表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼と紅  作者: 久村悠輝
105/110

第105話

 明けましておめでとうございます。今年もサファイアの馬鹿馬鹿しい冒険にお付き合い頂けたら幸いです。

 先週予告した通り、3日連続アップとなります。

 一行はバトルフィールドから出るとその足でパブへ向かった。5の刻を過ぎた辺りだが既に客の数は多くあちらこちらで様々な情報が飛び交っている。

 サファイア達は空いてる区画を見つけそこへ座る。しかし6人掛けのテーブルなので隣のテーブルから椅子を1脚拝借した。


「攻撃がすんごくて防戦一方になっちゃって、もうダメだ! って思ったら勝ててたんだよっ」


 サファイアは興奮気味に話す。


「めちゃくちゃ厳しかったね、アタシはまだまだ忍者のスキルを使いこなせて無いのを痛感したよ」


 とはルビーの談。


「全然ダメだった、何もさせて貰えなかったわ。静寂の鐘から四神天誅が来るなんて運が悪かったみたい」


 パールは悔しそうに拳を握り締める。


「ミーは開幕マイルドファイアからラストシューティングへ繋げ余裕の展開ですヨ。切り札(ラストリゾート)を使ったですガ、余裕だったですヨ」


 身振り手振りを加え饒舌に語るアメジスト。


「私はもう無我夢中で何をしてたか覚えてません」


 頬に手を添えながらペリドットは振り替える。


「黄金の爪使ぅてもダメじゃった。もっとスキルを使わな勝てんのぉ」


 対人戦に特化したスキルをいくつも持ってるシトリンは有効活用出来なかった事を悔いている様だ。


「私はも~ギリギリだったよ。食事や装備を攻撃寄りに振ってなきゃ勝てなかっただろうね~」


 机に突っ伏しながらぐで~と伸びたままのレシル。

 限界突破クエストの振り返りをしているところへ運ばれて来たのは高さ30センチメートルもあるジャンボパフェだ。勝っても負けても脳疲労から回復するためには甘い物しか無い、と謎理論で全員が糖分を欲している。


「たちまち必要なクエストアイテムは私のとシトリンさんのだけって事ね」


 自分の敗戦から立ち直ったパールがパフェを口に運びながら言う。


「今度は泣かしちゃるけん」


 ガツガツとパフェを怒りに任せ口に運びながら言うシトリン………だが、急に冷たい物を食べたのだから首の後ろが痛くなり悶える。


「ともかく必要なジョブは魔法使いとモンクで良いんだな」


 口元にクリームを付けながらルビーは言う。


「ルビーちゃん、クリーム付いてるよぉ」


 そのクリームを人指し指で掬い自分の口へ運ぶサファイア。


「んなっ、何するんだサファイア!」


 突然の行為に顔を真っ赤にして驚くルビー。


「アルミナちゃんがいたらすっごい騒ぐ案件だな~」


 レシルは両肘をテーブルにつきながらニヤニヤする。


「とにかくだ、早くクエストアイテム取りに行こうぜ」


 話を逸らす様にルビーが立ち上がり言う。


「まだ食っちょるけんもうちと待ちぃや」


 痛みから回復したシトリンがルビーを制する。事実シトリンのパフェは半分、ペリドットに至ってはまだ1/3しか食べてない。ルビーはドカッと椅子に腰を下ろし不満を露わにする。そしてバツが悪そうにパフェグラスの底に残っていたコーンフレークをがしゃがしゃと掻き込む。

 一方サファイアはルビーが何故怒っているかも解らずマイペースに満面の笑みを浮かべながらパフェを口へ運ぶ。


「ですガ、パールは完全にスキルガチャがハズレだったようですヨ」

「全くそうだわ、初手に沈黙スキルとか。それにそれに四神天誅の4段攻撃全部にクリティカルが乗るなんてホント有り得ない!」

「NPC補正にも程があるですヨ」


 このパールVSクリス戦、パールに落ち度があった訳では無く対戦相手のクリスのスキルの引きが良すぎたのだ。


「パールちゃんは静寂の鐘は使えないの?」

「使えるなら1番に使ってるわよ。スキルを使うモンスターは中々面倒な場所に居てね、使用率も低いのよ」

「でも使えた方が良いなら覚えに行こうよ!」


 無邪気なサファイアの表情にパールはこれ以上何も言えず頷くしか無かった。

 さて、サファイア達はパフェを食べ終わるとキューニィへ跨がり一路オークの拠点へ向かう。そこで再開したのはリズとその仲間…エール、ルナ、ブリーズだった。


「あれぇ~ジュエルボックスの皆…と誰?」

「初顔だね、新入り?」


 エールとリズがレシルに気付く。


「いえ、私はユニークスターズの人間なので、今回はたまたまレベルが同じだったからアイテム取りを一緒にしてるだけなんですよ」


 リズのただならぬオーラでレシルの口調がやや怪しくなる。


「ここでアイテム取りって事は限界突破だよね。全員分?」

「こっちは私とシトリンさん…魔法使いとモンクよ」


 パールが代表して答える。


「それじゃウチと組まないか? こっちも限界突破用のアイテム取りなんだ」

「3人ともまだだったの?」

「まあ…色々やってて後回しにしてたからね」

「昨日の晩にモンテボッカから来て、朝(はよ)ぅからここに籠ってるんやけど全然ドロップせんのよ~」


 リズから出たコーポレーションの申し出に誰も否は無くすんなり組まれた。それよりもパールが驚いたのはエール、ルナ、ブリーズの3人が未だ限界突破をしてなかった事だ。

 パールより長く冒険者を続けている3人はレベル上げよりも様々な地域でその場の知見を広げる事を優先していたのだ。そしてルナのバストも相変わらず豊満だ。

 メイン盾役(タンク)をリズに任せレシルは殴り装備でアタッカーとして参加する事になった。百戦錬磨の働きを見せるリズにレシルは舌を巻き、何かある毎に感心しきりである。


     ◇◆◇◆◇


 2刻ほど戦いようやく必要なアイテムが揃うと一行はヴァイトインゼルへ戻った。クリスの周囲は相変わらず限界突破を試みる冒険者で溢れていた。


「さて、アタイらはここで待ってるから行っておいで」


 サファイア達クエスト突破組とリズは中庭を彩る噴水の縁に座りパール達を見送る。ジョブに依っては運が味方しないとクリア出来ないシビアなクエスト、バトルフィールドから出て来た冒険者達は喜び涙を流す者、ガックリ項垂れその場を去る者、怒りに任せ植え込みに八つ当たりする者…様々だ。


     ◇◆◇◆◇


~限界突破:パールの場合・その2~


 まずは深呼吸して気持ちを落ち着けるパール。前回の失敗はクリスのスキルガチャの引きが神過ぎた為でパールとしては不完全燃焼だった。


「実力で負けた訳じゃ無いわ、大丈夫。落ち着いてやれば必ず勝てる」


 そう言うと自身に強化(バフ)を掛けスキルをセットし直す。90秒待ちスキルが使用可能になると抜刀しクリスへ向かい駆け出す。


「ペンタスラッシュ!」


 パールへ向かい突進しているクリスを高速の斬撃が襲う。しかしそれでも足を止めずパールへ肉薄するクリス。


「シェル!」


 クリスの初手はまさかの強化。パールはこの機を逃すまいと暗黒の視線(ダークレイ)を放つ。瞳から放たれた闇色の光線がクリスの腕を焼く。


「おやおや、これはわたくし失敗したかもしれませんね」

「四神天誅!」


 焦りを見せたクリスにパールは追撃する。


「けれどこれはどうですか? 酒臭い息!」

「っ!」


 クリスの口からアルコールのきつい臭いが吐かれる。どうして魔人はこうも残念なスキルばかりなんだろう…。お互い美人なのに色々台無しだ。

 パールは鼻と口を押さえ慌ててバックステップで距離を取る。しかしスキルは呼吸を止めても意味が無い。確実にその体を蝕む。酩酊状態になったパールは激しい目眩と頭痛、吐き気に襲われる。それでも気力を振り絞りクリスを丸呑みする。


「くっ、昨日の晩ごはんがドラゴンステーキですって!? なんて贅沢な!」


 クリスをペッと吐き出しパールは驚愕する。


「あら、わたくしこう見えて全ジョブレベル100の高ランク冒険者ですよ? これくらいの食事は毎日摂っていますわ」


 丸呑みによる毒のスリップダメージにも意に介さずクリスはフレイムブレスを吐く。横っ飛びでそれを回避するパールだが酩酊状態ではまともに戦う事すら難しい。しかしパールには切り札があった。


「ボディチェンジ!」


 相手と自分に掛かっている強化弱体(デバフ)を入れ換えるスキルだ。戦闘開始前にパールが行った強化もクリスへ渡す事になるが酩酊状態で致し方無しだ。


「これで最後っ! 死ぬまで突撃!」


 それかよ…。近い道の無さそうなスキルをここでパールは使う。通常攻撃が5倍に跳ね上がる代わりにコマンド入力を全く受け付けなくなる。まさに死ぬまで突撃の名に相応しいスキルだ。

 パールは丸呑みにした時点でクリスの残りHP(ヒットポイント)が少ない事を知っていた。ならばこのスキルで決着すると踏んだのだろう。その読み通りクリスは追い詰められ敗北を認めるしかなかった。


     ◇◆◇◆◇


~限界突破:シトリンの場合・その2~


 シトリンは黄金の爪を装備すると前回同様氣を練り上げる。限界まで溜め込んだ氣を纏いながらクリスへ突進すると相手もそれに応える様にシトリンへ向かう。両者が激突する刹那、シトリンがクリスの目の前で両手を叩く! 猫だましのスキルだ。突然の事にクリスは驚きスタンしてしまう。その隙を狙い黄金の爪で袈裟懸けに斬る。


「あらあら、わたくし驚きましてよ」


 スタンから回復したクリスは裏拳で応戦する。それを掻い潜り今度は目潰し(サミング)へ繋げる。ガードを固めるしか無いクリスは防戦一方になる。懐へ飛び込んだシトリンは正拳突きでガードを崩し三段飛燕脚を撃ち込む。後方へ派手に吹き飛ぶクリス。


「なかなか楽しいコンボですわね。けれどタイミングが判っていればダメージを相殺するのは簡単な事」

「自分から後に跳んで受け流すなんてやりよるうのぉ」

「褒めて頂けて光栄ですわ」


 そう言うが早いかクリスは一気に肉薄しシトリンへ猫だましをする。スタンしたシトリンは大きくジャンプしたクリスを目で追う事しか出来ない。


稲妻蹴り(ライトニングキック)!」


 頭上から体重を乗せた強烈な1撃を受けシトリンは意識が飛びそうになる。止めのラッシュが来ると直感したシトリンは咄嗟に梅花の型を取った。

 梅の花を包み込む様なその構えはクリスの猛攻を受け流す。嵐の様な手刀の猛攻をいなしたシトリンは跳躍すると後方宙返りをし、


「梅花二段蹴り!」


 左右の足で連続しクリスを蹴り上げる。


「お見事ですわ。わたくしの負けです」


 こうして辛勝ながらもシトリンはクエストをクリアした。

 今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ