君しか闘わない
王道に則って世紀末悪役の登場です。展開は皆さんの想像通りかと思います。
「ヘッ、やっと来やがったか。臆病風に吹かれて逃げたかと思ったぜ」
お約束の噛ませ犬的なセリフを言いながら男は闘技場の中心で仁王立ちになっている。直径20メートル程の円形をした石畳。それを取り囲むように観客席が設けられている。どこから聞き付けたのか立ち見が出るほど観客達で満員となっていて決闘を今か今かと待っていた。冒険者同士の決闘用に作られた闘技場はレギュレーションによりスキルや魔法の威力が抑えられる結界で覆われている。
サファイアとルビーはパールに連れられセコンド席へ着いた。
「少し厄介な相手ね。ジョブはおそらく暗殺者だわ。即死系のスキルを多様するしスナイパーだと相性が悪いわ」
「え? それじゃアメちゃんヤバいじゃん!」
「大丈夫よ、勝負は一瞬だから」
冷静に状況を確認するパール。相性の悪さも気にせずノービス(…にもなっていない)2人へ説明をする。
『それでは今からアメジスト(代理人)VS男(仮)の決闘を始めますわ。両者向顔』
ルイーダの凛とした声が闘技場に響く。
「ヘッ、勝敗はジョブの性能のみで決まらず」
「種族の技のみで決まらずですヨ」
「「ただ、結果のみが真実」ですヨ」
『決心解放』
ルイーダが決闘開始の宣言した直後アメジストはバックステップで距離を取る。銃を扱うスナイパーにとって間合いは死活問題だ。一方男は仁王立ちのまま動かない。
「俺の必殺技を見て腰抜かすなよ? 伊達や酔狂でこんな髪型ーー」
「妹を叩いた罪により銃殺刑!」
パールの言う通り勝負は一瞬だった。アメジストの射撃スキルを顔面に受けそのまま呆気なくK.O.される。男は戸板に乗せられ黒子達に運び出されて決闘は終わった。闘技場の観客からは盛り上がらなかったと不満の声が聞こえたがアメジストのせいじゃないよね?
「アサシンは遠隔物理…弓矢や銃で攻撃されると即死しちゃうジョブ特性があるの。殺るか殺られるかのジョブなのに堂々と相手に姿を見せているのは愚の骨頂ね」
「勝敗は顔で決まるですヨ。それに速撃ちを使えば負ける道理無しですヨ」
汗1つかかずアメジストはセコンド席へ来た。秒殺だから当たり前だよね。
「それってつまりアサシンはスナイパーに絶対勝てない、みたいな?」
「ええそうよ。ジョブの相性も解った上でルイーダさんはアメちゃんに依頼しただろうし」
「紛らわしい言い方するなよ」
「ん? 心配したですカ? アカメアマガエルはデレましたですヨ」
「っさい」
右の拳でアメジストの肩を小突きそのまますれ違いルビーはルイーダの所へ行く。
「問題は片付いたし、これでアタシ達は冒険者登録出来るかい?」
あ、そうだった。サファイアとルビーはヒルマウンテンへ冒険者登録しに来てたんだった。
◇◆◇◆◇
「それではこちらがお2人の冒険者カードになります」
ルイーダはサファイアとルビーへ名刺サイズの金属板を手渡す。金属板には名前、所属国、ジョブ、レベルが刻まれておりヒルマウンテン領のエンブレムが虹色に揺らいでいる、複製対策だとは思うが魔法だろうか…?
「それを手の甲へ乗せてくださいな」
「えっと、こうかな?」
「呪いか何かかい?」
すると金属板は光を放ち手の甲へ吸い込まれていった。
「わ、わ、何何…消えたよ!?」
慌てて右手を振るサファイアと窓へ手をかざし透かして見るルビー。そんな2人の行動も見慣れたものとルイーダば動じずに言葉を続ける。
「これでお2人の登録は完了いたしましたわ。街中での行動や戦闘は全て記録されますので悪い事はなさらないで下さいね?」
「なるほど、悪い事はしちゃいけないんだね?」
「だからそう言われただろ。たぶん魔法で記録されるんだろね」
「EXACTLY。あとは冒険者同士での争いもご法度ですわ。破ったら国外追放とか重いペナルティがあるので気を付けて下さいまし」
「そうなったらあの男みたいに流れ者になるしかないって事だな」
「そういう事です。貴女達は可愛らしいからずっとウチに所属していて欲しいですわ。それとステータス表示が出来るようになりましたので確認お願いいたします」
「キタコレ! やっとステータスが見られるようになったんだね! ステータスオープン!!」
喜び勇んでサファイアはステータス画面を表示する。
【サファイア】
所属:ヒルマウンテン
種族:リリパット
ジョブ:ノービス
Lv:1
STR:4
VIT:4
AGI:6
DEX:5
INT:7
MND:6
LUK:5
「ん~、なんか微妙?」
「レベル1だからそんなもんだろ。ステータスオープン」
続いてルビーもステータスを表示させる。
【ルビー】
所属:ヒルマウンテン
種族:ケットシー
ジョブ:ノービス
Lv:1
STR:5
VIT:5
AGI:7
DEX:6
INT:4
MND:6
LUK:5
【スキル】
ツッコミ
「わ、もうスキル持ってるなんてルビーちゃんずるい!」
「何だよ『ツッコミ』って!」
「それじゃん」
「それよね」
「それですヨ」
3人から即ツッコミくらうルビー。ノービスなのにスキル持ちだなんて恐ろしい子。
男は耳を落とされる予定でしたが残忍な表現になるため変更しました。レギュレーションで力が抑えられてるのに欠損するとかアレだしね。
今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。