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蒼と紅  作者: 久村悠輝
106/110

第106話

 さて2日目の更新です。

 今回はエール、ブリーズ、ルナの限界突破がメインとなっています。そして相変わらず目的の見えない謎の2人組…何者なんでしょう?もう少しで正体が明かせますのでもう少し辛抱下さい。

 ともあれ新年2日目の更新、お楽しみ下さい。

     ◇◆◇◆◇


~限界突破:エールの場合~


 狂戦士化(バーサク)のスキルは攻撃力を飛躍的に上昇させる反面、防御力を著しく低下させる。1対1で戦うにはデメリットが勝つ為、不用意に使うのは好ましく無い。防御系スキルを持たないソードマスターは小細工はせずに正面から殴り合うしか無い。背負っていた両手剣を抜くと神速の剣技(イーグルダイブ)のスキルを使う。剣を振るう速度を限界まで上昇させ一気に方を付ける作戦だ。

 エールはバトルフィールドの中央に居るクリス目掛け大上段に構えた両手剣を振り下ろす。クリスは両手剣を横向きにしその一撃を受け止め鍔競り合いに持ち込む。しかしエールは力自慢のドワーフ族、徐々に押し込まれ距離を取らざるを得なくなる。


「チャンス! 双幻の三日月(ダブルクレセント)!」


 振り上げと振り下ろしが一体となったスキルはクリスのHP(ヒットポイント)をごっそりと奪う。バックステップで体勢を立て直そうとするクリスをダッシュで追い、


破滅の終焉(コフィンエンド)!」


 X字に斬り付ける。フラついてクリスが数歩下がった所に狂戦士化のスキルを使ったエールが迫る。


蟹の刃(ランページブレード)!」


 エールが「ちょっきんなぁ!」の掛け声と共にクリスへ斬撃を見舞い一方的に勝利した。


     ◇◆◇◆◇


~限界突破:ブリーズの場合~


「天孫降臨、防壁悉皆」


 セオリー通りに自身の強化から始めるブリーズ。他のジョブと比べてスキルの数が少ない分、いかに有効に使いこなすかが問われる非常にテクニカルなジョブとなっている。

 錫を手にするとクリスへ向かい駆け出す。先手必勝とばかりにウェポンスキルを繰り出す。


「堅甲利兵! 地獄の痛み(コンティニュペイン)!」

 防御力と攻撃力を同時に上昇させスリップダメージを伴う地獄の痛みをクリスへぶつける。お互いが防御スキルも使わないまま終盤へ差し掛かった時、


「涼風一陣!」


 クリスが回復スキルを使用したのだ。あと一歩まで追い詰めていたブリーズは焦る。このままでは時間切れになるからだ。


「千両役者!」


 人形(ひとがた)の式紙を投げ巨人を喚ぶ。2対1となり戦闘は有利になるが先の回復スキルが痛い。残り1分を切りブリーズは賭けに出た。


有罪判決(ギルティストライク)!」


 錫が打ち据えた瞬間、クリスはそのまま膝を折り前のめりに倒れた。有罪判決、数%の確率で相手を即死させるウェポンスキルだ。その数%を引き寄せブリーズは辛くも勝利を収めた。


     ◇◆◇◆◇


~限界突破:ルナの場合~


「チャキチャキ進めましょか~」


 相変わらず独特な訛りで話すルナは2本のシャムシールを抜くとその場で踊り出す。


「キグナスステップに幻影の舞(イリュージョン)、あとは~ 妖精の口づけやな」


 てきぱきと自身へ強化(バフ)を行うルナ。その所作は流れる様で見る者を魅力する。が、今は観客は居らずクリスだけがバトルフィールドの中心で待ち構えて居る。


「ほな、これ以上待たせても悪いしそろそろ行きましょか~」


 シャムシールを1回転させると独特のステップで左右に動きクリスに進路を読ませ無い。


「正面からとはわたくしも舐められたものですわね」


 2本の細身剣を構えファイナルレターを放つクリス。斬撃は確実にルナを捉えZ字に斬りつけた…かに見えた。


「残念です~、それは幻影の舞のニセもんなんよ~」


 背後に回っていたルナはクリスの背中を斬る。


「次はこれなんかどうです~? 剣の舞い(ダンシングエッジ)!」


 5回連続のファストアタック。流れる様に舞いながらクリスを斬り刻む。


「酷いですね、このままではわたくし死んでしまいそうです」


 クリスはバク転で距離を取り癒しの舞いを踊る。みるみる傷は癒えダメージを消してしまった。


「便利なスキルや思ぅてたのに相手に使われるとえらい頭に来るな~」


 シャムシールを腰の鞘に収めるとポーチからチャクラムを取り出し連続して投げる。クリスは迫り来るチャクラムを紙一重で躱しながらルナに肉薄する。


「「剣の舞い!」」


 同時に放たれた斬撃が2人の間で激しくぶつかり火花を散らす。支援に特化した踊り子は相手を火力で圧倒する事は叶わない。お互いHPを削っては回復を繰り返し決め手を欠いたまま時間切れになった。


     ◇◆◇◆◇


「なんや、負けたんはウチだけかいな。めっちゃ恥ずかしいわ~」


 結果を知ったルナは恥ずかしそうに頭を抱える。


「今からだとクエストアイテムを取りに行くのは微妙な時間になるわね」


 パールが神妙な顔で言葉を紡ぐ。時刻は8の刻を回り、オークの拠点へ到着する頃には日没までの猶予が無い。


「ええですよ~、ウチの事はほっといて皆さん先に行って下さい」


 すっかり拗ねているルナ。


「そういう訳にもいかないだろ、明日、再チャレンジするぞ」


 ルナの頭をぐしゃぐしゃとかき回しリズなりの励ましをする。


「それじゃまた明日も一緒だね!」

「へ? いやいやサファイアさんらまで巻き込む訳にはいきません~」


 サファイアの言葉に驚くルナ。だがジュエルボックスの面々は手伝う気満々で引きそうに無い。


「私も手伝うからちゃっちゃとクリアしちゃお」


 レシルも同じ気持ちだ。


「皆さん…おおきにな、このお礼は必ずリズさんが返しますんで」

「アタイかよっ!」


 ルナの言葉にすかさずツッコミを入れるリズ。敗戦のショックから立ち直ったルナはいつも通りの笑顔を見せた。そのバストは豊満だった。


     ◇◆◇◆◇


「いつまで待たせるの?」


 その日の夜中、ヴァイトインゼル城の中庭、そこにある噴水の傍らに2人の姿があった。


「もう少し待ちなって。まだ時間はあるんだら」

「貴女が面白いものが見られると言うから待っているのよ? これ以上待たせるなら私はグルックベルクへ帰りますからね?」

「解ったよ、明日には準備が揃うからすぐに始めるよ」

「その言葉、忘れないで下さいね」


 そう言うと片方は暗闇へ姿を消した。残された方は、


「相変わらず気が短いねぇ」


 と、頭をポリポリと掻いていた。


     ◇◆◇◆◇


「今日はドロップ率の良い奥へ行ってみるか。運が良けりゃ宝箱が見付かるかもだしな」


 リズの宝箱という言葉に色めき立つ一行。しかし奥へ行くには…見敵(サーチアンド)必殺(デストロイ)、見つけたモンスターを全て薙ぎ倒す戦法と、モンスターが関知出来る範囲の外を通りスニーキングミッションを行う方法、そして隠蔽魔法を使い敵中堂々と移動する手段だ。


「あまり時間は掛けられないし隠蔽魔法で進みましょうか」


 パールが冷静に状況を判断する。


「いや、見敵必殺で行くよ」

「リズ貴女正気なの?」

「ああ、正気も正気だよ。ルナの勝ちを引き寄せる為に必要な事何だよ。ま、楽しみにしてなって」


 パールとルナの背中をバンバンと叩き鼓舞するリズ。

 オークの拠点は小さな広場があり、それが枝分かれと合流を繰り返し奥へ続いている。


「それじゃ派手に行くぜ! 閃煌!」


 リンクするのも構わずリズは広場のオークを範囲魔法でかき集める。


「技連携なんて考えずにガンガンウェポンスキルを撃ってけよ!」


 十数匹のオークから集中攻撃を受けてもびくともしないリズ。しかし自前のハイヒールでは回復量に限度があるため時折サファイアとレシルが援護する。


「あれ、なんか変なのドロップしたよ?」


 5つ目の広場を制圧するとオークのドロップ品の中に鍵が混ざっていた。


「お、もうドロップしたか。なかなか運が良いな」

「これって何の鍵なの?」


 ウキウキと鍵を手にするリズにパールが問う。


「宝箱の鍵だよ。シーフの解錠スキルに頼らなくても100%中身が手に入るんだ」

「でもダンジョンじゃ鍵は必要無かったよ?」


 サファイアが思い出しながら言う。


「そうですね、宝箱の中に鍵が入ってる事もありました」

「ダンジョンと獣人の拠点は別物って考えてくれ。ダンジョンは鍵は要らないけど罠が張ってある。一方獣人の拠点は鍵が必要だけど罠は無いんだ」

「それじゃわざわざ鍵を取らなくてもシーフ系の解錠スキルを使えば良いんじゃないのか?」


 リズの言葉に疑問を持ったルビーが問う。


「確かに解錠スキルを使えば宝箱は開けられる…がだ。100%じゃ無いし失敗すれば宝箱はロスト、更にスキルを使った者は強制的に5分間衰弱の弱体(バステ)が付与されるんだよ」

「うへ…リスクがでかすぎるぜ」


 顔をしかめながらルビーは二の腕を擦る。


「だから先に鍵が欲しかったんだよ」

「見敵必殺…」


 シトリンはわざわざ敵を殲滅する意味を理解した様だ。


「なるほど、鍵をドロップする可能性があるモンスターを片っ端から倒せば入手する確率は上がるですヨ」

「鍵を手に入れる理由は解ったけど、宝箱の中身って何?」

「こればかりは開けてみないと判らないんだよ。ケロだったり宝石だったり…装備品だったりね」

「宝石なんてのもあるんだ!」

「エールも見てみたい!」


 キラキラと目を輝かせるレシルとエール。


「でも装備品って可愛いのかな?」

「残念だけどここの装備品はサファイアには装備出来ないよ」

「ちぇっ、なんだつまんない」


 サファイアの興味は一気に削がれたが宝箱を見つけないと中身が何だか解らないままだ。


「さ、奥へ進むよ」


 そこからいくつかの広場を抜け辿り着いたのはVの字に切れ込んだ谷底の通路と時折空いている横穴だ。


「この先は今までと違ってかなり強くなるからしっかり技連携で倒してくよ」


 リズが珍しく真面目な口調で話す。それ程危険な場所だというのは全員に伝わった。

 今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。

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