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蒼と紅  作者: 久村悠輝
104/111

第104話

~限界突破:パールの場合~


「さてと…まずはシェルにアイアンスキンとワールウィンド、マジックバリア、魚鱗(ファランクス)…あとはハードチャージャーね」


 バトルフィールドへ入りパールは冷静に強化(バフ)を掛けていく。全てのジョブをマスターしている相手だ、生半可な作戦は意味を成さない。強化を終えると急いで攻撃用のスキルをスロットへセットする。


「これで90秒待ってから攻撃力を開始する、と」


 スキルが再使用可能になるまでの間、言葉に出して手順を再確認する。


「ペンタスラッシュから始めて暗黒の視線(ダークレイ)へ繋げて四神天誅、その次に………」


 パールの予測では戦いは1分も掛からず決着する。こちらが全てのスキルを使い切れれば勝ち。そうで無ければ負けの至ってシンプルな話だ。


「さ、行くわよ」


 緊張で喉が渇く。震える手を落ち着ける様に深呼吸を1つ、抜刀しフィールドの中央に居るクリスへ駆け出す。向こうもこちらへ気付き抜刀する。


「ペンタスラッシュ!」


 決着は一瞬だった。ペンタスラッシュを放ち暗黒の視線な溜めに入った瞬間、クリスの放った静寂の鐘でスキルを封じられ四神天誅がクリーンヒット。そのままパールは地面に倒れた。


     ◇◆◇◆◇


~限界突破:アメジストの場合~


「ミーの辞書に敗北の2文字は無いですヨ」


 オリハルコンブレットを装填し狙い撃ちと乱れ撃ちのスキルを発動させる。入手した時、一笑に付した弾丸だがここで重要な意味を持ってきた。1発の弾丸を乱れ撃ちする…結局1発分のダメージでは? と思うがなぜか5回ヒットする謎システム。もちろんウェポンスキルにも適用される。それを最大限活かし速攻する作戦だ。


「先週より2キロ太った罪により銃殺刑!」


 なんと惨たらしい罪か…。いや、そこでは無い。射程距離ギリギリから先制攻撃しイニシアティブを握る。


「なんて恐ろしい罪状なんでしょう。けれどわたくしは何年も体重が増加した事ありませんわよ!」


 マイルドファイアの先制攻撃を受けたクリスは銃で応戦…する事無くアメジストへ一直線に向かってくる。


「正気ですカ? ドラグーンで殴りあおうなんて頭のネジぶっ飛んでやがるですヨ」

「あら、冤罪で銃殺するのは正気だとでも?」


 しかしアメジストは接近するクリスを逆手に取り近接用の射撃ウェポンスキルのラストシューティングを決める。

 大きくHP(ヒットポイント)を減らされたクリスは奥の手・ラストリゾートを使用。アメジストの急所を撃ち抜く。

 HPは五分五分になったがアメジストは焦らずこちらもラストリゾートを使用、これが決定打となり勝利を掴んだ。


     ◇◆◇◆◇


~限界突破:ペリドットの場合~


 バトルフィールドの縁へ立ちペリドットは目を閉じ大きく深呼吸する。緊張が解れ手足の隅々まで酸素が送られる。


「…よし、ヘル召喚」


 美しい女性が魔方陣より現れペリドットの側へ付く。


「手順通りすれば必ず勝てる。大丈夫、落ち着いて」


 氷の鎧(アイススパイク)を掛けてクリスへけしかける。主の命を受けたヘルはクリスへブリザードキッスを敢行。口付けされた場所からクリスの皮膚は凍り始める。


「まあ大変、わたくし凍り付いてしまいますわ」


 しかしそれを読んでいたかの如くクリスは即座にイフリートを喚ぶ。炎の鎧(バーニングスパイク)で凍った皮膚を溶かした。


「ならばっ。ヘル、アブソリュート・ゼロ!」


 絶対零度の吹雪がクリスとイフリートを包む。自慢の炎を掻き消されイフリートは還りクリスは深刻なダメージを受ける。


「まさかイフリートを退ける程の魔力を持ってただなんて、わたくし、少々驚きです」


 本当に驚いているのか疑わしい物言いにペリドットは心を乱されるが、ここで挑発に乗ってはクリスの術中、グッと堪える。


「ガルム召喚、ヘルにデスハウリング!」


 クリスに呼び出されたガルムは魔力を込めた遠吠えをする。ヘルには毒、麻痺、沈黙、暗闇等の弱体(デバフ)が付与されてしまう。


「ヘル還って! インドラ召喚!」


 冷静にヘルを下げインドラを喚ぶペリドット。その隙にガルムはペリドットへ噛みつき攻撃を仕掛ける。喉元を狙われたペリドットは咄嗟に腕を出して急所への一撃を躱す。しかし腕を噛まれ動きを封じられてしまう。


「インドラ! ヴァジュラ!」


 ガルムを無視しクリスへ雷攻撃を行う。落雷を受けたクリスが膝をつき、ここで勝敗は決した。


     ◇◆◇◆◇


~限界突破:シトリンの場合~


 独自の呼吸法で氣を練り丹田へ集める。次の一撃へ全ての力を乗せる為、精神を統一させその氣を内へ溜める。限界まで氣を溜め込むとシトリンはクリスへ向かい駆け出す。クリスもまたシトリンへ向かい駆け出しお互いがクロスするように貫手を繰り出す。

 シトリンの貫手はクリスの首筋を捉え鮮血を散らす。クリスの貫手はシトリンの秘中を捉え呼吸を詰まらせる。急所を的確に突かれシトリンは仰け反る様に後方へ回転しながらクリスへ爪先蹴りを見舞う。

 僅かにアゴを掠めるが決定打にはならずお互いに距離を取りあう。


「ぼっけぇやり辛いのぉ…」


 自分と同じ技を使う相手、それは今までに経験した事も無くシトリンを混乱させていた。肩で息をし、呼吸が乱れている事に気付くと天地陰陽の構えを取り氣を練り直す。


「じゃが、これはどうじゃ」


 ポーチから得物を取り出し利き手に装着する。


「まあ、黄金の爪を持ってるなんて聞いてませんわよ」

「素手相手に気は引けるがこれも勝負じゃけん」

「構いませんわ、全力を以て相手を屠る。それがアタッカーの矜持ですもの」


 黄金の爪を装備したシトリンを前にしても全く怯む様子の無いクリス。その不気味な様子にシトリンは決着を焦ってしまった。

 遮二無二攻撃を繰り出すがクリスを捉える事は出来ずカウンターの一撃でシトリンは倒れ勝敗は決した。


     ◇◆◇◆◇


~限界突破:レシルの場合~


「今回は対策もバッチリだし負けないよ」


 自信満々にバトルフィールドへ入るレシル。1対1なのでヘイトを上昇させる装備は必要無くそれらを攻撃力が上がる物に交換した。クリスと何度か対戦し解った事はお互いに攻撃力が低い事だ。ある程度の防御力は捨てその分を攻撃力へ充てる。


「殴り装備なんて剣士のレベリング以来だな~」


 レシルはぐるぐると肩を回し気合いを入れる。バトルフィールドの中心に立つクリスを見ると抜刀し一気に間合いを詰める。


閃光(フラッシュ)!」


 閃光のスキルで先手を取る。しかしヘイトを稼がずとも1対1なのでクリスはレシルを攻撃する。レシルの狙いは閃光の暗闇効果による攻撃のミスを誘う事だ。

 だが閃光はクリスも使える。大量に持ち込んだ目薬ですぐに暗闇を治し攻撃を再開する。閃光による暗闇の効果時間はそんなに長くはないが、少しでも早く、多くのHPを削る必要のあるバトルだ。回復を待つなんて悠長な事はしてられない。


「今度は閃煌!」


 クリスが暗闇から回復するとすかさず再び暗闇を付与する。閃光と閃煌のスキルが使用可能になる度交互に放ちクリスが暗闇に冒されている時間を保持する。

 攻撃はペンタスラッシュが命綱だ。盾役(タンク)であるフォートに攻撃力が上がるスキルは無い。よって食事効果やウェポンスキルを放つ一瞬だけ完全な殴り装備に変更してダメージを稼ぐしか無い。後はハイヒールをシールドバッシュでどれだけ潰せるかだ。


「痺れてきた~、何も気にせず殴れるの、ホント久し振り!」


 ギリギリのやり取りを繰り広げているのにレシルはどこか楽しそうだ。そしてクリスもまた同じ。笑顔で殴り合う2人、バトルフィールドは異様な空気に包まれていく。


「閃光! からのハイヒール!」


 万が一に備え回復魔法はクリスが暗闇状態の時に行う。順調にレシルはクリスのHPを削っていくが、ただやられるばかりのクリスでは無い。絶対無敵(インビンシブル)を使い物理ダメージを全て無効化する。ダメージを与えられないと言う事は、殴りによる詠唱中断が不可能。しかも一方的に殴られると言う事態に陥る。レシルも急いで絶対無敵を発動し同じ条件にする。


「あらあら、わたくしの動きについてこれてますわね。ですがまだまだ続きますわよ」


 詠唱中断されない状況を利用してクリスはハイヒールを唱える。折角削ったHPを回復されてはまた時間切れになってしまう。レシルは慌ててシールドバッシュでスタンさせハイヒールの詠唱を止める。


「無駄だよ、回復する暇なんて与えてあげないから」


 盾を構えながらニヤリと笑うレシル。一方のクリスはアゴに指を当て少し困った表情を見せる。お互いの出方を伺っているうちに絶対無敵は解けダメージが通常通りに入る様になった。

 それをチャンスと捉え一気呵成に攻撃を仕掛けるレシル。しかし次の瞬間、クリスの手のひらが向けられた、と思った刹那…目が眩む強烈な光を浴びて視界が奪われる。

 予測してなかった状況での閃煌スキルだ。


「目がー! 目がーー!!」


 有名な男の様な声を上げながら両手で目を覆う。何とか目薬を使用し復帰するが、その時にはクリスのハイヒールが詠唱完了していた。


「ちぇっ、回復されちゃったか…」

「これでわたくしもまだ勝利の目が潰えた訳ではありませんわ」


 お互い絶対無敵(奥の手)を使ってしまっている以上、相手を屠る手段はガチンコで殴り合うしか残されていない。レシルは有利に戦闘を進めるが数回に1回はシールドバッシュのタイミングがずれてハイヒールで回復されてしまう。それを抜いたとしてもこのクリス…、どれだけの体力があるのやら。本当に倒せるのか? 疑心暗鬼にも似た気持ちがレシルの心を支配し始める。装備は? これで良かった…はず。食事は? 攻撃用の高いヤツを奮発して食べた。戦術は? 序盤からしっかり機能している。何度確認してもどこかに疑問がつきまとう。折れてしまいそうな心でも何度も立ち上がりペンタスラッシュを放ってきた。

 今回も同じだ。シールドバッシュでハイヒールの詠唱を止めた。こっちは閃光を入れてからハイヒールを唱え無事に回復出来た。後はペンタさを叩き込みダメージを与えるしか無いのだ。


「いっくよ~ペンタスラッシュ!」


 少し間の抜けた、しかし裂帛(れっぱく)の気合いと共に放たれたペンタスラッシュは確実にクリスの体を切り裂いた。


「うむむ…お見事ですわ。わたくしの負け、ですわ」


 タイムアップギリギリまで続いた攻防はレシルの勝利で幕を閉じた。

 新年三が日は3日連続アップを予定しています。是非読んで下さいね。


 今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。

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