第100話
遂にやって参りました、大台の100話です。連載開始した頃にはここまで長く続くとは思いもしませんでした。これもひとえに毎週飽きずにこの小説を読んで下さる皆さんのお陰です。
これからもサファイアの暴走大冒険は続きます、どうか暖かい目で見守って下さい。
「そろそろグルックベルクだけど休憩しないか?」
「私も賛成! お腹空いたよ~」
「戦闘をしてないので強化目的の食事を摂ってませんし、そろそろ空腹のバステが付きそうですね」
ルビーの意見にサファイアもペリドットも賛成だ。少し南へ下れば鯛そうめんの旨いお店がある。しかし今回は寄り道をしている暇は無いので諦めて街道沿いの食堂を探した。
「郷土料理のうずみを出してるお店があるからそこにしましょ」
「うずみって何?」
「ご飯とご飯の間に具材を盛った料理よ。倹約令が出ていた頃にエビや鶏肉をご飯に隠して食べていたのが起源らしいわ」
「へぇ~なんだか美味しそう」
「アタシもそれ食べてみたいな」
「それじゃ決まりね」
こうしてサファイア達は昼にうずみを食べ再びヴァイトインゼルを目指した。
◇◆◇◆◇
道中は順調に進みヴェストアルティケルで1泊する事になり冒険者ギルドへ立ち寄った。
ヴェストアルティケルは酒処として有名で、その中でもムーンオブアフターザレインは最も人気があると言っても過言では無い。
「二日酔いにキュアってホントに効くのか?」
ルビーは以前ジュピターが酒を勧められその時にアイリスがキュアを掛けていた光景わ思い出した。
「お酒をアイテムとして解釈するなら、酩酊は状態異常となるんじゃ無いかしら」
「なるほど、そう言う事か」
パールの意見を聞きルビーは迷わずムーンオブアフターザレインを注文した。シトリンもそれに乗っかる形でお猪口を手にしている。
「2人とも、明日はレベリングもするんだからほどほどにしなさいよ?」
「飲み過ぎてもキュアしないからね」
パールとサファイアは一応釘を刺しておく。しかしこの2人はそれで行動を改めるとは思えない。
翌日、案の定ルビーとシトリンは何度も激しい目眩に襲われ嘔吐を繰り返し進行を中断させた。二日酔いでキューニィに騎乗すれば当たり前だろう。昼頃には何とか体調が回復したのでキューニィを降り、ヴァイトインゼルへ向かいながらレベリングをする事になった。
「この辺りはまだ楽な相手だけどヴァイトインゼルに近付くほど強くなっていくから気を付けて。あとヘイトは自己管理してね」
盾役の居ない戦いは久し振りなのでパールが注意を促す。サファイア達は緊張した面持ちで頷きを返した。
「それじゃ…丁度良さそうなヤツからいくぜ」
ルビーはそう言って10メートルほど離れた場所に居るモンスターへクナイを投げる。トスッと肩の辺りにクナイを受けたモンスターは一直線にルビーへ向かい突進を始める。
「来た来た、あとヨロシク」
パールとすれ違いざまにそう言うと味方を通り過ぎて最後尾まで行く。
「サウンドハラスメント!」
キィィィィィ、と黒板を爪で引っ掻いた様な音が辺りに響く。不快な音を聴かされモンスターはパールへターゲットを変更した。
「それじゃいっくよ~、侵食・深淵!」
光の粒子がモンスターへ集束し皮膚を爛れさせる。それを見たルビーはパールの背後から騙し討ちを乗せた鰐顎砕牙を放つ。錯覚によりパールからウエポンスキルを受けたと勘違いしたモンスターはよりパールへヘイトを募らせる。
鰐顎砕牙に続きペリドットの有罪判決が決まる。威力は無いが低確率で即死の追加効果のあるウエポンスキルだ。更にパールが円陣剣で追撃をし、マジックボーナス氷が発動する。
「遁術・氷柱舞い!」
氷の触媒を使い術を唱える。無数の氷柱が天から降り注ぎモンスターを貫く。
「ヘル召喚、ブリザードキッス!」
美しい女性が召喚されモンスターの額へ口づけをする。そこを中心にモンスターは凍りついていく。
丁度良い相手にはこれで十分ダメージを与えられ、残ったHPは通常攻撃で削りきる。
西へ移動しながら狩りを続け日が暮れた所で野宿をする事になった。ヒルマウンテンとヴァイトインゼルを繋ぐ重要な街道の為、セーフティエリアの幅は広く周囲の冒険者も野宿の準備を始めていた。
「レベルも48まで上がったし、明日はヴァイトインゼルへ行けそうね」
「なあ、ヴァイトインゼルへ着いたらどうするんだ?」
ルビーはパールに問う。
「すぐに獣人の拠点へ行って限界突破クエストのアイテムを取りに行きたいわね」
「でもさ、ルビーちゃんやシトリンちゃんも獣人だよね?」
「そうね、でもこの場合の獣人はオーク族や海に棲むサハギン族、獣人と括って良いのか疑問だけどゴブリン族も居るわね」
「ほへ~、ケットシー族やコボルト族以外にも結構居るんだね」
パールの言葉にサファイアは感心しきりだ。
「でもオーク族ってアレですよね。繁殖するために他種族の女性と、その、交尾するって…」
「そこは安心して、この世界じゃあいつらはただの豚だから。ブヒブヒ鳴くだけの雑魚よ」
酷い言われようである。しかしR18指定の世界では無いので繁殖云々は削除されている。期待した諸兄諸姉には残念無念な話であろう。
「それじゃ安心して戦えますね」
パールの言葉にホッと胸を撫で下ろすペリドット。そのバストは豊満であった。話が一段落した所で夕食になった。ポーチからかまどを取り出し野うさぎの肉をフライパンでカリッと揚げ焼きにする。サラダを付けて焚き火を中心に車座になり談笑しながら食べる。シトリンはナイフを使わず直接かぶり付く。何でもナイフで切ると肉に金属の味がするから嫌だとか。サファイア達は何も感じない。コボルト族の習慣だろうか?
「久し振りにレベルアップすると楽しいな。やっぱり成長してなんぼだよ」
「けど限界突破のクエストクリアしないと50までしか上がんないよ」
「さっさとアイテム取ってクリアするですヨ」
「アメちゃん、焦らないの。アイテム取れてもNPCに勝てなければ意味は無いのだから」
「そのNPCはどれほどの強さなんでしょうか」
「やってみれば判る」
話題は自然と限界突破の事になる。全員が初めての事なのだ、誰もがNPCの強さを知らない。ジュピターからは最低限の情報だけ教えてもらったのは自分達で考えながら攻略したいからだそうな。
「久し振りにイザヨイに乗ったら太ももがパンパンだよ~」
「アタシもお尻が痛いや。鞍をクッションの良いやつに買い換えたいな」
「あら、私がマッサージしましょうか?」
「いや、良いよ。遠慮しとく」
パールが手をワキワキさせながらルビーにすり寄る。慌てて距離をあけるルビー。何かを思い出したようだ。
「そろそろミーはテントへ入るですヨ。関節のオイルを注さないと動きが怪しいですヨ」
一足先にアメジストはメンテナンスの為テントへ入った。残された5人はしばらく話を続けシトリンが寝落ちしそうになったのでテントへ入りそれぞれのシュラフで眠りに落ちていった。
◇◆◇◆◇
「ヴァイトインゼルって都会だね~。ヒルマウンテンよりも塁壁が高いし長~い」
翌日、レベル50になったサファイア達はヴァイトインゼルの街が一望出来る小高い丘の上に居た。
「でっけぇ湖のど真ん中に城ぶち建てるとかどんだけ金持ちなんだよ」
「この湖はカルデラ湖らしいわ。お城が建ってる小島も元々火口だった所みたいだし」
「何度見ても圧巻ですヨ」
「ヴァイトインゼルがセントラル王国の中心なのがよく解ります」
「早く行く」
そう言うとシトリンは待ちきれないとばかりにレモンを走らせる。サファイアも慌ててイザヨイに鞭を入れる。6羽のキューニィは街道を駆け下り一路ヴァイトインゼルの城門を目指した。
他の街と同様に衛兵に冒険者証を見せて門を通過し厩舎へキューニィを預ける。街の中は循環馬車が走っていてどこから乗ってもどこで降りても100ケロと言う安さだ。
建物もほとんどが2階建てのヒルマウンテンとは違いこちらは4階建てが主流だ。冒険者ギルドのカウンターも8つありどれも人の列が出来ている。
「ふわ~すごい人だよ」
「ヴァイトインゼルに比べたらヒルマウンテンは田舎なんだな…」
「これで気後れしてちゃ何も出来ないわよ」
「この後、城へ行って限界突破のクエスト受けるですヨ」
「そ、そうでした。どうしましょとても緊張します」
「どうにかなる」
「とりあえずお昼にしましょ。ここはお好み焼が名物よ」
パールのお勧めにより全員がお好み焼に決めた。サファイア達を驚かせたのはニチナマの焼き方と違う事だった。何でもヴァイトインゼル風の焼き方だそうな。味は申し分無く、カリッと焼かれた麺とトロリとした卵が良いアクセントを生んでいた。
昼食を終えると揃って城へ向かう。中央の小島には1本の大きな橋が架けられていて、両脇には観光客が鈴なりになっていた。観光客が何をしているかと言うと、湖に居る鯉へ餌をやってるのだ。もともと野生の鯉でいつの間にかこの湖に棲み着いたらしい。その影響でヴァイトインゼル城は別名鯉城と呼ばれている。
その橋を渡り城へ入る。城門と同じように冒険者証を確認されただけで呆気なく中へ通された。
「おいおい、こんなザルで良いのかよ」
「大丈夫よ、悪い事すれば全部冒険者証へ記録されるし、抜刀も魔法もスキルも無理だからね」
「マジかよ…それじゃ…っ! …ダメだ、不意討ちが発動しない」
「私も精霊が喚べません」
「ね、言ったでしょ。防御は万全なのよ」
城の中庭は中央に大きな噴水があり、それを取り囲む様に花壇が整備されている。花壇は綺麗に手入れされ沢山の花々が咲き乱れていた。
今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。




