第83話
せっかくのお盆休みなので3日連続アップしようと思います。
1日目はユニークスターズの新メンバーとの交流とダンジョン攻略の準備です。
毎度馬鹿げた話になりますが今回もクスリ、として頂けたら幸いです。
「それで、皆さんレベルがバラバラなのですが、どう言った基準で選ばれたのですか?」
パールがジュピターに問う。
「見ての通り全員女性なんだ。実は彼女達、ダンジョン未経験なんだ。実力はあるのだけど男と一緒にダンジョンへ潜るとなるとね、色々問題が出て来るんだよ」
「あ~、お風呂だね!」
「デリケートな話は声を抑えろっ!」
ハリセンがサファイアの後頭部を打ち据えスパァン! と派手な音が室内へ響き渡る。その光景を初めて目にするレシルとセリアは驚いていた。
「いや、全くその通りなんだ。そこへ君たちがハウマッチの初級ダンジョンを抜けて来たと言う話を聞いてね」
「それで私達とコーポレーションを組んでダンジョンの経験を積ませようという事でしょうか?」
ジュピターの話をパールが引き継ぐ。
「大丈夫、除霊師のアルミナが居ればどんなモンスターも極楽へ逝かせてあげる♪」
「1番レベル低いけどな」
「マジギリギリですヨ」
せっかくアルミナが神通棍を構えポーズを決めてもツッコミが入っては台無しだ。
「ですけどダンジョンの経験とエーテル等の買い取りの因果関係が…」
「それはだね、アイリスのレベルが高くてジュエルボックスのみんなにほとんど経験値が入らないから、せめてものお詫びと言う訳だよ」
「そんなに気を使って貰うのは悪いですよ」
「せっかくなんだから甘えとけよ」
「遠慮するなですヨ」
遠慮するパールにルビーとアメジストはジュピターの後押しをする。
「あまり遠慮ばかりしてると相場の50%増しで買い取るよ?」
「いえ、それはダメです。知り合いからそんなに頂けません」
「マナドリンクを倍額で出品したヤツが何か言ってるぜ?」
「競売の悪魔も人の子だったですヨ」
「あなた達、後で覚えてなさいよ」
この後、パールとジュピターの押し問答は続き結局相場の120%で決着した。
さて、後は出発日なのだが、ユニークスターズ側は既に準備を終えていて直ぐにでも出発出来る。しかしジュエルボックス側は昨日ダンジョンから戻って来て今日はそのまま1日中合成をしていた為、すぐには出発出来ない。なので翌日はダンジョン攻略の準備をする日にして、翌々日出発する事となった。
出発時間を決めサファイア達は帰ろうとした所をアイリスの強い要望(ゴリ押し)で夕食も一緒にする事となった。さすがのユニークスターズの食事は豪勢を極め、…てはおらず普段サファイア達が食べているメニューと変わらなかった。倹約してる所はしている様だ。
食後の歓談が始まるとジュピターは気を利かせて退席する。女性ばかりだと話の種は尽きる事無く、気が付けば宵の口となっていた。せっかくだからとアイリスは入浴してから帰るのを勧めるが、豪邸のお風呂は1人用の湯船しか無く、それが5室あるだけだ。いや、それでも十分凄い事なんだが。それでも全員が入るには時間がかかり過ぎていたしまう。
「だったらみんなでギルドハウスのお風呂に行こうよ」
「サファイアさん、それはユニークスターズの皆さんが手間なのでは?」
サファイアの提案にペリドットが問う。
「ウチは別にかまわんよ、裸のお付き合い言うしここでバイバイもつまらんけん」
「私も賛成かな。まだ話し足りないもん」
セリアとレシルの同意で全員揃ってレンタルハウスの大浴場へ行く事となった。キャリッジタイプの馬車が2両用意されていたが、雨が上がり月明かりが出ていたので徒歩で向かう事にした。しかし12人もの女性が一斉に移動するのだ、街中の男達は目を奪われない訳が無い。中には口笛を吹いて気を惹こうとしたりする輩も現れた。冷やかしにも似た好奇の視線を歯牙にも掛けず一行は進む。
程なくしてレンタルハウスへ到着すると一行はそのまま大浴場へと向かった。普段より人が多く感じる脱衣所で服を脱ぎ浴場へ入ると浴槽は修学旅行かと見紛う程の人で溢れていた。
「完全に出遅れたな」
「これじゃみんな一緒に入れないよ~」
ルビーがやれやれと浴場を見渡す。
「仕方ないから空いてる場所へ別れて入りましょ」
「そうするしか無いですヨ」
パールやアメジストも諦めて別行動を選択した。そうなるとサファイアの狙いはレシルとセリアだ。2人の後ろを着いて回りきっちり浴槽で2人の間に収まった。
「レシルちゃん、大きいね~。ペリドットちゃんぐらいじゃないかな」
のっけからこれである。同性でなければ完全にセクハラ発言だ。いや、同性でもセクハラなんだが。
「何何、サファイアちゃんっておっぱい好きなの?」
「うん、ソムリエなんだから」
そう言ってサファイアは全く無い胸を張る。
「ウチはそこそこ大きいと思うとったけどレシルと出会ってアイデンティティが完全に崩れさったわ」
「でもセリアちゃんも十分大きいよね?」
「そうだよ、セリアちゃん自信持って」
サファイアとレシルがセリアを慰める。そのセリアも十分豊満でルビーに比肩する。レシルはと言うとペリドットと互角だ。ツインタワーと言っても差し支え無い。
「胸はサイズが大事じゃけど形も重要じゃけんね、今はそこまで落ち込んどらんよ」
「と言う事はまたサファイアさんが何かセクハラしたのね?」
3人の背後からパールが話し掛ける。いつもの事とは言え初対面の相手だ。パールは必死に頭を下げる。
「頭上げて、あたしらは気にしてないから」
「そうじゃて、こがあな話は慣れとるけん気にせんでええんよ」
「ありがとうございます。サファイアには後でしっかり罰を与えておきます」
こうして悪は断罪されるのである。
◇◆◇◆◇
翌日、サファイア達は新たなダンジョン攻略へ向けて準備に追われていた。前回の攻略で明らかになったお風呂対策がメインだ。そこじゃ無いだろと言うツッコミは無しにして頂きたい。乙女に取っては死活問題なのだ。
ダンジョンのセーフティエリアには汚水を浄化する機能があり食事の残り汁や洗剤を流しても問題無かった。これを活かし予め大浴場のお湯を分けて貰っておいてこれをシャワーとして使うのだ。洗剤や石鹸はなるべく匂いがしないのを選ぶ。モンスターに関知されやすくなったり男子冒険者をムラムラさせない為だ。アメジストは襲ってきた不埒者は銃殺刑ですヨとか物騒な事を言っている。しかしそんな事をしては冒険者の資格を剥奪されかねない。まあ他者を襲う事も銃殺も出来ないんだが。
「他に何か準備する物ってあるかな?」
「うーん、時計があれば良いんだけど…後で競売所を覗いてみましょ」
少し考えを巡らせパールは競売所を選んだ。街の工業系ギルドにも置いていないと判断したのかもしれない。
「灯りは光の精霊で賄うとして、時間を計る為に松明を使うのも手だと思います」
「ちょっと待つですヨ、今回12人居るのに全員に光の精霊を着けるですカ?」
ペリドットの発言にアメジストははたと気付く。精霊1体1体の維持MPは小さくとも12体ともなれば話は別だ。そもそも12体も同時に喚んでその上戦闘まで行うにはペリドット本人にも負担が大きくのし掛かる。
「これは試しておく必要がありそうね。昼から少し出掛けましょうか」
「ついでに松明を持った状態で戦えるかも試してみようぜ」
パールの提案にルビーが乗る。
「それじゃ何本か松用意しないとだね」
「松の原木がありゃ作れるけん」
「なるほど、シトリンちゃんが松明を合成で作れるから、原木を持ってる方が安く上がるしポーチを圧迫しないで済むわね」
「それじゃ松明はシトリンさんにお願いしようかしら」
「ん、了解じゃ」
松の原木1本から松の角材が12本取れる。さらにその角材1本から松明が12本取れる。つまり松の原木1本から合計144本の松明が取れる事になる。これは12人居たとしても1人24時間分の松明である。
ひとまず松の原木は1本で良いとして、競売所へ行く前に大浴場でお湯を貰う所からだ。冒険者ギルドのギルドマスター・ルイーダから許可を得て檜の桶樽に500リットルの湯を注ぐ。この光景にはさすがのルイーダもあんぐりした表情だ。その樽を2つポーチへしまう。次に競売所だが、やはり時計は無くからくり仕掛けの時計も無かった。やむを得ず当初の予定通りに松の原木を購入しそのまま星降る丘の最奥地へ。
「どれからやる~?」
今回あまり関係の無いサファイアがめちゃくちゃ乗り気だ。
「まずは光の精霊12体からやってみましょう。ペリドットさん、準備は良いかしら?」
「はい、いつでもっ」
ペリドットは両手を胸の前で握って気合いに満ちている事をアピールする。
「では、いきますね」
そう言って棍を掲げ朗々と精霊召喚の詠唱をするペリドット。ぽんっと乾いた音を立てて宙に光の精霊が現れる。それに続く様に次々と増える光の精霊。
「1、2、3、4…」
サファイアが指差しながら光の精霊の数を数えていく。
「…14、15!」
「え?!」
「15って」
「喚び過ぎですヨ」
「すみません、気合い入り過ぎました」
「ペリドット、落ち着く」
ペリドットは慌てて3体の精霊を還す。
「とりあえず15体同時は可能だって事は分かったわね」
「後はどれくらい維持出来るか、だな」
ふよふよと宙を漂う光の精霊達を見ながらパールとルビーは言う。当の本人は涼しい顔で光の精霊を撫でている。
今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。