十殺隊
『スヴァルト軍、ガルズ王国へ向けて出陣』
この報せはすぐ様朔夜の耳へと入った。
ガルズ王国の優秀な偵察隊のおかげで、進路、数、率いる将
全てが朔夜の耳へと入った。
「やはり、そこを通ってくるか。
そして、数も予想通り。 ただ率いる将は
聞いたことがないな・・・・・・一体何を考えている」
この無謀ともおれる侵攻。
これではただ兵を死地に追いやるようなもの。
恐らく、今回も複製スキルで侵攻してくるのだろうと
朔夜は予想する。
相手の意図を考えていると、部屋をノックし一人の老人が
入ってきた。
「よく来てくれたな源斎。
やはり、此度の侵攻はお前に任せる。
ただ、机上の上では敵の侵攻の意図が読めない。
だから、お前には実際に現場へ行きお前の心の目で
何かを感じとったら教えてくれ『心眼の源斎』よ」
「懐かしい二つ名を耳にしましたなぁ。
お任せを。 わしの心眼で必ずや敵の意図を暴いてしんぜよう」
源斎はそういうと手を合わせ礼をし、その部屋を後にする。
部屋から出た源斎はその足でそのまま自身の率いる隊の元へ
足を運んだ。
既に副長の手によって出撃準備は完了している。
これも、源斎の統率力が成せること。
源斎率いる直下兵である十殺隊。
兵の数は300と決して多くは無いが、それでも一人十殺と考えれば3000人力ということになる。
「琥珀よ、兵の準備ご苦労であった。
総司令より、出撃の許可がおりたぞ。
強者は居ないようだが油断せぬようにな」
源斎の前に立つ一人の女性。
綺麗な顔立ちであり、長い黒髪を上で結ぶ、武士の様なその見た目。
心も武士であり、女性ながらにこの国の剣術師範代である。
そして、源斎の副長を務める者。
「はい。 源斎様の教えは心得ております。
相手が格下であろうと全力で挑むのが礼儀。
では源斎様。 参りましょう。
皆聞いたな! 出陣だ!!!」
琥珀の号令の元、源斎率いる十殺隊300人が王都を出立。
各国には王都以外の城は存在しない。
それこそ、辺鄙に暮らす村などはあるが街という街もなかった。
とはいえ、村にも人は住んでいる。
スヴァルト王国の侵攻予定地は、一つの村を通過する事になると予想されていた。
だから、源斎達は相手よりも先にその村を超える必要があったのだ。
源斎に鍛えられた兵士ならば余裕で着くだろうと予測される。
そして、案の定敵よりも先に村に入ることができた。
偵察の報告では、敵は村より一日ちょっとの距離。
進路も数もわかるならば守りは容易い。
源斎は十神将の中でも最古参であり、実践経験も豊富。
一日もあれば守りを固める事など容易かった。
今日はム村で休息を取り、翌日になると源斎、琥珀の号令の元
速やかに十殺隊は配置についた。
スヴァルト王国軍の進路先を厚くし、念の為全方位に兵を配置する。
そして、中央には源斎が居て、最前線には副長たる琥珀がいる。
彼女の力は然ることながら、その魅力によってこの隊も強くなっているのだ。
彼女はまだ18と若いため、兵の皆からは娘や妹の様に愛されている。
そんな彼女が直々に最前線へ出ると、兵士達の士気も大いに上がるということだ。
とはいえ、源斎も内心は彼女が心配であり、本来なら後方に配置したい気持ちがある。
あるのだが、琥珀は戦争になると言うことを聞かないのだ。
副長である自分が前線に立つと。
彼女の力を信じているからこそ源斎も渋々ながらに了承している。
だが、いつでも助けられる距離で、だ。
そんな琥珀の視界には、とうとう敵の影が見え始める。
まだ1キロ以上はありそうだが、砂煙も舞い上がっており
敵だと判断するには容易い状況であった。
敵の数は事前に知らされており800人との事。
その兵力差はこちらの約3倍。
つまり、余裕である。
何せ、こちらは一人で十人を殺すと言われている精鋭中の精鋭。
敵の兵の質までは分からないが、朔夜曰くまたしても複製によってつくられた劣化した兵士達だという。
それに名だたる将もいない。
だから、源斎は自身の隊だけで十分と息巻いて出陣したのだ。
そして、敵の数も前方にいるだけで全てだとわかった。
つまり、全方位に配置していた兵士を前に集中しておく事ができる。
そこからは源斎の号令の元速やかに陣替えが行われる。
敵が距離をどんどん詰めている中、十殺隊は悠々と陣を組むことができた。
それは一重に源斎の統率力、そして十殺隊一人一人が兵法に通じているおかげである。
そして、陣組が終わり琥珀が振り返り源斎の顔を見て、何かを仰ぐ。
突撃の合図を待っているのだ。
そんな琥珀の意図を組んで源斎は、ただ小さく頷く。
『お前に任せる』と。
源斎から許可が降りたと同時に琥珀は脇差しから一本の刀を抜く。
そのまま天高く掲げると、皆に聞こえる声で---
『十殺隊よ! 奴等は我等が領地を脅かす者!
そんな野蛮な輩は我等が刀で一刀するのみ!
全軍---突撃だァッ!!!!!』
琥珀の号令の元、十殺隊は横並びで一気に敵めがけて駆け出す。
こうして、ガルズ王国対スヴァルト王国の戦争が繰り広げられていくのであった。
そして、この戦争に乗じてとある人物がガルズ王国へと侵入する。
皆が外にばかり目を向けている間に・・・・・・。
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