総司令官
零二はフードの者と共にガルズ王国の王都内にて歩を進める。
案内はない。
何故ならば自分はこの道を知っているから。
「一年ぶりだな。 それよりも『美沙』お前はずっと
俺を付けていたのか? あまりにもタイミングよかったよ
な?」
美沙と呼ばれるものがフードをとる。
ショートヘアでクリクリお目目の可愛い子が姿を顕にした。
歳は24で零二の一つ下。
そして、零二の隊の副長を務めるナンバー11だ。
何故、若いながらに、そして女性なのにここまでナンバーが強いのか。
それは彼女の戦闘能力とスキルにあった。
『千里眼』 相手のスキルや力を看破する。
この力のおかげで美沙は、ここまでの地位を獲得したのだ。
零二にはなくてはならない存在となった。
「そんな人をストーカーみたいに言わないでくださいよ!
たまたま、総司令官に隊長を連れてこいって言われた
んですから! それよりも一年ぶりですね!
私も凄く成長したんですよ?」
美沙は自慢げにそう語る。
零二は美沙を見詰める。
確かに前よりも戦闘能力がさらに上がった気がする。
それに、身体の方も・・・・・・。
「・・・・・・隊長? どこ見てるんですか?」
美沙に勘づかれ急いで胸から目を逸らす零二。
「そ、それよりも何の用なんだよ! わざわざ呼び出すって
事はかなり重要な事なんだろ?」
そう。ナンバー2を呼び出すほどに。
零二の隊が必要なら美沙で十分のはず。
それでも、隊長である零二を呼び出すということは余程の事。
しかし、どうやら本題は美沙も知らない様子。
ともなれば、やはり直接言って聞くしかない。
しばらく歩き、一年ぶりに到着する。
総司令官の部屋。
つまり、、、
「ナンバー2零二、ナンバー11美沙、入ります」
そう、扉の奥に声を掛けると一言返事が来る。
「入れ」
中から返事がしたのを確認して扉を開ける。
そこに待っていたのは綺麗で長い黒髪を下ろし、整った顔をした
女性が一人座っていた。
彼女を見て思うのはただただ、美しい。
そんな美しい彼女こそが総司令官でありナンバー1である
『朔夜』。
女性ながらにナンバー1へと上り詰め零二の一つ上の26歳だ。
史上最年少でナンバー1へと上り詰めた。
そして、国王に次いで偉い、総司令官の座へと上り詰めた。
そんな朔夜は今まで書類仕事をこなしていたのか、机には
たくさんの書類が重なっている。
が、零二と美沙が入ると作業をやめ、零二達の方向へと顔を向けた。
それも飛び切りの笑顔で。
「よく戻ってきたな零二。 一年ぶりか?
それに美沙ご苦労だった」
朔夜は声までもが澄んでおり美しかった。
とはいえ、零二は今回の呼び出しが気に食わなかった。
「戻ってきたじゃないですよ! 無理矢理ですからね!
せっかく、良い出会いがあったのに、、、」
雪乃との仲を深めていた最中にこの引き裂き行為。
零二はずっと根に持っていた。
対して、後ろに居る美沙は苦笑いだ。
言われた朔夜もやれやれと言った様子で呆れている。
「全く、、、最初に約束しただろう?
街で暮らすなら揉め事を起こさない事。
お前の力は絶大なんだ。 すぐ様バレてしまうからな。
それに、後始末を誰がしてあげたと思っている?
街中でスキルを使うなと言っただろうが」
朔夜の言葉にぐうの音もでない零二。
正論しか言われていないから。
やはり、朔夜に何を言っても無駄だと思い出した。
「うっ、、、わ、わかってますよ。
それよりも、用件ってなんですか?
俺じゃなきゃダメなんですか?」
零二の言葉で先程までの砕けた空気が一瞬で張り詰める。
何故ならば朔夜が真剣な面持ちで構えたから。
「あぁ、実は隣国のスヴァルト王国が、我がガルズ王国へ
侵攻するとの情報が入ったんだ。 それもスヴァルト王国の
ナンバー2がな」
敵国の侵攻。
その言葉は零二と美沙の顔を瞬時に変えた。
二人も朔夜同様に真剣な表情へと変わっていたのだ。
何せ、戦争なんて三年もしていないから。
小さな小競り合い程度なら、色々な国で起こっているが
大々的な侵攻は、実に三年振りである。
これにはいつもは、お巫山戯調子の零二も真剣そのもの。
「なるほど。 相手がスヴァルト王国ナンバー2なら
こちらもガルズ王国ナンバー2の零二隊長って事ですね」
美沙が朔夜の意図を読み、そう答えると朔夜は頷く。
「あぁ、スヴァルト王国は謎が多い。 隣国とは言え
ナンバーズと戦った事もない。
よって、こちらも出し惜しみなく、零二に出てもらう。
いいか零二?」
戻ってきて早々に戦争。
つい先程までごく普通の生活を送っていたのにだ。
零二は天井を見上げ、大きく息を吐く。
「ふぅーーー、、、どうせ拒否権はないんでしょう?
それに、一年も休みを貰ったんだ。
俺が行きますよ朔夜さん」
零二は覚悟を決めた強い眼差しでそう返事をする。
そんな零二の姿にホッとしたのか朔夜の顔が柔らかくなり
小さく微笑む。
「よかった。 まだ決まった訳では無いが、恐らく奴らは
来るだろう。 戦の準備をして備えてくれ」
「なるほど、、、ってなると、俺の隊にも声を掛けなきゃな。
アイツらに会うのか・・・・・・はぁ、、、」
自分の隊であるにも関わらず、何故か零二は乗り気ではなかった。
しかし、朔夜も美沙も気にしていない様子。
「あぁ、今回はお前の隊、『特務隊』全員で行ってくれ。
何があるか分からない為、数は避けない。
少数精鋭。 お前達で頼むぞ」
上位10以内、つまりゴッド・ナンバーズになった者には
それぞれ特別な隊が授けられる。
近衛隊や魔法隊、隠密隊に諜報隊など様々。
その中でも必殺部隊と言われるのが零二率いる特務隊。
少数ながらに、一人一人が強力な力を保有しており
最強の部隊の一つと言われている。
そんな最強の隊を率いるのが、零二だ。
「わかりましたよ。 ではこれで失礼します。 美沙、行くぞ」
「はい! 失礼します!」
零二に続き頭を下げ零二と共にその部屋を後にする。
部屋に一人残る朔夜。
「全く・・・・・・戦争が近いというのに零二という奴は、、、
だが、零二の力は確か。 頼りにしているぞ、零二」
そう一人呟くと再び書類仕事へと戻る総司令官であっな。
「面白いな、続きが読みたいなと思ったらブックマーク、高評価をお願いします。そして誤字脱字や意見などあったら是非コメントしてください。」




