君しか知らない
虫が苦手な方、すみません。すぐに処理されるので20行ほど読み飛ばしていただいて構いません。
「危ないから近寄らないで。私は魔法で強化してるし、これくらいなら平気だから」
助けに入ろうとするルビーを制した両手を胸の前でクロスさせーー
「刃風!」
魔法を詠唱するとパールの周囲の大気が激しく渦を巻き風の刃が蜂を次々に巻き込み切り刻んだ。渦はすぐに消えて蜂達は絶命しパールの足元へ転がっていた。
「朝ごはんよ」
ニコリと2人へ向けてニコリと笑うパール。
「サファイアちゃんは虫食の文化無いからパスさせて貰おうかな…」
「アタシも流石に虫は無理だわ」
「ん? ああ、違うわ。このまま食べないわよ」
見てて、と蜂の死骸を指差す。するとそれがスゥっと消えて翅と毒針と蜂の巣のような物と、小さな小瓶が代わりに現れた。モンスターを倒したので戦利品がドロップした。
「モンスターは倒すと素材になるの、合成したり装備の強化に使ったりするわ。でも、凄い、ローヤルゼリーまでドロップしたわ。これはルビーさん達が持ってて」
パール曰く、蜂がドロップする巣の欠片から蜂蜜を合成してそれを朝ごはんにするとの事だった。ローヤルゼリーはレアドロップ品で滅多に手に入らず、その上需要が高いので競売所やバザーで高く売れるらしく駆け出し冒険者には良い金策になっていた。
「私は朝ごはん作ってるからアメちゃん呼んできて貰って良いかしら? この先の小川で顔洗ってるはずだから」
と、言われたので2人は街道を背になだらかな斜面を下りて行く。間もなくサラサラと川のせせらぎが聞こえてきた。岩の上にアメジストの荷物を見つけたので周りこむとそこに全裸(?)のアメジストが水浴びをしていた。
「キャーっ! ルビーさんのエッチ! ですヨ」
「ルビーちゃんてばラッキースケベ発動させるなんて信じられないっ」
「待て待てお前ら、こんなチ○ビの造形も無い人形の裸体に誰得よ」
オートマタ族にも羞恥心があるようだ。
「う~ん、確かに昨今のフィギュアでもキャストオフしたらしっかり作り込まれてるもんね」
「ミーは人形じゃなくてアンドロイドですヨ、そこ間違えるなですヨ」
「まぁ自律で動くか動かないかは大きな違いだな」
今回は素直にアメジストの主張に同意するルビー。
「でもどうして人gy…じゃなくてアンドロイドが水浴びしてるの?」
「ミーはとてもとても高性能なので痛みを感じるし汚れたら体を洗いたくなるですヨ」
「無駄に高性能だな。清潔に保とうとするのは良いけど痛みは必要無いだろ?」
「ノンノン、痛覚が無ければ攻撃されても避けようとしないですヨ?」
「いちおー考えてるみたいだね」
「理屈は通ってるけどコイツが言うとなんかムカつくな」
「めちゃくちゃディスられてる気もするですヨ…」
不満を垂らしながら小川から上がり両の手首にブレスレットを装着すると淡く光りアメジストの腕へ消えた。
「え?! ちょっとどうなってるの?? 輪っかが消えたよっ!」
「ふふん、知らないなら教えてやるですヨ。ミーのオートマタ族は装備によって強さが変わるですヨ。レベルが上がる毎に装備出来る部位は増えていくですヨ。ちなみに装飾品は今みたいにボディと一体化するですヨ」
「けどそれじゃステータスが上がらないみたいじゃない」
もっともなルビーの意見。話を続けながらアメジストは次々に装備を身に着けていく。
「ステータスは装備によって増えるですヨ。もちろん強い防具はそれなりのレベルじゃないと装備出来ないですヨ。二人ともこれを装備してみるですヨ」
アメジストは青色の宝石が埋め込まれた指輪を2人に渡す。やや大きめサイズのリングで気を付けないと落としてしまいそうだ。
「アメちゃん、これブカブカ…」
サファイアの微弱な魔力を察知した指輪は指にピッタリなサイズへと縮小した。
「わっ! わっ! すごいよ、指輪がピッタリになったあああぁぁぁあぁあ! 重い重い重い重い重い!」
指に納まった途端、指輪はとんでもない重さになりサファイアは大地に手をつく羽目になった。
ようやく10話の公開です。ここまで休まず連載を続けている自分を褒めてあげたいです。
オートマタ族の説明を入れたら文字数(自主規制)がオーバーしてしまったので続きます。
次回こそはヒルマウンテンに行きたいですね。
2024.04.25
変な場所に半角スペースが入っていたので削除しました。