君にふれた
何とか第2話の投稿が出来ました。サファイアの暴走は止まりません。
子供の様な外見のリリパット族は通称小人族とも呼ばれ成人してもヒト族の腰くらいまでしか身長が伸びない。もちろん男性は髭も生えないし頭部もハゲない。羨ましい限りだ。
ケットシー族は人間と猫を掛け合わせた様な獣人だにゃん。特徴的なのはネコ耳と尻尾で上腕と太ももは体毛におおわれているにゃん。常に爪先立ちをしていて人族と比べると足が前後に長いにゃん。
「それよりも、ルビーちゃん! 異世界だよ、異世界!!」
とても興奮した状態でサファイアは叫ぶ。
「どうしてここが異世界って言えるのさ?」
対照的にルビーは淡々と返す。
「だって草原しかないんだよ? こんなの異世界確定じゃん!」
「アイルランドかもしれないぞ?」
「アイルランド…? この異世界、アイルランドって名前なの!?」
ルビーちゃん物知り! と言わんばかりに目を輝かせルビーを見詰めるサファイア。一方ルビーはハァとため息をつき―
「…サファイア、中学生から地理をやり直した方が良いかもしれないな」
「ん? んん…?」
どうやらサファイアと呼ばれた少女は頭が弱いらしい。アゴに人差し指を当てて物理的に首を捻ろうが無い知識は絞り出せないし耳からも出てこない。
「つまりアイルランドが異世界だった?」
「違う」
「わかった! アイル世界が異ランドなんだね!?」
「混ぜるな危険」
「ぷ~」
「アイルランドという国にもこんな草原があるかもしれない、って事」
「だったら最初からそう言ってよ!」
最初から言っていた気もするが…。
「持ち物が全部無いのは困るね」
少々の違いはあるが二人ともアンダーウェアと踵紐の付いたサンダルしか身に着けていない。ポケットなんてもちろんない。あるのは10cm程度のポーチがベルトにくっついてるだけだ。
「そうだよ、スマホも現金が8兆642億975万円入った財布も無くなってるんだよ」
「何その四次元財布は」
「これくらいあったら幸せかな~なんて☆」
「日本の国防費より多いよ(2023年現在)。でも、ここが異世界なのはほぼ確定だろうね」
やれやれと肩をすくめ息を吐く。
「そっか、私達ホントに異世界転生しちゃったんだ…」
「そうだな。ほら、あそこに異世界っぽいのが居るぞ」
ルビーの目線を追ってサファイアは首を振る。その先にはぷよぷよとした水色の塊が動いていた。
「あああぁぁぁ! あれこそはキング・オブ・ザ・雑魚モンスター!」
「知っているのかサファイア」
「うん、あれは間違いなく始祖の紋手打・崇雷矛! 幾多の駆け出し冒険者を始まりの街へ送還してきた恐るべき怪物だよ。送還率は脅威の98.765%って“出会ったら最後! やべーモンスター573体(絵似楠書房刊)”に書いてあった」
ドヤ顔で薄い(=ほぼ無い)胸を張る。
「何その怪しい本は…」
ジト目を向けられるも気にする素振りは見せず…。
「やぁぁん、可愛いぃぃぃーー♡」
一目散に崇雷矛(?)へ駆け出していた。
そして…
モンスターの名前って版権が絡む場合があるので気をつけないと(鈴木土下座右衛門事件)