第95話
「これ、何回目だよっ」
ルビーが吠える。何度マジックボーナスを重ねても大スケルトンは倒れる気配を見せない。
「まだ7回目よ、焦らないで。それに負けが決まった訳じゃないわ。それよりもアイテムを少し振り分け直すわよ」
パールに考えがあるらしくコーポレーションのマナドリンク、エーテルそしてハイエーテルと霊薬までもが振り分けの対象になった。パールの指示に従い魔法を使う者同士が慌ててアイテムをトレードする。霊薬は攻守の要であるサファイアとペリドットに渡った。
「さ、もう1度マジックボーナス行くわよ」
◇◆◇◆◇
大スケルトンが倒れた頃には雑魚のスケルトンは全て塵になり、残るは大鎌を持ったスケルトンのみとなった。
「倒しても倒しても骨骨骨骨…いい加減うんざりだ」
ルビーの言う事も最もだ。地下5階はスケルトンとしか遭遇してない。それも200体を優に越している。
「ホネホネロックでも歌う?」
「何訳分からん事言ってる」
サファイアの言葉にルビーは律儀に返す。
「ロックって英語で言ったら69だよね、なんかえっちだ」
「余裕見せるのも良いけど仕事はしてよね」
サファイア並みに意味不明な事を言うレシル。軽口を返しながらパールは大鎌のスケルトンを丸呑みする。そして吐き出す、
「気を付けて! そのスケルトン、毎日腹筋を欠かして無いわ!」
そう言い放つ。スケルトンの何処に鍛える腹筋があると言うのか。
「魔導師タイプなのに筋力トレーニングしてるんだ!?」
違う、そうじゃ無い。しかしサファイアのツッコミに誰も反応しない。
「厄介な魔法唱えられる前に倒しちゃおうよ」
レシルの言う事に誰も否は無くサファイア達はマジックボーナスを仕掛ける。しかし大鎌のスケルトンも先に戦った個体とは桁違いの強さで、火や光の属性攻撃にも耐え、シトリンが関節を砕いてもすぐに再生する。
全員がデスに警戒している為、技連携が上手く繋がらない事態にまで陥ってしまっている。その隙を突いて大鎌のスケルトンは溜めを作る。
「っ! シールドバッシュ!」
即座に反応したレシルがスタン技で止めに入るが大鎌のスケルトンのスキル…ダーククラウドが実行されてしまう。
「吸収!」
「魔法範囲化、キュア!」
脊髄反射でパールとサファイアが状態異常を治す。
「ぶちムカつく、完全に手玉に取られとるのぉ」
「焦ったら相手の思うつぼよ」
焦れるセリアをリザが制する。
「じゃけんどどがぁすりゃええんじゃ」
「デスの詠唱は長がいから唱え始めたら私が峰打ちするにゃ」
「猫だましと金的、やる」
マジックボーナスに参加しないローラ、技連携2手目のシトリンはデスの詠唱が始まってもスタン技で潰せると言っている。
「皆、落ち着いて確実に繋げましょ。残りのMPに不安が有るならどんどんアイテムで回復して」
「焦る事は無いです、普段通りやれば問題ありません」
ジュエルボックスの精神的柱のパールが復活するとそれに釣られユニークスターズのブレーンであるアイリスも呼応するように立ち直る。
その時を待っていたかの様に大鎌のスケルトンはデスを唱える。
「させにゃい、峰打ち!」
「猫だまし!」
ローラが刀の峰で左の鎖骨を砕き、シトリンは大鎌のスケルトンの目の前で両手を叩き驚かせてスタンさせようとする。が、やはり詠唱は止められない。
「…金的」
どこか闇を背負ったシトリンが先よりも高くスケルトンを蹴りあげた。50センチほど浮き上がりましたよ? 確実に、物理的に潰れてますよ!
一方、大鎌のスケルトンは詠唱を中断されるが、ヘイトの高いレシルへと刃を向ける。
「お~、やっぱりまだ来る? 良いよ良いよおいで」
楽しそうに目を輝かせながら大鎌のスケルトンに対峙するレシル。視界の端にルビーとパールを確認すると立ち位置をずらし、大上段から振り下ろされた大鎌を盾で受け止め閃煌でヘイトを稼ぐ。
ルビーはレシルが場所をずらした意味を瞬時に理解しパールの背後へ回る。騙し討ちを乗せた蛇咬双牙を撃とうとした瞬間、レシルが閃光を唱えた。その相手は大鎌のスケルトンでは無く…、ルビーの背後に居たワイバーンだった。「まだ来る」の意味をここで理解したルビー、しかしだからと言ってやり方を変える訳にもいかない。
「蛇咬双牙!」
大鎌のスケルトンへウェポンスキルを撃つとすかさずシトリンが三段飛燕脚を繋げる。アメジストのラストシューティングが撃ち込まれ地獄の痛みと繋がればパールとレシルの円陣剣の出番だ。そしてサファイア、アイリスの天罰降臨で締められる。
「マジックボーナス光! 遠慮するなですヨ!」
火、雷、光の属性攻撃が大鎌のスケルトンを襲う。しかしこれで倒せないのはここまでの戦いで経験済みだ。だが大量のスケルトンと大スケルトンへ魔法を撃ち続けたのだ、後衛のMPは残り少なくなっている。
パールがハイエーテルでMPを回復させる。リーダーが迷う事無く高位のアイテムを使う事で他のメンバーもハイエーテルを使いやすくなる。
「アンデッドばかりで油断したわ、まさかこんな隠し球があったなんて」
「ね、びっくりだよ。でも俄然面白くなってきた」
パールとは対照的にレシルは楽しそうだ。しかも大鎌のスケルトンとワイバーンを相手にしながらだ。
「皆、立ち位置に気を付けて。ワイバーンは範囲攻撃があるよ」
自分の後ろに後衛が居ない様に立ち回っているレシルだが、声にする事でメンバーへの注意を促す。
―ワイバーンはディスペルウィングを実行―
ワイバーンのスキルにより強化が全て消されてしまった。弾かれた様にサファイアはコーポレーション全体が範囲に入る位置まで移動しエクスプロテクションを唱え始める。
「サファイアさん、ダメ!」
―ワイバーンはドレッドシュリークを実行―
アイリスの制止も間に合わずコーポレーション全員が強度の麻痺に侵される。
―スケルトンはデスを唱えた―
最悪のコンボだ。頼みの綱であるサファイアのキュアは麻痺で唱えられない。セリアのアイテムによる回復も同様だ。レシルは強化を剥がされた状態で大鎌のスケルトンとワイバーンの猛攻に耐えている。
そしてシトリンの金的まで麻痺で潰れた。
デスの詠唱が終わりレシルは倒れた。
大鎌のスケルトンのヘイトはマジックボーナスで高ダメージを叩き出したアイリスへ。ワイバーンはすぐ近くに居たルビーを襲う。
ルビーとアイリス、そしてリザが倒され絶体絶命のピンチにパールの円陣剣が放たれた!
モンスターのヘイトはパールへ向く。
アルミナのアンデッドキラーがパールへ掛かる。しかし焼け石に水、パールのHPはどんどん削られていく。
―スケルトンはデスを唱えた―
再び大鎌のスケルトンはデスの詠唱を開始する。
一方的に蹂躙され“全滅”の言葉が全員の脳裏を過ったその瞬間!
「キュア! そんでもって魔法範囲化のキュア!」
サファイアが麻痺から復活し全員の麻痺を取り除いた。
「みんな、少しだけ耐えて!」
そう言うとサファイアは即座にハイエーテルを飲むと復活をルビー、パール 、リザ、レシルへ掛ける。
「金的!」
詠唱が終わるギリギリの所でシトリンがデスを止める。だがまだ安心出来る状況じゃ無い。再強化を終わらせると再び大鎌のスケルトンへ技連携で挑む。マジックボーナスを受けてもまだ余裕を見せる大鎌のスケルトン。
ここまで高位の魔法や履行技を実行してきたサファイアとペリドットのMPが完全に底をついた。ハイエーテルで回復させてもすぐにMPは尽きてしまうだろう。
「躊躇しちゃだめ!」
パールの声に迷わず霊薬を使う。サファイアとペリドットのMPが大きく回復した。そしてその勢いのまま大鎌のスケルトンを撃破する。
残るは奇襲戦並みの強さのワイバーンだ。サファイア、ペリドット、アイリス、アルミナ、リザ、セリアは魔法が届くギリギリまで後退する。
ワイバーンは突攻撃に対する耐性を持っていない為、ルビーとアメジストの攻撃が減衰されずに通る。
「ようやくミーの見せ場ですヨ」
枷から解き放たれたアメジストはそう言ってアダマンブレットを装填すると狙い撃ち、乱れ撃ちのスキルを併用しワイバーンを撃ち抜く。ルビーも騙し討ちでレシルへヘイトを上乗せする。
ディスペルウィングとドレッドシュリークを警戒しながらの戦いは技連携に影響を及ぼした。6連携は光にしろ闇にしろ回復の要であるサファイアが絡む。ウェポンスキルを撃つ為にワイバーンへ近寄った時にドレッドシュリークをされては全滅の危険を孕む。やむを得ず技連携は3連で止めてリスクを減らざるを得ない。
◇◆◇◆◇
「魔法範囲化、キュア!」
緑色の光がメンバーの麻痺を取り除く。持久戦になったワイバーンとの戦いはじり貧になりつつあった。マジックボーナス分解を作りアイリスの神鳴りを撃ち込むがマジックボーナス光の時ほどのダメージは出せずジリジリと焦りに似た感情がコーポレーションを包み始める。
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