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蒼と紅  作者: 久村悠輝
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言葉は閉じ込めて

「下級職へのクラスチェンジはレベル20以上になりますので頑張ってくださいね。あとギルドを組まれるのでしたらギルド用のレンタルハウスが使用可能ですが如何いたしますか?」

「ギルドを組む? 私達は冒険者ギルドに登録したんだよね?」

「はい、冒険者ギルドは文字通り冒険者の方々をサポートする組合(ギルド)でございます。それとは別に4人以上の冒険者がレベル上げや利益配分等をし易くする為に組むのが集団(ギルド)ですわ」

「すごい良いね、やろうやろうギルド組も!」

「ちょっと待てサファイア。私達にはメリット大きいけど、パールとアメジストにはあまり美味しくないぞ?」

「こちらは別に構わないわよ。ルビーさんが居てくれたらアメちゃんを抑えて貰えるし、私達は利益の為に冒険している訳じゃないから」

「釈然としない理由が混ざってるですガ、ミーはパールに従うですヨ」

「それでは皆さんのギルド名がお決まりになりましたらカウンターへお越しくださいね」 


 そう言い残しルイーダはカウンターの奥へと消えて行った。少ししてテーブルに運ばれたカップからはコーヒーの香ばしい香りが漂う。ノマドを迅速に処理出来たお礼だとルイーダが用意してくれたのだ。

 この世界の食事についてはほぼ日本と同じと思って貰って構わない。これは手抜きでは無い。良いね、決して手抜きでは無い。


「ギルドの名前か~、何かこう異世界っぽいのが良いよね?」

「サファイアの事だから「サファイアちゃんと愉快な仲間達」とか言い出すかと思ったよ」

「ひどいよルビーちゃん、私はそんなに自己中じゃないから」


 頬を膨らませ不満を主張するサファイア。


「手っ取り早く1人1案出してそこから決めるですヨ」

「アタシはパス。こういうの苦手なんでね」


 体育会系(脳筋)のルビーは早くも離脱。


「私はね、必殺技っぽくシャイニングハンドが良いな!」

「ならばミーはグループっぽくシャッフル同志ですヨ」

「むむむ、だったらシン・流星胡蝶剣だよっ」

「ぐぬぬ、東西南北センター不敗ならどうですヨっ」


 ツッコミと言う枷を失った2人が好き勝手言い始めた。


「…ジュエルボックス(宝石箱)なんてどうかしら?」


 ポツリと呟いたパールを3人が一斉に見る。


「えっと、私達全員宝石の名前だから…あはは、安直過ぎるわね」

「良い! すごい良いよ!」

「ん、異議無し」

「決定ですヨ」

「え? もう少し皆で考えない?」

「パール以外にこの面子でまともな案が出せるのが……なぁ」


 ルビーは左右へ座っているサファイアとアメジストに視線を送るが2人とも自覚があるのか不服そうな顔をするだけでそれを口にはしない。


「と言う訳で満場一致だ」

「少し……かなり恥ずかしいけれど慣れよね。うん、慣れれば平気、よね」


 必死に自分へ言い聞かせている様子のパール。


「それじゃ報告頼んだよ、ギルドマスター」

「え? ふえぇ~~!?」


 パールが1番常識人だから仕方ないね。それにしても可愛い驚き方だった。ついでにギルマスまで押し付けられてる。ビジュアル的にエルフ族が1番映えるよね。うん、これは必然だ。


「やっぱりパールさんがマスターを務めるのね。どんなギルド名になったのでしょうか?」


 受付カウンターに居たルイーダはパールがギルマスになるのを確信していた様で特に驚きもせずギルド登録用の羊皮紙へペンを走らせる。


「ルイーダさんはわかっていたのですね…」

「お付き合いは長いですから。アメジストさんとお2人で冒険者登録へ来られた時の事を今でも鮮明に覚えていますよ」


 当時、中堅ギルド員だったルイーダの前に現れたのはとても口の悪いオートマタ族の女の子と、それを謝りながらペコペコするエルフ族の女の子。その姿が強烈な印象だったので今なお昨日の様に思い出せるという。


「出来れば忘れて頂けると助かります。…んん、ギルド名はジュエルボックスになりました」


 軽く咳払いをするとパールは凛とした声で宣言する。


「冒険者ギルド・ルイーダ、これを承認致しますわ」


 パールの声に反応した羊皮紙が魔力でギルド名を浮かび上がらせ、ルイーダの宣言によりそれは4つのブレスレットへと姿を変えた。


「おめでとうございます。無事にジュエルボックスはヒルマウンテンのギルドとして登録されました。とても素敵なギルド名ですわ」


 たおやかな笑みを浮かべパールの新たな門出を心から祝福した。


「それではマスターを登録致しますのでこのブレスレットを右手へ嵌めて下さい」


 ブレスレットを1つ手にしパールへ差し出す。それを言われた通りに右手を通す。ブレスレットはパールの魔力を感知しスルスルと縮みユル過ぎずキツ過ぎず激しく動いても邪魔にならないサイズになった。

 これは他人に奪われない様にする為だ。仮に奪おうとするなら手首を落とすしかない。仮りに他人が装着しても魔力の波形が違うのでブレスレットの機能は効果を発揮しなくなる。これらによりブレスレットを奪って成り済ます行為は意味をなさない。と言う理由だがそもそも冒険者同士の争い(プレイヤーキル)が行えないこの世界ではただの設定でしか無い。


「これから色々と大変だとは思うけれど頑張ってくださいね。応援してますわ」


 パールはルイーダに頭を下げてカウンターの上に置かれている残りのブレスレットを手に取ると後ろで控えている3人へ手渡す。


「それじゃ結成するわよ。皆これを手首へ」

「すっごく楽しみ!」

「ああ」

「ここまで長かったですヨ」


 3人が同じ様にブレスレットを装着するとパールも加わり右手を重ねて合ってーー


「ギルドマスター・パールがここにジュエルボックスの結成を宣言する」


 凛とした声で宣誓するとそれぞれのブレスレットは眩い虹色の輝きを放った。やがて光が収まるとギルドハウスの中に居た他の冒険者達から割れんばかりの拍手と賛辞の声が上がった。そして奢りだと沢山の料理と飲み物がテーブルへ運ばれてきた。

 どの冒険者も自分達が初めてギルドを結成した時を口々に話し宴は夜遅くまで続いた。

 今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。

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