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国が慌ただしく動く中、零二は残りの休みを八百屋で過ごしていた。


特にすることも無く、じっとしていても『あの事』を

思い出し涙を流しそうだったから。



決して嫌いで振られたわけでは無い。

未来ある別れだ。


とはいえ、振られたことには変わりない。

だから、無心になって八百屋でおばちゃんの手足となり働いていた。

いや突っ立っていた。




「おばさん! これどこ置きます?」



「あー、その棚に上げておいて!」



「はーい!」



「ありがとね!」




零二を他所に一人の女の子とおばちゃんがせっせと食材の品出しをしている。





「・・・・・・それで、どうして美沙がここにいるんだ?」



零二が棒立ちになっている間にせっせと働く美沙。


彼女も当然休暇を貰い、暇だったのか零二の元へやって来たのだ。


そして、着くなりおばちゃんの手伝いをして今に至るという。



「だって、城に居ても暇なんですもん!

隊員の皆も飲んでばかりだし!

だから遊びに来ましたー!!!」



野菜を運びながら笑顔でそう答える美沙。



「俺は仕事で忙しいんだ!

お前に構ってる時間はないぞ!」



その時背後から零二の頭上に拳が降り注ぐ。



「痛ッ!!!?」



痛む頭を抑えながら後ろを振り向くと、そこにいたのは

仁王立ちした般若の顔をしたおばちゃんの姿が。



「何言ってたんだい! さっきからボーッと突っ立てるだけ

で!!!

美沙ちゃんの方がよっぽど働いてくれてるよ!!!」



おばちゃんからの喝が入る。

殴りと喝の波状攻撃であった。


おばちゃんは首でクイッと美沙の方向へ向ける。


恐らく謝れということだろう。



「うっ、、、み、美沙。 すまなかった。

よかったら昼でも食べに行くか」



おばちゃんの前では赤子同然の零二がおかしく見え

美沙は笑いながら応える。



「ふふふっ、全然良いですよ! その代わり美味しいお店

お願いしますね!」



「任せとけ! って事でおばちゃん昼行ってくるね!」



切り替えの早い男である。

そんな零二におばちゃんは呆れながらも、



「昼ってあんた、何もしてないじゃない、、、

まぁいいさね! ゆっくり観光しておいで!」



なんだかんだ、おばちゃんも零二に甘々なのであった。




零二の横をぴったり歩く美沙。

零二もイケメンであるが、美沙もこの国トップレベルの

可愛さを持っている。


そんな二人が街中を歩くのだから、すれ違う男女は皆目が釘付けとなっていた。

というより目の保養としていた。



「それで、どこに連れてってくれるんですか?」



「俺の行き付けの店でもいいか?

ちょっと裏通りにあるけど静かで美味い店なんだ!

店主が俺の古い仲でさ!」



「それは楽しみですね! 裏通りっての言葉が怪しいですけど」



からかうようにそう口ずさむ美沙。

美沙の言葉の意味を理解した零二は、ないないとまるで妹の相手をするかのように流していた。


ただ、そんな零二の態度が少し気に入らなかった美沙は頬を

膨らます。



「そんな即答で否定しなくても・・・・・・」



小さく呟くも零二の耳には届かなかった。

元々聞こえる声で発しては無いのだから当たり前だ。




「ん?!」




その時、零二が突如立ち止まり美沙は零二の背中に顔面をぶつける。



「ぶへっ! ちょ、零二隊長?! いきなり止まらないでくださ い! 私の可愛いお鼻が潰れるじゃないですか!!!」



痛む鼻を擦りながらそう話すも零二に指で口を閉じられた。

暴れて取ろうとするも、零二が奥の方を指差す。



「静かにしろ。 アレ」



美沙は零二の指差す方向を見ると、目を丸くした。

そして、同時に口を解放してもらう。



「ッ?!!! あれって、、、うちの軍の人間ですよね?」



「あぁ。 前から噂で聞いたことがあったが本当だったとはな」



零二と美沙の見つめる先には小さな子供の手を取り早足で歩く

ガルズ王国の軍の姿が。



この街、というよりこの国には一つの噂があった。




『幼児誘拐事件』である。




まだ小さな子供が突然街から失踪するという。

だが、不思議な事に親も何も訴える事はしないため、これといって事件にもなってないのだ。



だが、まさかやってる犯人が軍の人間だとは零二も美沙も

思いもしなかった。



「零二さん・・・・・・私許せません」



美沙は拳を握りしめ、怒りの視線を彼等に向ける。



「あぁ、俺も同じだ。 悪い美沙。飯は後でいいか?

奴らを捕まえるぞ」



「もちろんです隊長」



そう言うやいなや、零二と美沙は物凄いスピードで誘拐犯目掛けて

距離を詰める。



死角から飛んできた為か、誘拐犯達も驚き行動に出遅れる。



「へっ、こんだけ近付けば余裕だぜ!

悪いが寝ててもらうぞ!」



零二が誘拐犯目掛けて拳を振りぬこうと構える。が、、、




「くっ、、、転移!!!」




女性の力強い声と共に一瞬で目の前から消えてしまったのだ。


さっきまでいた誘拐犯らしき人物二人と小さな子供が。

誘拐犯二人がフードを被っていた為、顔を見ることは出来なかったし捕まえることも出来なかったがヒントは得ることができた。




「隊長・・・・・・あのスキルって、、、」



「あぁ、ナンバー8の副長のスキルだ。

つまりナンバー8『残砡ザンギク』の仕業つぅことだな」



零二は拳をにぎりしめる。


同じ十神将の仲間であり、同じ国の者だというのに何故こんなことをするのか。


零二は苛立つ気持ちを抑え、消えた場所をただただ見つめるだけであった。

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