第111話
「ルビーさん、これなんてどないです? レベル50からやし丁度ええんとちゃいますか~?」
ルナに薦められルビーは棚に並べてあった短剣を手に取り、鞘から抜いて光を反射させて眺める。
「悪くは無いけどステータスブーストがイマイチだな。やっぱりにっかり青江があればしばらく買い換えは無さそうだ」
短剣を鞘へ収め棚に戻すと、腰に挿した片手刀を撫でる。
「ほならウチはシャムシールの次を探したいし、後で細剣のエリアに付き合ぅて貰えますか~?」
「ルナが短剣で気に入ったのが無ければ、な」
「ホンマですか~、それなら早よ見ましょ~」
その言葉にウキウキしながらルナはルビーの腕に絡み付きその豊満なバストを押し付ける。
◇◆◇◆◇
「シトリンはどうするですカ、黄金の爪は1つだけですシ柔術家にとってはアンバランスだと思うですヨ」
「問題無い、爪たためる」
「まぁ…徒手空拳で戦うのがメインで戦うジョブですかラ無理に左右を揃える必要無いですカ」
「アメジスト、弾」
「ミーはアダマンブレットがあるですかラ。買い換えるなら銃になるですヨ」
オートマタ族とコボルト族のコンビは珍しいのか、周囲から盗み見られている。しかしこの2人がそんな事を気にする訳も無く、アメジストは気になる銃を手に取り眺める。
「速射性能が高い短銃も気になりますガ、やっぱり高威力の長銃ですヨ」
シトリンには何の事だかさっぱりだが、アメジストなりの拘りなんだろうと言うのは理解出来た。そんなシトリンの目に飛び込んで来たのがマガジンだ。20発装填出来てリロード回数が減ればアメジストの負担も軽くなり攻撃力アップが見込める。
「アメジスト、これ」
「マガジンですカ、これは使えそうですヨ」
しかし1回で20発を超える銃弾を消費する戦闘になれば現在の7発よりも長いリロード時間を要する。
「1つでは不安ですかラ5つほど買うとして、銃本体も買い換えになるですヨ」
マガジンは1度置き、アメジストはレベル50の銃が並べられている棚へ向かう。
「ステータス、大事?」
「そうですネ、命中率が高くてAGIが上がれば文句無しですヨ」
2人して銃を片っ端から手に取りステータスブーストを見て、それから実際に構えてみる。銃弾が装填されてない状況では街中でも構える事は出来る様だ。
「これ気に入ったですヨ」
しばらくしてアメジストが選んだのは鉄黒色のボディに付随する木のパーツは漆黒の漆塗りだ。光沢があり見る者を吸い込む様なとても深い色合いだ。なんでもヒルマウンテン領の南部を拠点とする鍛冶集団と北方に位置する漆職人が共同開発した物らしい。
「多少予算オーバーですガ問題無しですヨ」
「怒られる、知らない」
シトリンにはアメジストがパールに怒られる未来が見えたのだろうか…。
◇◆◇◆◇
さて、一方で地下1階へやって来たペリドットとブリーズだが…、
「広…」
「ああああの、どどうしましょうか…」
売場面積の広さに立ち尽くしていた。元より2人は自発的に行動する事が少ない。そんなコンビが今までに見た事無い景色を目の当たりにして平常心を保っていられる訳が無かった。
「と、とりあえずブリーズさん、錫を見ましょう」
「あ、でも、ペリドットさんは…」
「私は滅鬼積鬼を手にいれたばかりなので必要無いです」
そう言われてしまえばブリーズは何も言い返す事は出来ずしぶしぶペリドットの言葉に従い錫のエリアへ向かった。
「ふゎ…、錫と一言で言っても色んな種類があるんですね。片手持ちと両手持ちがあるなんて驚きです」
「あの、片手持ちはステータスブーストに優れてて、両手持ちは攻撃力が高いのが特長なんです」
「それでは今ブリーズさんが使っているのは両手持ちなので攻撃寄りになるんですね」
「リズさんが「人数が少ないから少しでも物理攻撃力を上げておきたい」って言ったので」
ブリーズは1本の錫を手に取り、振って音を確かめる。能力は同じでも1本1本微妙に音が違い、巫覡系ジョブはそれぞれ自分好みの錫を吟味して決めるそうだ。
「それならば次も両手持ちになりますね」
「はい、私も両手持ちの方が慣れていますし、片手持ちだとウェポンスキルがロッドと同じになって…、その、言いにくいんですが、ロッド持ってる人って個性的と言うか自由な方ばかりで…」
ブリーズがそこまで言うと聡明なペリドットは気付く。
「そうですね、サファイアさんもそうですけれど、力こそ正義、みたいな風潮がありますよね」
「あ、はい、そうなんです!」
全て言わなくても思いが伝わりブリーズの表情は明るくなる。
「ルビーさんがいつもサファイアさんは脳筋が過ぎるってボヤいてます」
「ぷっ、そんなんですか? でも、それ分かります」
「ですよね、サファイアさんですもの」
2人は顔を見合せ声を出して笑い出す。その様子に周囲の客は何事かと視線を向ける。2人ははたと気が付き頬を朱に染めながら俯く。しかし再び視線が合うとくすくすと笑い出してしまう。
一頻り笑ったところでブリーズは1本の錫を手に取り、
「私、これに決めます。攻撃力はあまり上がらないけれど式神を操るスキルにボーナスが付いててステータスブーストも悪くありません、気に入りました」
ハッキリとそう言ったブリーズ、こと階に降りて来た時とは別人の様だ。そしてペリドットも力強く頷きそれを後押しする。
◇◆◇◆◇
やっとレベル100の片手剣…、エクスカリバーの複製品のショーケースから離れたサファイア。鈍器組が先に地下へ降りた事に拗ねていたが、メテオストライクを所持している以上、それを上回る武器がここに置いてあるとも思えないのでその事はスルーした。
それよりもまずはレシルとエールの武器を探す事だ。
「両手剣って重く無いの?」
サファイアは常々疑問だった事をエールに問う。
「ん? ほんの2キロぐらいだから軽いよ」
「2キロが軽いって…さすがドワーフ族ね」
軽々と言うエールにパールは呆れ顔だ。身長があまり変わらないサファイアも陳列されている両手剣を試しに持ってみる。が、ジョブの違いもありすぐに棚へ戻した。
「無理無理無理、持てないよ。エールちゃんいつもこんなの振り回してたの?」
「え? だってエールはソードマスターだもん」
「私も盾を持たなかったらもしかして…」
そう言ってレシルは盾をポーチへしまうとサファイアが棚に戻した両手剣を手に取り構える。
「確かに少々重たいけど、振り回せない事は無いかな」
「やっぱりジョブと種族が関係してるみたいね」
「でも両手剣ってあまり可愛く無い」
「武器に可愛さを求めるのはサファイアさんくらいだよ」
ブレないサファイアに呆れるエール。
「うん、これが良いな。ファルコンソードって名前もカッコいい」
そう言って陳列棚から1本の両手剣を手にするエール。
「え? 今のよりも攻撃力が落ちない?」
「サファイアさん、良く見て。ダブルアタック+40%って付いてるでしょ」
「ホントだ。これってどういう意味?」
「オートアタック中に40%の確率で2回攻撃するんだよ」
「そっか、だから少しくらい攻撃力が下がってもトータルでダメージが上がるわだね」
「そ。あとウェポンスキルにダブルアタックが乗れば与えるダメージも跳ね上がるよ」
「すごい、私もダブルアタックの付いた武器欲しい!」
爛々と目を輝かせるサファイア。
「サファイアさん…貴女の武器に必要なのは回復や強化のステータスであって攻撃力じゃ無いわ」
「ぶー、少しくらい良いじゃん」
「メテオストライクを使ってるのに満足してないの?」
後衛の武器としては他の追随を許さない攻撃力を誇るメテオストライク。サファイアはこれ以上何を求めるのか…。
「と、とにかくエールはこの剣にするね」
逸れてしまった話を強引に戻すエール。
「それじゃ次はレシルさんの片手剣ね」
「あれ? パールのは?」
エールはパール自身の武器を数に入れて無い事に疑問を抱く。
「私はクラフトマウンテンのダンジョンで青竜刀を手に入れてるから今回は不要よ」
「ダンジョン産の武器か~、良いな~。エールも欲しいな」
「エールはファルコンソードがあるじゃない」
「そうだけどさ~」
「それに今は両手剣を極めるんでしょ」
その話を持ち出されてしまってはエールに反論の目は無くなってしまう。
「今度は絶対ダンジョンへ潜るぞっ!」
独りで拳を天井へ突き上げ決意を新たにするエール。一方地下のブリーズは強烈な悪寒に襲われた。
「この武器、すごい性能だよ! セイヴ・ザ・クイーンって名前なんだよ! 無条件でカッコいい!」
「女王を守れ…、盾役のレシルさんにはぴったりの名前ね」
「でも盾役が守るのってだいたいヘイト管理を無視してはっちゃけたアタッカーだよね」
「エール、それは言っちゃダメよ」
「私も女王様みたいに守られたい!」
「サファイアさんはメテオストライク振り回して暴れれば良いだけなんだから簡単でしょ」
「なんか、雑に扱われてる気がする…」
「後衛の脳筋なんてそんなもんだよ~」
「そうそう、気にするだけ無駄だから」
サファイアの不満にレシルとエールがトドメを刺した。
今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。




