零二の怒り
「ドンドンドンッ!!!」
司令室の扉から大きなノック音が聞こえる。
(ん? これは・・・・・・零二だな?)
「いいぞ」
朔夜の言葉と同時に扉が乱暴に開かれる。
そして、案の定そこには零二が居た。
それも怒りの形相で。
「どうしたそんな顔をして。お前にはまだ休暇があるだろ
う?
今はスヴァルト王国で忙しいんだがな」
朔夜は資料を読み漁りながらそう話す。
「残砡は今どこに居ます?」
怒りの声色で殺気立ちながら朔夜に問い掛ける。
残砡という名前を聞き朔夜も資料を読むのをやめ
零二へと目線をやる。
何せ、零二の口から残砡という名前が出るとは思いもしなかった。
十神将同士、仲が悪いという訳では無い。
だが、顔を合わせる機会も少なく、朔夜以外とは皆が
交流は少ないのだ。
よって十神将から他の十神将の名が出るのはとても珍しい。
それもよりによってあの残砡の名が。
「さぁな。 あいつは研究局長だ。
恐らく自分の研究所に引きこもっているのだろう」
その言葉を聞き零二は朔夜の目の前のテーブルを両手で叩く。
「バンッ!!!」
「朔夜さんはアイツの行為を黙視するんですか?!
アイツの噂は聞いているはず!!!
あんな奴を十神将なんかにしたらガルズ王国は
内部から崩壊するッ!!!
俺に奴を捕まえる許可をください!」
零二がここまで怒りを顕にするのは珍しい。
そして、朔夜も残砡の行為には思うところがあった。
「お前も知っているだろう。
奴は長年我が国を苦しめた不治の病、『死疫病』の
特効薬を開発しこの国を救った功労者だ。
もちろん残砡の噂も聞いている。
金持ちから金を奪い、小さな子供達を誘拐。
中には子供を使って実験をしているという噂も
耳にしている」
その話は零二も知らなかった。
誘拐して子供で人体実験するなど言語道断。
さらに零二の沸点は上がる。
「なら尚更だ!!!
いくら奴が国を救ったとはいえやっていい事にも
限度がある!!!
朔夜さんの命令が無くても俺が直接行ってやつを殺す!」
殺気立った零二は今にも飛び出して行きそうな勢いだ。
「待て! 奴の研究所は私でさえも立ち入りを禁止されてい る。 つまり、噂は噂に過ぎない。
本当に実験しているかさえも証拠がないんだ。
もし無実だったらどうする?」
朔夜の言葉に納得できないのか唇を噛み締める。
「くっ、、、だが! 確かに俺達は誘拐する現場をこの目で
見たんだ!!!
子供を攫うなんて他に理由があるかよ!!!」
零二に対してため息を吐く。
「はぁ、、、わかった。 残砡の件は私が必ず証拠を得る。
結果がわかり次第、そして、、、もし奴が人体実験を
しているなら私もそれは許せない。
その時は零二。 お前に頼むぞ」
そこまで朔夜に言われるなら流石の零二も引かなくてはならないと感じた。
渋々ながらも朔夜の案を了承する。
「・・・・・・わかりましたよ。 奴が悪だった場合は必ず俺が
殺りに行きますからね。 失礼します」
そう言って部屋を後にした。
「ふぅ。あいつの最後の殺気には流石の私も肝を冷やした
な。お前も悪いタイミングでここに来たな真明」
そう。この部屋には朔夜と零二以外にももう一人の人物がいた。
『真明』
ナンバー11であり、朔夜の側近であり副長を務める男。
年齢は一回り上ではあるが朔夜への絶対忠誠の元生きている。
大柄で筋肉質な彼と朔夜は正に美女と野獣だ。
しかしながら、そんな野獣も今は完全に空気と化していた。
そして、零二の殺気にやられ放心状態となっている。
「・・・・・・久しぶりにお会いしましたがやはり、十神将の方は
恐ろしいです。あんな化け物達の手綱を握る朔夜様は正に
総司令官たる器です」
冷や汗を流しながらもそう語る真明。
そんな真明を見て微笑みながら朔夜は話す。
「そうだな。 今のガルズ王国のゴッド・ナンバーズ元い十神将
歴代最強と言っても過言ではないかもしれないな。
その分癖の強い奴らが多い。
特に零二。 アイツが『あの力』を使ったならば私でも
抑えられないだろう」
朔夜の言葉に驚愕する真明。
十神将同士でも数回程度は腕試しをしている。
でなければナンバー順位を設定できないから。
つまり、ナンバー1の朔夜はナンバー2の零二よりも強いということになる。
現に真明も耳にした事があるが、朔夜と零二は歳も近く、ナンバーも近い事から仲が良く、暇さえあれば手合わせをしていたという。
その勝敗は毎回朔夜が勝っていたという。
それも100試合近く。
だから、朔夜の勝てないかもしれないという言葉に驚いた。
いや、勝てないではない。
抑えなられない。
「ん? 朔夜様、抑えられないとはどういう事ですか?
朔夜様は全戦全勝と聞いておりましたが?」
真明のその言葉で朔夜の表情が真剣な面持ちへと変わる。
「そうか。 真明にはまだ伝えていなかったな。
非公式でもあり、私がナンバー2。零二がナンバー3の時。
当時のナンバー1であり、元総司令の方監修の元、初めて
零二と手合わせしたんだよ。
序盤は私の優勢で勝てそうだという時、アイツは力を
暴走させ私は倒れた。
あの時は元ナンバー1の方に救われ、零二も力を抑えて
もらったが、もし二人だけでやっていたならば私も零二も
死んでいただろうな」
「ッ?!!!」
朔夜の話す過去に言葉が出ない。
朔夜が負けた事はもちろん、死んでいたかもしれない。
自身の崇拝する朔夜が死んだとあらば真明も後追いする勢いだ。
真明ももちろん、朔夜に手合わせしてもらっているが一度も
勝ったことがない。
未だに信じられない様子。
「・・・・・・些か信じられる話ではありませぬが、朔夜様の
実体験とあらば信じる他ありませぬな」
「あぁ。 だから、零二の手綱は特に力強く握らなければならない
んだ」
その言葉に頷く真明。
それと同時に十神将の力に改めて驚愕していた。
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