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蒼と紅  作者: 久村悠輝
102/110

第102話

 ドロップ率に左右されないルビーはひたすら盗むのスキルを使い続けた。しかし結果は散々でフラグを折るどころかルビーの心が折れそうな所へ来ている。


「覚悟はしてたけどこれ程かよっ」


 握り拳で木を殴るルビー。太陽はとうに傾き始め8の刻が近付きつつあった。


「ルビーさん、落ち込むのはまだ早いわよ。私のもまだなんだから焦らないの」


 そうなのだ、パールのアイテムも未だドロップせず多くの魔法使いが倒され続けている。オークなだけに多くの…。

 ルビーのストレスがマックスに達したのは魔法使いがアイテムをドロップした時だった。言葉に成らない奇声を上げ目は血走りどっちがオークか判らない程だった。


「これで狙うのがスカウターだけになったよね?」

「ええ、そうよ。ルビーさんが盗めるまでキープすれば良いだけだから状況はシンプルになったわ」

「すいませんすいません、生きててすいません、アタシが不甲斐ないばかりに皆に迷惑かけてすいません…」

「もう、ルビーちゃん落ち込まないの!」


 サファイアが励ましてもルビーは俯いたまま何やらブツブツ言うばかりで周りの声は届いて無い様だ。


「仕方ないわね。サファイアさん、レシルさん耳を貸して」


 2人を呼び何か小声で話すパール。サファイアとレシルの顔が女性キャラとしてやってはいけない顔になってる。そんなやり取りが行われているのも露知らずルビーは相変わらずブツブツ言い続けている。

 目配せをしてサファイア、パール、レシルはルビーを取り囲みアイコンタクトを交わし頷く。

 その直後、パールとレシルがルビーの皮鎧の肩紐をほどきサファイアがそれをずり下げる。アンダーウエアに包まれた形の良いバストがぶるんっと露わになる。ルビーが驚く暇を与えずサファイアがそれを両手で鷲掴みにし、左右からパールとレシルがルビーの耳を甘噛みする。


「~~~~~~~~~///!」


 スパパパーーーーン!


 声にならない叫び声を上げるルビー。そのハリセンがサファイア、パール、レシルの後頭部へクリティカルヒットした。


「な、何て事しやがるんだ!」


 顔を赤らめたまま両腕で胸を隠し3人を睨み付ける。


「だって、こうでもしないとずっと落ち込んでばかりじゃない」

「そうよ、時間もあまり無いのだからサクサク進めるわよ」


 サファイアは何やら別の事でブツブツ言っているが、これは放置する事にする。


「とにかく8の刻が来ちまう前に決めれば良いんだろっ」


 素早く皮鎧を着直し、顔を赤らめたままルビーは次のオークを探しに行った。


「ちょっとやりすぎたかしら」

「私は楽しかったよっ」


 頬に手を添え反省するパールと満面の笑みを浮かべるレシル、両極端な2人とは別にサファイアは、


「ルビーちゃん、おっぱい大きくなってた」


 成長しない自分の胸に手を当てながら呟く。毎日同じ物を食べ同じ生活をしているのになぜ差が生まれたのか、サファイアは不満を募らせる。


「釣ってきたぞ、あとよろしく」


 ルビーが釣って来たオークのパーティはナイト、モンク、スカウターだ。まずはモンクから倒すため全員が集中攻撃を仕掛ける。しかしモンクのHP(ヒットポイント)は異常に高い。倒すのを手間取った隙にナイトが絶対無敵(インビンシブル)を発動させる。

 強引にターゲットがモンクからナイトへ変更されてしまう。倒しにくいナイトを残すのが定石とは言え眠らせる事をしなかった自分の迂闊さに(ほぞ)を噛むパール。

 しかし想定外の出来事はこれだけではなかった。なんとナイト、モンク、スカウターが技連携を仕掛けてきたのだ。一気にHPを削られるレシル。そこへマジックボーナスの追撃が決まる。瀕死のレシルへエクスヒールを掛けるサファイア。パールとペリドットも回復スキルや魔法で補助する。何とか事なきを得たが、属性攻撃が出来るオークが居たならレシルは確実に戦闘不能に陥っていただろう。

 ナイトの絶対無敵が解けターゲットが解放されるとすかさずパールはナイトを眠らせる。そして3匹のオークへダーククラウドを実行、暗闇に陥れた。モンクを倒せば次はナイトの番だ。確かに硬い相手だがそれは物理攻撃に限定した場合だ。サファイアの極光(オーロラレイ)、パールのフレイムキャノン、ペリドットのヘルによるブリザードキッスで呆気なく沈んだ。


「さて、こっからが本番だな」


 ポキポキと指を鳴らしながらスカウターに近付くルビー。


「ま、のんびりやるですヨ」

「少し寝る」


 アメジストとシトリンはやる事が無くくつろぎ始める始末。それに対して何も言えないルビーは八つ当たりの如くオークの懐を狙う。何かを掴んだ手応えがありそのまま引き抜く。


「ぃよっしゃぁ! やっと盗れたぜ!」


 天に拳を突き上げ喜びを露にするルビー。


「それじゃさっさと片付けて帰るわよ」


 すかさずパールがペンタスラッシュでオークを切り刻む。続けてペリドットの鈍い痛み(ブラントストライク)が叩き込まれ、ルビーが不意討ちを乗せた蜂の一刺し(ワスプスティング)を繋げマジックボーナス風を発生させる。


     ◇◆◇◆◇


「なるほど、あれが君の言っていた面白いギルドか」

「ああ、戦闘中に休憩を始めるなんてなかなか肝が座ってるだろ?」


 崖の上から7人を見下ろす2人組、着用している装備からかなりの手練れと判断出来る。


「良く言えば面白い、だが…悪く言えば緊張感の足りない連中だ」

「ともあれ嫌でも顔を合わせるんだ、早めに知っておいて損はないぞ?」

「ま、無事に限界突破したら考えるよ」


 片方はまるで興味が無いとばかりに踵を返しヒラヒラと手を振りながらその場を立ち去る。


「ちぇっ、あわよくば顔合わせしようと思ってたのに…なかなか上手く行かないもんだな」


 もう1人も後を追いその場を後にする。


     ◇◆◇◆◇


 サファイア達は日が暮れる前にヴァイトインゼルへ戻り翌日の予定を立てていた。6人部屋へレシルも入ったため少し窮屈に感じる、


「明日はまず競売所(オークションハウス)ね。HP回復させるポーションを買わない事には話にならないわ」

「そっか、パーティで戦う訳じゃないから自分で回復するしかないんだ」

「そうなんだよ、いくら(フォート)でも耐えきれる訳じゃないからね」

「その事なんだけど。レシルさんは防御力を上げるよりも攻撃力を上げて力押しするのはどうかしら? 時間切れになってるから純粋に火力不足かも知れないわ」

「あっ、そっか。その発想は無かったな~」


 パールの言葉にハッとして顔を上げるレシル。


「確かにフォートやランパートは防御力に長けていますし少々殴られてもびくともしませんでしたね」


 ダンジョンで窮地に立たされた時の事を思い出しながらペリドットは言う。


回復魔法(ハイヒール)も使えるし火力アップは良いかもね。レシルちゃんがメテオストライクを装備出来れば貸せたのに…」


 サファイアもそれに乗っかる。盾役(タンク)頭のおかしい武器(メテオストライク)を装備したらそれこそ無敵じゃないか。


「でもロマンがあって良いじゃん」


 何度も言うがサファイア、天の声に反応するんじゃない。


「念のためサファイアさんとペリドットさん、私は霊薬(エリクサー)を持って行きましょうか」

「高いアイテムなのに良いの?」


 心配そうにパールを見つめるサファイア。


「こんな時こそ使うアイテムよ」

「ハイエーテルも必要ですよね。数は足りますか?」

「3人が1戦分するくらいはあるから取り敢えずは大丈夫よ。それよりも競売所に復活薬があれば良いのだけど…」

「復活薬?」


 聞き慣れない単語にサファイアが反応する。


「復活薬はオーディンに謁見せずに衰弱無しで復帰出来るアイテムだよ。サファイアちゃんの復活(リバイブ)と同じ効果のアイテムなんだ」

「うわ、めちゃくちゃ高そうなアイテムだな…。誰がそんなの使うんだ?」


 レシルの言葉に値段を想像したのか眉をしかめ、上腕をさすりながらルビーは言う。


「あなたよ、ルビーさんが使うの」

「アタシが!? おいおい、そんなアイテムに頼らないといけないくらい忍者はハードなのか?」


 ガタッと椅子を鳴らし立ち上がるルビー。


「忘れたの? ルビーさんはエーテルを盗めばクリアになるのよ? 殴り倒すよりもそっちの方が楽でしょ」

「だからって殺られるの前提ってのはどうなんだよ」

「これは保険よ。盗むのスキルを使った直後に倒されてしまった場合、スキルが再使用出来るようになるまで倒れてなさい」

「なるほどね、そういう戦法なら納得出来るよ」


 そう言ってルビーは椅子に座り直す。


「シトリンさんは文字通りガチンコ勝負になると思うわ」

「問題無い」


 グッと両手を握りやる気を現す。


「アメちゃんはスキルを乗せたオリハルコンブレットでどれだけ削れるかが肝よね」

「距離を取ってヒットアンドアウェイでやりゃ余裕ですヨ。けどレア属性の弾丸がこんな所で役に立つなんて思わなかったですヨ」


 ポーチからオリハルコンブレットを取り出し眺めるアメジスト。


「残るはペリドットさんなのだけど…、私の予想じゃ開幕から全スキルを使用した最大火力での戦いになると思うわ」

「それでは威力の高い履行技・魔法を決めておいて短期決戦に持ち込んだ方が良さそうですね」


 高火力同士の戦いは先手必勝。ドラグーンも召喚士も戦略的には通ずるものがある。


「パールちゃんはどうするの? 向こうもそれなりにスキル使うでしょ?」

「私も小細工は無しよ。多少のスタン技を使うけれど基本は皆と同じ、当たって砕けろ、ね」

「まずは1戦やってみないと判らないってか…」


 アゴに手を添えながらルビーは思案する。


「それじゃ験担ぎに皆でパブのカツカレーを食べようよ」


 レシルの提案で7人は揃ってパブへ向かった。

 今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。

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