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蒼と紅  作者: 久村悠輝
20/94

明日はそれになる

 ついに20話まで来ました。こんなに続くとは思ってませんでした。


 今回もバカバカしい話なのでクスリとして頂ければさいわいです。


 あと、前話でステータスにHPとMPの項を忘れていました。関数を考えるのが面倒なので気が向いたら追加するかもしれません。

 冒険者ギルドで換金を終えた一行はパールの薦めでとあるキューニィの厩舎へやって来た。ここならぼったくられる事も無く適正価格で手に入るとの事。まずは自分の体格に合ったキューニィを探す所からだ。


「可愛い~~♡ キューニィだらけだぁ~」

「サファイア、あまりうろちょろすると踏まれるぞ」


 夢中になってキューニィを追い掛けるサファイアをルビーは強引に肩車する。じたばたと暴れる脚を落ちない様にしっかり掴み、キューニィを見て回る。


「アンタら新米かい? ウチの牧場の子達は他所よりも脚は速いし疲れ知らずなのが自慢だよ」


 声を掛けてきたのは姉御肌のドワーフ族の女性だ。背はサファイアよりも頭1つ分高いがそれでもヒト族の胸辺りまでしか成長しない。リリパット族とは違い耳が尖っているのでヒト族の子供と見分けるのは簡単だ。もっともがっしりした体格な上に男性は濃いヒゲが特徴なので間違える方が難しい。


「ミオさんお久しぶりです。この2人に合うキューニィは居ますか?」

「何だい、パールとアメジストじゃないか。モンメとウニが帰って来てたから街に居るのは判ってたけど、案外早くに出会えたね」


 モンメはパールの、ウニはアメジストのキューニィの名前である。冒険者1人に1羽のキューニィが基本であるが、中には脚の速い個体を求めて雛から育てるブリーダーの様な冒険者も見かける。


「知り合いのキューニィ探しってならとびきりのを用意したげるよ、付いて来な」


 そう言ってミオは4人を厩舎の裏庭へ案内した。そんなに広くはないが、木製の柵で囲まれた放牧地には10羽程のキューニィが自由に過ごしている。


「この子らがウチの中でもトップクラスで、スピードも体力も共に文句無しだよ」

「ルビーちゃん降ろして! 私、あの子が良い!」

「いてて…おい、耳を引っ張るな!」


 慌てるルビーから飛び降りたサファイアは小柄なキューニィへ一目散に駆けて行った。他の個体より青色掛かった羽毛が特徴だ。


「ソイツは気性が荒いから気を付けなよ!」


 ()()()は自分へ向かってくるサファイアに気付くと猛然とチャージをかけた。


 バァン!


 顎を反らし仰け反るように宙を舞いー


 ドシャァ!


 きりもみ状態で弧を描き顔面から地面を抉るサファイア。


「言わんこっちゃない、【ステイ!】」


 落ちてきたサファイアに追撃の嘴を見舞おうとしているキューニィに拘束魔法が掛かりピタリと動きを止めた。


「あぅぅ、こんな可愛いサファイアちゃんを蹴り飛ばすなんて酷いよ」

「可愛さは関係無いけどな。ソイツはまだ誰にも懐いて無いんだ。速さはピカイチなんだが性格に難有りでね」

「そうなんだ? 青色で可愛いのに…決めた! せっかくだから私はこの子にするよ」


 どう“せっかく”なのか判らないがサファイアはこの青色のキューニィを気に入ったようだ。蹴飛ばされて、つつかれかけたのにタフなメンタルだよ。ともかくキューニィに気に入って貰わない事には免許どころの話ではない。


「絶対、私のキューニィにしてあげるから覚悟してよね!」


 ビシッと指を向けるが、関係無いとばかりに啄まれた。

 さて免許の取得は至って簡単。キューニィにエサをやり続け心を開かせれば良いだけだ。エサにも種類があり、美味しくて栄養価の高いエサ。甘くてキューニィに好まれるエサ。苦いが不調や病気を治しやすいエサ。どれにも属さない無難なエサだ。これらをキューニィの調子に合わせて与えて行くだけ、…なのだがあまり酷い仕打ちばかりしているとキューニィは拗ねてその人間には決して懐かなくなる。


「さてと、アタシはどれにしようかな…」


 放牧地を見渡していると目が合ったキューニィがルビーに近付いて来た。


「お? アタシに興味あるのかな?」


 額の羽根が赤い特徴のキューニィだ。スンスンと嘴の先端にある鼻孔でルビーの手の匂いを嗅いでいる。


「良いね、決めた。アタシはこの子にするよ」

「へぇ、最初から気に入られるなんて珍しいね。この様子じゃ明日にも免許の契約が出来そうだ」


 ミオは感心しきりながらルビーとキューニィを交互に眺めた。冒険者ギルドによって1日に与えられるエサの量は決められている。これはキューニィへの負担を減らす処置だ。

 ルビーはすんなりエサを食べて貰えたが、サファイアは逃げるキューニィを追い掛けるだけで時間が過ぎていった。結局限界まで体力を使いきってもエサを与える事は出来なかった。


「あぅ~~足が棒になったみたいだよ~」

「パールの魔法で何とかならないのか?」

「治癒魔法は疲労に効果無いから我慢してちょうだい」

「そもそも魔法で疲労回復するならこの世の(ことわり)がひっくり返るですヨ」

「鎧が重~い」


 ぶつぶつ言いながらルビーの助けも借りて革鎧をマネキンへ着せていくサファイア。やっとの事で鎧を脱ぎ、アンダーウェアになりフラフラとベッドへ上がると3秒で寝息をたて始めた。


「小さな体で頑張ったもの、少しだけ寝かしてあげましょ」


 パールの気遣いでサファイアが寝ている間に翌日の予定を話し合う事になった。

  まず下級職へジョブチェンジ出来るようになるためのクエストを受ける。そのクエストでモンスターの討伐を依頼されるので、それを倒しに行く。午前中はそれだけで終わりそうなので昼食を挟んでキューニィの所へ行く事になった。その後は再びレベル上げになる。


「そろそろサファイアさんを起こして夕飯へ行きましょうか」

「そうだな、パブが混む前に食べ終わりたいね」

「それじゃサファイアを起こすですヨ」

 今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。

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