表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生忍者、地獄で鬼相手に無双する  作者: 天川藍
第一章 鬼ヶ島からの脱出
16/59

⑮火遁の術


同時刻。地下へとつながる隠し扉の前では、騒ぎを聞きつけた牢番(ろうばん)と門兵が合流していた。


ただでさえ幅のせまい通路に、泡を食った筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の鬼どもが押しあい()しあいひしめくさまは、筆舌につくしがたいむさくるしさである。


だがしかし、この場の空気がまるで蒸し風呂を思わせる熱気で充満しているのは、盛りに盛られた赤黒い筋肉の押しくらまんじゅうが原因ではなかった。


火事の第一発見者(・・・・・)がそのままにしておいたのか、半端に開かれた隠し扉のすき間から、白い煙がもうもうと立ち昇っている。

赤鬼たちは目の色を変えて、例の仕掛けへと殺到した。


鬼のひとりが鍵となる壁の石材を殴りつけ、四本の支柱に支えられた石床が降下する。

下層へ着くやいなや、彼らは我先に隠し部屋の扉へとなだれ込んだ。


深い地の底であるにもかかわらず、部屋の内部は真昼のように明るい。

床を濡らす油が、独特な臭気をあげて燃え盛っているからだ。


引火の原因は、壁掛けから落ちた照明用の油皿であった。

それを管理するはずの不寝番(ねずばん)は、(のど)から血を流し死んでいる。


赤鬼たちは震撼(しんかん)した。


こぼれた油を追いかけて蛇のように床をなめる炎が、白い植物へ食らいつき、根本からちぢれた灰塵(かいじん)へと変えていた。

事は一刻を争う事態である。


「な、なんだってんだ!? どこのどいつがこんな――!」

「侵入者か!?」

「んなことより草だッ! 草が燃えちまうぞッ!」

「水持って来い!!」


場は騒然とし、嵐のような怒鳴り声が支離滅裂(しりめつれつ)に飛びかった。


数人がまろぶように通路を引き返し、上階へ戻るために壁の石材を再度押しこむ。

しかしどうしたことか、仕掛けはうんともすんとも動かない。


「おい、どうした!?」

「故障か?」

「冗談だろ!? こんな時に!」


赤鬼たちは色めきたった。そうこうしているうちにも炎はどんどん勢いを増し、にごった煙が天井を白く(おお)いはじめている。


――……余談であるが。


混乱というものは、ひとつならば大概のことはすぐに収束をはかることができる。

しかしそれがふたつ同時に発生すると、思考は少なからず混迷し、三つ以上となればもはや何から手をつければ良いのかわからなくなるものだ。


このような恐慌状態(きょうこうじょうたい)を意図的に演出することこそ、忍者の十八番(おはこ)なのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ