第23話
諸事情により1日遅れでのアップとなりました。今回からサブタイトルを簡素化しました(ネタが尽きたとも言う)。
ルビーとキューニィのペアはと言うと2日目で良好な関係を築いている。これなら免許を発行しても問題無いとミオの太鼓判が出た。額の一部が赤いこのキューニィはクレナイと名付けられた。
免許の発行はキューニィの羽根を1枚右手の甲に乗せるだけ。
「冒険者ルビー、相棒のキューニィをクレナイとする!」
お互いの体が仄かに光り、これで免許の発行とキューニィとの契約が完了した。だがサファイアはフラフラの足取りでイザヨイ(仮)を追っていた。そんな2人(1人と1羽)の間にちょっとした変化が有った。イザヨイ(仮)は逃げる事をしなくなった。しかし未だエサを食べてくれない。1番美味しくて栄養価の高いエサでも甘くてキューニィに好まれるエサでも見向きをしない。
「残ってるのはコレかぁ…」
今持っているエサを手にサファイアはミオを見る。目線が合って微笑まれたが何も言われず、サファイアは腹を決めた。
サファイアは死力を振り絞り残った苦いエサをイザヨイ(仮)の嘴の前へ差し出す。すんすんと嘴の先にある鼻孔で匂いを嗅ぐ。考えるような仕草を見せたイザヨイ(仮)は…、やはり食べ無かった。
「やっぱりね…。その子、そのエサには反応するんだけど全然食べないんだよ。他のエサも何日も食べて無くてさ。そろそろ体力が心配だよ」
「それで今日はあまり逃げ回らなかったのか」
ルビーがクレナイと連れ立ってやって来た。
「イザヨイってば昨日も調子悪そうにしてたし何とかしたいんだよね」
サファイアの言葉にルビーが驚く。
「昨日って会ったばかりじゃないか」
「うん、元気に走ってたけどどこかおかしいような気がしてたんだ」
「アタシには何も判らなかったよ」
「すごい観察力だね。私達飼育員が薬になるエサを与えようとしても拒まれちゃって、結局全員嫌われてエサを食わなくなってるのさ」
「早くエサを食べないと死んじゃうっ!」
「そうさ、だからサファイアに期待してたんだけどやっぱり無理だったかねぇ」
カシカシと頭を掻きながら困った表情をするミオ。
「私、明日も来る! 絶対エサを食べさせるから!」
両の手を強く握り、そう宣言するサファイア。日没になり今日はここまでになったので4人はレンタルハウスへ引き上げた。
「ルビーちゃん、早くジョブチェンジしよっ!」
「その前に汗くらい落とさせろよ。ベタベタしてるし砂埃で気持ち悪いよ」
「ミーも同感ですヨ。傷は癒えてるですガ関節に砂が入って動きが悪くなってるですヨ」
「そっか、言われたら私も何かちょっと汗臭いかも…」
「だからね、ひとまずお風呂へ行きましょ」
◇◆◇◆◇
「本当にあのキューニィがおかしいって気付いてたのか?」
湯船に浸かりながらルビーはサファイアに尋ねる。
「うん、ここがおかしいってハッキリ言える訳じゃ無いけど違和感? みたいなのがあったんだ」
「それであの青いキューニィに固執していたですカ」
「昨日も食事中に言ってたし本当なんでしょうね。それで、明日はどうするの?」
「明日はメディックサファイアちゃんのデビューだよっ!」
「そうじゃ無くて、イザヨイ(仮)に会って何か考えているの?」
「ん~、無くは無いかな」
「何か、心もと無い返事だな」
「だってイザヨイも生きてるんだし、こっちの思う通りに動いてくれないじゃん!」
「まぁそうだけどよ…」
「明日が正念場になりそうね」
◇◆◇◆◇
お風呂から上がったサファイア達は椅子に座り部屋着ですっかり寛いでいる。しかしルビーは冒険から戻った時の装備をしていた。もちろん汗は吹いてるし砂埃も落としてある。どうしてジョブチェンジがレンタルハウスでしか出来ないのか、それを確認するためだ。
「ジョブチェンジ・スカウター」
周囲への迷惑にならない声の大きさでジョブチェンジを宣言する。淡い光がルビーを包み、そして収束する。
「ん? 何だ? 上手くいった…み“だい”……………」
何処かで見た事のある光景だ。サファイアがLv22の指輪を装備した時と同じだった。ルビーは見事に板張りの床へorzしている。
「あ"あ"あ"あ"……」
「なるほど~、こうなるんだねっ」
潰れたカエルのようなルビーを見ながらサファイアは感心する。
「ジ、ジョブチェンジ・ノービス……」
再びルビーを淡い光が包み収束する。
「し、死ぬかと思った…」
「アメちゃんも同じ事してたわね~」
「あの時は腕がもげるかと思ったですヨ」
知ってたなら教えてやれよ。
「確かにこれはレンタルハウスじゃないと無理だな」
装備を外しながら呟くルビー。ぴょん、と椅子から飛び降りたサファイアが天井にトゥインクルロッドを掲げ叫ぶ!
「サファイア・プリズムパワー、メークアーーップ!」
サファイアの体が光に包まれ、やがて収束する。
「やった! 成功したよ! サファイアちゃん天才っ」
ドヤ顔で無い胸を張る。どうやらマクロでジョブチェンジとセリフを実行したようだ。
「かけ声はともかくいきなりマクロの発動を成功させるのは凄いわね」
「えっへん、アメちゃんの釣りマクロを見て勉強してたからね」
「ミーの?」
「そ、『○○を釣ります』のセリフと“ターゲットへの投擲”を1つのマクロでやってたから流用出来るかな~って思ったんだ」
「よく見てたわね…、サファイアさんって本当は頭良いの?」
「そう思うだろ? 普段の行動が奇天烈過ぎて忘れるんだよな」
「何かと天才は紙一重、ですヨ」
「ちょっと、みんなひどいよ。サファイアちゃんは超絶美少女なんだよ?」
「はいはい、そうだな」
「くす、そういう事にしておくわ」
「これで満足ですカ?」
「も~、みんな真面目に答えてよ~~」
こうして夜は賑やかに更けていった。
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