第110話
奇襲戦が発生するまでの間、サファイア達は回復アイテムの作成に取り掛かる事になった。
まずパーティを2つに分け片方はお馴染み蜂の巣の欠片とローヤルゼリーを集める。もう片方はライムや輝くマスカットを採取する。
「蜂の巣の欠片集めるのにヒルマウンテンに戻れは良いのかしら?」
今後の予定があらかた決まったところでパールは疑問を口にする。
「まさか。そんな面倒で効率の悪い事をする訳無いだろ。ジュエルボックスにはジャイアントホーネットを狩って貰うよ」
「名前からしてジャイアントビーの上位種だろうけど…どこに居るんだ?」
リズの言葉にルビーが反応する。
「イルラスィヌ国のピエスルガルデ地方だよ」
「おいおい、国境を越えなきゃダメなのか?」
「街の近くに居たら皆狩りに行って価格も下がってるだろ。遠いから価値があるんだよ」
リズは淡々とルビーの言葉に返していく。
「それじゃエール達はどこへ行くの?」
「モンテボッカ国のロッチャパエーゼ地方だよ」
「こっちもヴァイトインゼル国外なんだ!?」
「だからパーティを2つに分けたんだよ」
「あぅぅ、ヴァイトインゼル国内で出来ると思ったのに…」
肩を落としガックリ項垂れるエール。
「どっちもヒルマウンテンよりかは近いぞ」
「そうだけどさぁ…何か騙された気分だよぉ…」
ただでさえ小さなドワーフ族が更に小さく見えてしまう。
「出発は明日の朝だから今日は狩りの準備と休養にしてくれ」
「どうせ泊まり掛けになるんやし、別に今から準備して出発してもええんとちゃいますか~?」
まだ昼まで1刻ほどある。ルナはわざわざ1日先延ばしする事に疑問を覚えた。
「皆はヴァイトインゼルへ来てからまともに観光なんてしてないだろ。これから忙しくなるから今のうちに鋭気を養って欲しい」
「そないな理由でしたら遠慮無く羽伸ばさしてもらいましょか~」
レオの言葉にルナはニコリと微笑む。エール達もうんうんとうなずく。
「けど奇襲戦まで2週間近くあるんだろ? 何がそんなに時間掛かるんだ?」
「君達はサファイアだけに回復を押し付けるつもりかい?」
「…? 今まではそれでやって来たけど?」
ルビーはレオの意図をはかりかねてそう答える。
「そう、今までならそれで凌げてた。けれどこれからは一瞬の油断が即全滅に直結する戦いばかりになるよ」
「つまり全員がHPを回復出来る手段を持っておく必要があるのさ」
レオの言葉に続きリズが説明をする。
「だからHPの回復薬、ポーションを全員が作れるようになって貰うよ。初級じゃ無くてエクスポーションをね」
「けどポーションだったら錬金術師が作れるだろ、別にアタシらが作れなくたって知り合いに作って貰ったり競売所で買えば良いんしゃないか?」
ルビーはユニークスターズのセリアが使っていたのを思い出す。
「確かに薬師や錬金術師はポーションを作れる。けどそれはジョブのスキルであって他人に渡したらただの水さ」
「なんか…詐欺みてぇだな」
苦い顔を見せるルビー。
「考えてみな。錬金術師が作ったポーションが他人に渡せたら錬金術師が多額の金を手に入れ、それを追う様に冒険者は錬金術師にジョブチェンジして世の中ポーションまみれになっちまうだろ」
「あっ…」
リズの言葉にはたと気が付くルビー。
「だから個人でポーションが作れるようになる必要があるのさ」
「それで2週間あっても時間が足りない…って訳か」
「実際はそこまで切羽詰まった状況じゃ無いけどね。けど、明日からは休めないと思ってくれた方が良いね」
サディスティックな笑みを浮かべるレオ。サファイア達はブルリと身震いしてしまう。
とは言え萎縮していても何も始まらない。気を取り直しサファイア達はヴァイトインゼルの街中へ繰り出した。
◇◆◇◆◇
ヴァイトインゼルは80年前に巨人族と悪魔族の連合軍と死闘を繰り広げ、首都は悪魔族の超魔法により壊滅的な打撃を受けた。しかし隣国のモンテボッカ国、イルラスィヌ国、プチーツァブラーチ国、ヒルマウンテン領の援軍により連合軍を撤退へ追い込んだ。
その戦いから各国は巨人族や悪魔族への警戒を強め、再び侵攻された場合に備え連合を組みセントラル王国を設立した。
街の至るところに超魔法を耐え抜いた建物が残っており、当時の凄まじさを今に伝えている。
「すげぇな…こんな広範囲で建物を破壊するなんてどんな魔法だよ」
今でも外壁の表面が焦げ、崩れそうな建物を見上げながらルビーは驚きを隠さない。
「資料によれば隕石魔法と言われてるわ」
「そんなの無敵じゃねぇか」
パールは仔細を記したプレートを読みながら説明する。
「でも隕石魔法にも弱点はあるみたいね。詠唱が長い、10人以上で同時詠唱が必要、晴天の日中しか出来ない…つまり詠唱を開始されても10人未満にしてしまえば不発に終わるわ」
「けど悪魔族もそれを解ってるから巨人族を護衛に付けてたんだね」
レシルの言葉にパールはうなずく。セントラル王国でも隕石魔法の研究は進んでいるが、いかんせん街1つを滅ぼしかねない魔法だ、一般には流さず研究機関のみで情報を管理している様だ。
「そんなにすごい魔法ならドラゴンも楽に倒せちゃいそうだね」
「それは無理ちゃいますやろか~。味方もろとも吹き飛ばす事になりますえ~」
「それに不意を突いて先制攻撃するにしても詠唱開始した時点で魔力の流れをドラゴンに察知されそうだし」
サファイアが目を輝かせて言うもルナとパールが冷静なツッコミを入れる。
「隕石魔法みたいなすっごい武器があれば良いね」
「脳筋が何か言ってやがるですヨ」
「サファイアさんが使っている武器、名前に流星っ付いてるわよね?」
「………え? メテオって隕石の事だったの?」
「トゥインクルロッドは輝く星、シューティングスターは流れ星、そしてメテオストライクが流星よ」
「ほへ~全っ然知らなかったよ~」
「サファイアちゃん、星の名前を冠している武器はどれも凄い性能なんだよ!………あ、トゥインクルロッドは例外ね」
「全部可愛いから全然考えた事無かった~」
パールとレシルの言葉に感心しきりのサファイア。
「それじゃ次は武器屋に行ってみようよ。何か面白いのがあるかも」
「あ、何か可愛いのあるかな?」
エールの提案にサファイアは乗り気だ。
「あの…見た目よりも性能が大事では……」
おず…、と小さく手を上げながらブリーズは意見する。
「アタシも賛成。扱い易くて切れ味が良いなら見た目なんて二の次だよ」
「ミーも同意見ですヨ。命中精度と威力があればそれで十分ですヨ」
ブリーズ側にルビーとアメジストが着く。似た感性を持つアイリスが居ない今、サファイアに賛同する者は居なかった。
「メテオストライクは可愛くて強いからいいもん」
拗ね気味に武器屋へ向かい歩き出すサファイア。やれやれ、と顔を合わせそれをパール達は追った。
◇◆◇◆◇
「凄いね、レベル100の片手剣なんて初めて見る~」
「この片手剣凄い、STRが+320にDEXとAGIが+205だって!」
「サファイアさんエールさん、あまりガラスに張り付くと顔の跡が付きます」
子供の様にべったりとショーケースに張り付くサファイアとエール。それを苦笑しながら窘めるペリドット。
「アタシは上の階に行ってるよ」
「あ、せやったらウチも一緒させてもらいます~。エールさんはどないしますか~?」
「ん~エールも短剣に興味あるけど今はこっちを極めたいかな」
そう言って背中の両手剣に手を添えるエール。それを聞いてルビーとルナは階段で上階へ向かう。武器屋は地上2階、地下1階の3階建てだ。片手剣と両手剣、細剣は1階に。短剣と刀、ナックルや弓銃は2階に。杖、棍、錫、ロッドは地下1階といった具合に分けられている。
サファイアは本来地下1階に行くべきなのだが…すっかり絢爛な装飾が施されたハイエンドの片手剣に魅了されてしまっている。それに付き合う形でパールとレシルとエールが一緒に居る。
アメジストとシトリンも2階へ上がった。ペリドットとブリーズはサファイアに一言告げて地下へ向かった。
◇◆◇◆◇
「ルナは短剣より細剣の方が得意じゃないのか?」
「ジョブの相性から言えばそうなりますな~。けれど下におったら男性のいやらしい視線が刺さって不快なんです。職業柄慣れとるとは言ってもやっぱり気分のええもんとちゃいますし」
「ああ、それでアタシに付いてきた訳か」
「ダシに使うてホンマすんません~」
「別に、今でも見られてるし仕方ないよ」
そう言ってルビーは不躾な視線をぶつけてくる男達に鋭い眼光を飛ばす。睨まれた男達はすごすごと引き下がるしか無い。仮に声を掛ける度胸のある男が居たとしても、大衆の前で袖にされようならば恥ずかしくてヴァイトインゼルの街には居られなくなるだろう。
「まぁ、アタシ達はアタシ達で見て回ろうぜ」
男前の言葉でルナをリードするルビー。もしルビーが男性であればお似合いの2人に見えた事だろう。しかし2人のバストは豊満だった。
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