
4つ目はハイエーテルが4つ入っていた。
「ここまでMPを使わせておいてこれだけなのはショボいと言わざるを得ないですヨ」
「アタシもそう思う。究極霊薬くらい用意しとけってんだ」
2人の言う事も最もだがこればかりは仕方ない。
5つ目の宝箱には20,000ケロが入っていた。そこそこの額だが、ここまでの苦労に見合ってないとルビーとアメジストはぼやく。
6つ目の宝箱を開けた途端、中から大鎌を持ったスケルトンが現れた!
「コイツ、どうやって入ってたですカ!」
「そんな事言ってる場合じゃ無いでしょ」
―スケルトンはデスを唱えた―
「金的…」
開幕で即死魔法を詠唱するが、シトリンのスタン技で詠唱を止められあっという間に片付けられた。
「ふぅ、油断した…。まさかここでトラップが仕掛けられてるなんて」
「ウカツですヨ」
「でも何か落としたよ?」
「へぇ、曲刀じゃない。これは私が貰って大丈夫そうね」
「青龍刀だね、私も欲しいって言いたいけど約束だから諦めるよ」
ルビーが罠を見落としたお陰で手に入った青龍刀、パールからしてみれば棚からぼた餅である。
「まてよ、宝箱の中にまだ武器が入ってる」
「ほへ? ホントだ。杖みたいだね」
「つまりトラップのモンスターのドロップ品と、元々宝箱に入っていた杖の2つを手に入れたですカ?」
「運が良いわね~、この杖はペリドットさんかしら」
「あ、凄いです。INTとMNDがブーストされるんですね」
「滅鬼積鬼って名前なんだ~、杖って言うよりまるで鬼の金棒みたいだね」
全員が思っていたが敢えて口外しなかった事をサファイアが言うもんだからその場の空気が凍りついた。
戦利品をテキパキと振り分けるパール。ユニークスターズはジュエルボックスを囲み不測の事態に備える。
そして最後、7つ目に入っていたのは………正気じゃない武器だった。
「ええ?! どうして? これは奇襲戦で手に入れたのに、ここでも手に入るの?」
珍しくアイリスが取り乱している。何でもこのメテオストライクを手に入れる為に半年間も奇襲戦に通ったと言う話だ。
「サファイアさん、メテオストライクはレベル50からの装備だからもう少し待つ必要があるわね」
「え~早く装備したいよっ」
「シューティングスターだって大概イカれた武器なんだから少しは我慢しろよ」
専門の盾役が居ないジュエルボックスではサファイアが好き勝手暴れるとターゲットの保持が出来なくなり最悪パーティが瓦解する。そんな危険を孕んだ武器を野放しには出来ずルビーとパール、そしてペリドットの監視の元サファイアの使用が認められた。
「ところで、次の部屋ってどこ?」
サファイアが辺りを見渡しながら質問する。
「どこかに通路があると思うんだけどな…」
ルビーからは曖昧な言葉しか返って来ない。
「効率重視で手分けして探すか、安全を考えて全員が固まって行動するか、どちらかよね」
「パーティ毎に別れた方が効率的ですけど罠やモンスターに遭遇した時が怖いですね」
「ここは安全策を取らないか? ここの罠は明らかに意地が悪いしモンスターもやたら強いのが混ざってる」
選択を迷っているパールとアイリスにルビーが提案する。ルビーの言う通りスカウター系の探索スキルが無いと罠の回避は難しいし大鎌を持ったスケルトンやワイバーンが出て来たらパーティ単位では全滅必至だ。
「それじゃ1度通路まで戻って入口から時計回りに調べて行きましょうか」
◇◆◇◆◇
「確率1/2とは言え…入口が見えてる場所に出口とか性根腐ってんじゃねぇのか!?」
ルビーの叫び声が広場に木霊する。
「全員が見落としてたし、連帯責任ね」
「逆時計回りだったらすぐに見つけられたね~」
パールもサファイアもやれやれと言った表情だ。ビッグエッグ4つ分の外周を歩かされたのだ、全員はもうぐったりしている。
「ともかくこの出口が次の通路なのは間違い無いですヨ」
マッピングをしていたアメジストが言う。広場のいくらかは空白のままだが、全員がそれを埋める気になれないのは顔色を見れば判る。
「それじゃ次の部屋へ行こうよ」
「アタシはセーフティエリアがあれば嬉しいぜ」
「確かに、広場だけでもかなりのMPを消費させられたものね」
「まだ罠が有るかもしれません、気を付けて進みましょう」
先へ気が逸るサファイア達をアイリスは窘める。幅2メートルくらいの通路を進むと小部屋に突き当たる。その中央には円形の台座があった。
「魔方陣があるよ、なんだろう…」
「ここに書いてあるわ、地上帰還用ですって」
「って事はようやくクリアしたのか~」
「このダンジョンは2度とゴメンですヨ」
疲れて無いのかサファイアは魔方陣へとてとてた歩いて近付く。それに続いてパールも魔方陣を覗き込む。ここがダンジョンの終着点と解りルビーとアメジストが背中合わせにへなへなと崩れ落ちる。
「ここならモンスターも出ないでしょうから少し休憩していきますか?」
「魔方陣で移動したらボス部屋だった…なんて事は無さそうだけど休憩に賛成」
アイリスの提案にレシルはその場へ座り込んだ。他のメンバーも思い思いの場所に座り休憩を始める。パールは少しでも疲れを癒そうとハーブティを用意した。ハーブの香りが小部屋に広がり戦闘続きで昂っていた精神をリラックスさせる。
「それにしてもいやらしいトラップばかりでしたね」
「絶対初級ダンジョンの罠じゃないよ~」
「にゃんか1週間くらい潜っていた気がするにゃ」
「1週間は言い過ぎ」
「けど倒したモンスターの数はぶち多いよ」
「そうだね、私もあんな数に囲まれたのは初めてだよ」
アイリス達がバットマウンドのダンジョンを振り返っている間にパールは後片付けをし、帰還の準備を進める。サファイアがぴょこんと立ち上がると皆も釣られて立ち上がる。
「さ、帰ろ!」
サファイアは元気良く言った。
予定以上に長くなってしまったバットマウンドのダンジョン編はこれで終了です。ここまでのお付き合いありがとうございます。
次回以降はレベルの限界突破編に入る予定です。
今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。




