第25話
「ん~美味しかった~♡」
「ホルモンうどんだけじゃなくカキオコまでペロリかよ…」
「見てたこっちが胸焼けするわ」
「その体のどこに入るのやらですヨ」
「アメちゃんだってロボットなのにご飯食べるじゃない」
もっともな切り返しである。
「ミーはロボットじゃなくアンドロイドですヨ」
「同じだバカモノ!」
スパァン! とアメジストにルビーのハリセンがヒットする。すっかり見慣れた風景だ。
「オートマタ族は食べ物を魔導炉でエネルギーに換えて人工筋肉を動かしているらしいわ」
「…という設定ですヨ」
「なるほど、開発者が決めた事なんだね」
色々とボロが出そうなので、これ以上深く追及するのは止めてもらえませんか?
「という訳だからデザート頼んで良いかな?」
どういう訳だよ。
「この“じゅれまっくす”ってゼリー気になってたんだ」
解説せねばなるまい。じゅれまっくすとはヒルマウンテン産の金太郎トマト、梅、柿、ピオーネ、白桃の5種類の味が楽しめるゼリーである。パッケージには可愛い女の子、いわゆる萌えキャラが描かれた“萌えおこし”の1つなのだ。
「これって何てエロゲーだ?」
「ルビーさん落ち着いて、こんな箱だけどれっきとしたゼリーよ」
「どうやらヒルマウンテン出身の絵師が描いたようですヨ」
「すごく可愛いよね、なんだか食べるのがもったいないよ」
と言いつつもこの後しっかりいただきました。
サファイアの体調が良くなったのもあり、レンタルハウスへ戻る道中、レベル上げで不足している装備を買い揃える事になった。
「パールちゃんはナイトだから盾を買うんだよね?」
「ええ、少しでも防御力を上げておいた方がサファイアさんの負担が減るから」
「とは言っても1桁のレベル上げなんて全員で敵をタコ殴りですヨ」
「身も蓋もない事言いやがった」
実際そうなのである。HPを回復している暇があるならとにかく殴る。少しでも早く倒す事が結果ダメージを抑えられるのだ。
「それじゃ私も参加した方が良いよね?」
スチャ、とポーチから取り出したトゥインクルロッドを構える。
「トゥインクルロッドは止めろ。全くダメージ与えられねぇだろ」
「ぶ~、ルビーちゃんこの武器を全然理解してないよ」
「殴りに参加したいならせめて棍棒かメイスにしてくれ」
「可愛くないからやだ」
「メディックなら防具がそこそこ可愛いのあるですヨ。だから今回は武器だけでも真面目にするですヨ」
「可愛い防具!? 見たい見たい!」
「その前にパールの盾だろ」
「レベル1で装備出来る盾なんて円盾しか無いからお店に行けばすぐよ」
パールの言った通りお店には木製の円盾と要所に青銅を使ったLv9からのブロンズシールドしか無かった。盾の買い物が終わると次は防具である。後衛職が装備出来るのはチュニックだ。ダブついたワンピースの腰を紐で括った簡易的なローブである。サファイアは微妙な顔をしたが後衛職が装備出来る防具がそれしかないので仕方ない。
全員の装備が揃い(結局サファイアは武器を買わなかったが)、レンタルハウスへ戻った頃には陽が傾きつつあった。大して汗もかいてはいなかったが、まだ空いている時刻なのでお風呂へ入る事にした。
湯船には1人先客が居た。冒険者ギルドの受付嬢・コボルト族のリツだ。カウンターの中でいつも忙しそうに走り回っている印象が強い。
コボルト族はケットシー族に似て肘と膝の先は体毛に覆われていて犬の様な尻尾が生えている。あとは犬耳、これは大事。
「あ~皆さんお疲れ様ですぅ」
「リっちゃんお疲れさま~、今休憩時間?」
「いいえぇ~今日は~もう上がりですぅ」
ハキハキした仕事中の印象とは180度真逆の間延びした喋り方だ。オフモードだとこうなのだろうか。おっぱいソムリエ(自称)のサファイア曰く、アメジストより少し小さいとの事。
「何だか~失礼な視線を~感じた気がしますぅ」
職業上、他人の視線には敏感なようだ。
「リツ、いちいち気にしてはいけないと言っているでしょう?」
何のかは明言しないがラスボスがあらわれた。
「あ~マスター~お疲れ様ですぅ」
「仕事をしてない時くらいは気を緩めなさい」
「(やっぱりルイーダさんのおっぱいはすごいよね)」
「(なんでアタシに小声で話し掛けるんだよ)」
「(や、何となく?)」
「(サファイアが失礼なのはバレてるんだから今さらだろ)」
「(大丈夫ですわ。私は慣れていますので)」
「うゎひゃあ!」
小声で話していた所へ本人の乱入によってサファイアはすっとんきょうな声をあげた。
「ル、ルイーダさんも上がりなの?」
必死に話題を逸らそうとするサファイア。
「いいえ、私はこれからですの。シャワーを浴びにきたのですが見知った方々がおられたので」
サファイアへにこりと微笑みを返しそれ以上の追及はせずシャワーブースへと歩いて行った。
「やっぱりあの傷痕は消えないのかな…」
去っていくルイーダを目で追いながらサファイアが呟く。
「あ~マスターの傷痕ですか~?」
「うん、けっこう目立つ所だから気になっちゃって」
「そうですねぇ~あのおっぱいじゃなかったら~何事も無かったかもでしからぁ~」
「「え?」」
やや理解し難い単語が飛び出したよ。
「あれぇ~聞いてませんかぁ~?」
「いや、フツー聞けないだろ」
「おっぱいが原因ってどういう事!?」
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