第101話
パールに連れられサファイア達は城の中庭へ出た。
「あっ、やっと来た!」
青い鎧に鳳凰が飛翔する彫金細工、豊満なバストを収納するための特殊な形状のチェストプレート。間違い無くユニークスターズのレシルその人だった。
「待ってたよ~、元気してた??」
「うん、レシルちゃんも元気だった?」
「私は…少し凹んでるかな。限界突破が上手くいかなくてついさっきも負けて来た所だよ~」
「ほへ? レシルちゃんでもそんなに苦戦するんだ?」
「するよ~、向こうも同じジョブだから防御力が高くて全然HPを削れないんだ。またクエストのアイテムを取りに行くところ」
がっくりと肩を落とすレシル。エルフ族なのになんだか小さく見える。
「だったら私達と行かない? レシルさんってレベル50でしょ? 私達も50になったから足手まといにならないはずよ」
落ち込むレシルにパールが提案を持ち掛ける。その言葉にレシルの表情が輝く。
「良いの? 私としては是非お願いしたいよ」
パールの手を握り喜ぶレシル。ソロでアイテムを取る事も可能だが、弱い相手を選んでも獣人はパーティを組んでいる為、勝率は五分五分だそう。パーティやコーポレーションを組めば勝率はぐんと上がるし時間短縮にもなる。
早速レシルの案内で獣人…、オークの拠点へ向かう。キューニィでも1刻程度掛かる為、ある程度の人数で固まって行動し全員分のアイテムを手に入れた方が手っ取り早い。
◇◆◇◆◇
「あれがオーク? ほんと豚人間だな」
木の陰から様子を伺うルビー。視線の先にには獣の皮でこしらえた簡素な衣服を纏っているオークが数匹。それぞれに武器を手にしていて何とかオークのジョブを判断出来る。
「あのパーティからやってみようか」
レシルが指差したのは両手剣、ナックル、本を持っている3匹のパーティだ。
「戦士、モンク、学者ね。釣る時は他のパーティがリンクしない様に気を付けて」
「まずは学者から倒した方が良さそうね」
「うん、後衛からやるのは基本鉄則だよ」
パールの意見にレシルが頷く。
「それじゃいくよ」
そう言ってルビーは学者へ向けてクナイを投げる。先制攻撃を受けたオーク達はルビーを見付けると一斉にこちらへ走り出した。いや、学者だけはその場で魔法を唱え始める。しかし詠唱が終わる頃にはルビーは既に魔法射程の外にいた。ワンテンポ遅れてルビーを追うが戦士とモンクはレシルの閃煌でヘイトを植え付けられルビーを狙っていない。学者のみがルビーを追ってキャンプ地へ走り込んで来る。
「閃光!」
ルビーに迫ろうという所で真横から目がくらむ光を受けて学者はそちらへヘイトを募らす。
「∞〒◇"/%>♯!」
オーク語だろうか? 聞き取れない言葉を発しながらパールへ襲い掛かる。だが後衛が単体で戦いを挑んでも結果は見えている。あっさりと倒したサファイア達はモンクへ狙いを定める。
殴るしか能の無いモンクはパールのダーククラウドで視界を奪われ空振りばかり繰り返す。余談だがダーククラウドは範囲攻撃なので戦士にも影響を及ぼしてした。大振りになり単調な攻撃になったモンクの攻撃をかわすのは簡単で呆気なく倒される。こうなれば多勢に無勢、残った戦士のオークは苦もなく倒され塵へと還る。
しかしドロップ品は何も無くルビーは次のパーティを釣る事にした。
「わかっていたけど簡単には落とさないか」
「それに加えてルビーさんは盗まないと手に入らないよ」
そうなのだ、ルビーのジョブ・忍者はスカウタージョブの獣人からスキルを使って盗むしか無いのだ。
「それじゃ次はあのパーティをやってみようか」
「えっと…短剣、細身剣、あとはロッドだね~。何のジョブだろ?」
「おい冗談だろ? サファイア、お前本当に判って無いのか?」
「判るよ~スカウターでしょ、細身剣がエンチャンターで…でもロッドを使うジョブなんてあったっけ?」
「トゥインクルロッドをぶん回してしたヤツが忘れてやがるですヨ」
「あ! メディック! って事は私とルビーちゃんのアイテムが手に入るかも?」
「そうよ、回復されると面倒だからまずはメディックを倒して次にエンチャンター、スカウターはルビーさんがアイテムを盗めるまで生きててもらうわ」
「うわ、生かさず殺さずですヨ」
「バカね、そんなの常套手段じゃない」
にっこり微笑むパール。さっさと片手剣を抜き早く釣れとルビーに無言の圧を掛ける。
「時間掛かりそうだからサクサクいくぞ」
今度ルビーが狙いを付けたのはメディックだ。突然クナイを投げ付けられたオークのメディックはルビーに侵食を唱える。詠唱時間の短い魔法はルビーを捉え皮膚を爛れさせる。反射的にサファイアはルビーにキュアを掛けるがそれが失敗だった。
ルビーの投擲よりもヘイトを稼いでしまったサファイアはオークのメディックに狙われる。ロッドを振りかざしサファイアへ殴り掛かる。が、シューティングスターで反撃するサファイア。攻撃魔法も回復魔法も唱えずひたすら殴り会う後衛職に周囲は呆れ返る。しかしモンスターとタイマンを張るにはサファイアでは不利過ぎた。みるみるうちにHPが削られ窮地に立たされる。見兼ねたパールがサファイアを回復させオークのメディックに閃光を浴びせる。スキルを防御に振った魔神をメディックが倒せる訳も無く、パールが攻撃に耐えている間にルビー、アメジスト、ペリドット、シトリンの集中攻撃を受け倒された。
「痛いよ~、アイツ嫌いだ」
「しっかりパールがヘイト稼ぐ前に治癒魔法を唱えたサファイアが迂闊ですヨ」
「だってルビーちゃんを早く治さないとって思ったから…」
「その気持ちは有り難いがパーティとしての立ち回りを優先してくれると助かるな」
サファイアの頭をぐしゃぐしゃと撫でながらルビーは彼女なりのお礼を言う。
「それよりさ、早くエンチャンターを倒してくれると嬉しいな~」
「おっといけね。背中借りるぜ」
レシルの背後を借りてモンスターに騙し討ちを決めるルビー。
「特に必要なアイテム落とすジョブでも無いしさっさと退場願いましょっか」
エンチャンターはその名の通りパーティメンバーへ様々な効果を付与するジョブだ。自身の武器に雷属性を付与し追加ダメージを与えてくる。追加ダメージは属性攻撃なのでどれほど防御力が高くともダメージは一定なので確実にレシルのHPを削ってくる。これが手数の多いスカウターだったらあっという間にピンチに追い込まれていただろう。
「厄介な相手だなっ」
「長引かせるとレシルさんが危険だから技連携いくわよ」
とは言ってもこちらと同程度の強さのオークだ、あっさりと3連携で片付けられた。
「さて、あとはアタシの番だな」
そう言ってルビーは指を鳴らしながらスカウターのオークへ近付く。しかしレベルの限界突破クエストのアイテムだ、そう簡単に盗めるはずも無くただ時間だけが過ぎていく。
「次で盗めなかったら1度倒して休憩しましょ」
スキルが再使用出来る時間を待ってる間もレシルはひたすらオークの攻撃を耐えている訳で、疲労が蓄積していた。
「ルビーちゃん、がんばって!」
「いい加減そろそろ決めるですヨ」
仲間の応援虚しくルビーのスキルは空を切る。そしてスカウターはうっぷんを晴らすかの様にボコボコにされた。
「ねぇ、どうして獣人…オークって初級職ばかりなのかな?」
「ジュピターさんが言うには、上級職は21あるからアイテムを取るのが大変だから、とか言ってたよ」
「そうなんだ? 確かに初級職だと11種類で済むもんね」
レシルの言葉にサファイアはなるほどと頷く。更に付け加えるなら上級職の獣人が相手だとソロでのアイテム獲得が困難になる為だ。
夕暮れが近付き引き上げるか野宿するかを決めなければならない時間になったが、ここまででアイテムを手に入れたのはシトリンだけだ。さすがにこのままでは帰れないと言う訳で拠点から少し離れた街道…セーフティエリアで一夜を明かす事になった。
「アイテムを取るだけなのにこんなに時間掛かるなんて思わなかったよ~」
焚き火を車座で囲み食後の紅茶を飲みながらサファイアは愚痴る。それに乗っかる様にアメジストも不満を漏らす。
「確かに同じくらいの強さじゃドロップ率は良くないみたいね。明日は少し奥地へ行って強めのオークと戦ってみましょうか」
「そうですね、今日これだけ戦ってもシトリンちゃんのだけじゃ切ないです」
パールの提案にペリドットも賛同する。
「けどこれまで以上に攻撃に晒されるレシルは大丈夫ですカ?」
「とても強い相手じゃなけりゃ大丈夫だよ~。でも早めに倒してくれると助かるかな」
「なあ、アタシは1匹に5回失敗したらオークを倒して次のヤツを相手にしないか?」
「ルビーちゃん、それフラグ…。きっと半日は盗めないよ?」
「うるせ、アタシばかりに時間を掛けるのは申し訳無いんだよ」
「そう思うならさっさと盗むですヨ」
「でもそれは良い案だわ。明日は回転率を優先しましょ」
その言葉を聞いてルビーはカップに残った紅茶を一気に煽り、「先に寝る」と残してテントへ入って行った。
「おお、ルビーちゃんがやる気だ」
「空回りじゃなけりゃ良いですガ…」
「私も今日は疲れたからお先に寝るね?」
そう言ってレシルは1人用のテントへ潜り込んだ。残されたサファイア達は翌日の立ち位置や手順を確認して眠りに就いた。
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