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蒼と紅  作者: 久村悠輝
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君しか居ない

 ようやくヒルマウンテンに到着しました。行く先々でトラブルが起きるのはサファイアだから仕方ないです。

「あっ、パールちゃん! …と、誰?」


 腰まであり燃えるように真っ赤な長髪を肩の辺りで纏め、民族衣裳のディアンドルにもアン()()ーズにも似た服を着ている女性がパールの前に立つ。胸元が大きく開いていてメロンが2つこぼれそうになってるよ。歩くだけでたゆんたゆんって凄いね。眼福眼福。


「これはルイーダ様、貴女が直々にこんな所までおいでになられるとは…」

「いつもご苦労様です。早速で申し訳ないのだけどこの2人を釈放して下さいな」


 そう言ってルイーダと呼ばれた女性はニコリと微笑み羊皮紙に書かれた何かを衛兵へ渡した。


「むぅ…部隊長のサインも入っているので正式に決定したのですね?」

「ええ、そこに書いてある通りこの2人の身柄は冒険者ギルドが責任を持って引き取らせていただきますわ」

「承知しました。……おい、出ても良いぞ」


 腰に下げたリングキーを使い重たい鉄格子の扉を解錠し開け放つ。


「ルイーダさん、って言ったね。とりあえずは礼を言わせてもらうよ」

「ふおぉぉぉ、これはH…いやIはあるよね」

「こら、いきなり失礼だろ。助けてくれたのにすまない」


 サファイアの頭にゲンコツを落としながらルビーは相棒の非礼を謝罪する


「あらあら、構いませんよ。職業上、慣れていますから。それよりも立ち話もなんですからギルドへ行きませんか?」


     ◇◆◇◆◇


 冒険者ギルドへ到着した一行。ルイーダに続き中へ入ると何やら不穏な空気が流れていた。


「これは…、今から新人いびりのイベントが始まるんだね!?」

「通過儀礼とはいえ面倒だな…」


 お決まりの展開にワクワクするサファイアとげんなりするルビー。しかし…


「誰もオマエラを見てないですヨ」


 ギルドのロビー、その中央に居る1人の巨漢。彼が騒動の原因なのは一目瞭然だった。肩から数本のトゲが出ている袖無しのレザージャケットにモヒカン頭、顔は………ノーコメント。


「うん、私も賛成。モザイク掛けないと世に出せないよ」


 ……だから天の声に反応しないの。男を取り囲む冒険者の面々。彼我(ひが)の強さよりも他の理由で手が出せないようだ。


「ルイーダさん、大変です。あの方が突然やってきて冒険者登録させろって…」


 ルイーダの姿を見付けた受付のお姉さん(犬の様な耳と尻尾が付いてるからおそらくコボルト族)が駆け寄って事情説明する。


「ありがとう、私に任せて頂戴。大方他所で問題を起こして冒険者登録を剥奪された流れ者(ノマド)でしょうね」


 流れ者、それは他の領地で違法な行為をした者が行き着く先。非公式での冒険者同士の争い、窃盗、性暴力等々…。それらは当然赦される事は無く、ルイーダが言っていたように冒険者としての資格を剥奪された上に領外へ追放…は、まだ優しい。ケースによっては奴隷堕ちもありうる。


「そこの貴方、私はこの冒険者ギルドのギルドマスター・ルイーダよ。貴方は当ギルドへ所属したい、という希望でよろしくて?」

「おう、そうだ。俺はこのヒルマウンテンででっかくなってやる。そうすればアンタにも美味しい蜜が回ってくるからお互いにWIN-WINだろ? グヘヘ…」


 男は品の無い笑いをしながらねっとりとした視線をルイーダに寄越す。特に豊満なバストを中心に…。キモいよね、さっさと爆発しろ。一方のルイーダは下劣な男の視線をものともせずー


「確かに、貴方が真っ当な冒険者であるならば我がギルドへの加入は喜ばしい事。ですが貴方は流れ者ですね? 他の領地で問題を起こし追放された貴方を雇うリスクが高過ぎますわ。よって答えは、この街からとっとと出て行ってくたばれ下衆野郎」


 ルイーダがそこまで言い切るとギルド内がワッと沸いた。


「なっ…なんだと、このスケ、下手に出りゃいけしゃあしゃあと! だったら決闘だ! 俺が勝ったらここで冒険者登録させてもらうぞっ!」


 余程腕っぷしに自信があるのか、はたまた頭に血が上って冷静な判断が出来てないのか男は吠えた。


「あら、それは願ったりですわ。ですが私が相手したのであれば他のギルドに示しが付きません。ので…アメジストさん、お願いできますか?」


 ルイーダは周囲を見渡してアメジストの姿を見付けるとそちらへ向けてニコリと微笑み。一方男は決闘を吹っ掛けた側として対戦相手の変更に否も唱えられず。


「ケッ、オートマタ族かよ。変わり種で俺を惑わそうって魂胆か?」

「弱い犬ほどよく吠える、ですヨ」

「このっ………! 良いだろう、とっととぶっ壊してやるよ!!」


 そう吐き捨てると男は入り口とは反対方向、ロビーの奥へある扉へ消えて行った。

 呆気にとられるサファイアとルビー。ロビーに居た他の冒険者達も我先にと男の後を追う。


「冒険者の問題は全て決闘で解決されるのよ」

「決闘!?」

「またずいぶん古風だな」

「決闘には金銭、栄誉、謝罪…たまに女性を賭けて闘うのが一般的よ」

「女を賭けるのが一般的なのかよ」

「それはまぁ、こういう世界だし?」

「そんな事よりミーはアダマンブレットの使用を求めるですヨ」

「駄目に決まってるでしょ。そんな威力の高い武器はレギュレーション違反よ」

「ああいう手合は跡形無くぶっ飛ばすですヨ」

「そんな事をしたらアメちゃんの資格が剥奪されちゃうわよ? それよりも早く闘技場へ行かないと皆待ってるわ」

何がとは言いませんけど、ルイーダ>>>ルビー>パール>>アメジスト>>>>サファイアです。


 今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。

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