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転生忍者、地獄で鬼相手に無双する  作者: 天川藍
第三章 烏合の戦場
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⑩漆黒の怪異、再び


死の臭気(におい)というものがある。

戦火の狼煙(のろし)、策謀の吐息(といき)馬蹄(ばてい)地鳴(じな)り、人々の身の内に巣食う殺意、害意、怨嗟(えんさ)のまなざし――。


そういったものを敏感に察しては(かすみ)のように姿をくらまし、時に逆手にとって利用する(わざ)を〝微兆(びちょう)の術〟という。


とりわけ、東雲(しののめ)は負の想念(そうねん)というものに対する嗅覚(きゅうかく)が人一倍鋭敏(えいびん)であった。


幼少の頃より、忍務(にんむ)だけでなく里で生活する日々においても、自分へむけられる敵意に囲まれながら生きてきたためである


――だからこそ勘づいた。

船室で目が覚めた時からずっと、船の底にアレがいるということを。



   *     *     *



波ひとつ立たない穏やかな海の下、(よど)んだ気配がおどろおどろしくわだかまっている。


水温は暖かであった。

しかしそいつが張りついている場所だけは、船底が白く凍結しているのが見てとれる。


東雲(しののめ)は飛び込みざまに大きく水を()いた。

途端に、背後からうなるような咆哮(ほうこう)とむき出しの殺意が追ってくる。


(来やがれよ……!)


黒いヘドロの化け物は、一度目の邂逅(かいこう)をなぞるようにひしゃげた爪を振りかざし、一直線にこちらへむかってきた。やはり速い。

東雲(しののめ)はなんとか化け物に追いつかれる前に、赤鬼の船舶(せんぱく)の真下へ泳ぎついた。


誤解を招きかねないため弁明をそえておくと、東雲(しののめ)は化け物に会いたくて海へ飛びこんだのではない。

彼奴(きゃつ)に絞めあげられた(あざ)はいまだ赤黒く残っているし、あやうく首と胴がさよならしかけたのは、つい昨日の出来事である。

できれば二度とお目にかかりたくなどなかった。


だがしかし、たとえヤツが(おのれ)の命を欲す死魔(しま)であったとしても、そこに生き延びるための活路があるならば、東雲(しののめ)は潜らねばならない。


死を誰よりも(きら)いながら、(おく)せず絶望の(ふち)ぎりぎりを走り抜けることができる胆力(たんりょく)

それこそがこの男の強みであった。


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