予想外
戦争後には必ず10日間の長期休暇が与えられる。
そこで、零二はというと、街に行き雪乃へ会いに行こうと思っていた。
前回は突然の別れと言う事もあり、ちゃんと現状の話を出来ていなかったから。
行く前に、副長である美沙に万が一の為行き先を伝えておく。
報連相は基本である。
「俺の家はかわるよな? 何かあれば直ぐに教えてくれ!
それじゃあ行ってくるわ!」
「了解しました! 楽しんで行ってらっしゃいです!」
美沙に別れを告げ、まずはおばちゃんがいる八百屋へと向かう。
「おばちゃーーーんッ!!!」
「零二じゃないか!!!あんたってばほんと急に現れるんだ から!!!」
おばちゃんと再開のハグを交わす。
零二にとっては母親的存在であり、家族同然。
お互いに顔を見て安堵する。
零二が帰ってきた事により、おばちゃんは従業員に仕事を任せ、零二を伴い奥の部屋へと入っていく。
「よく帰ってきたね。 怪我はないかい?
ついこの間に大きい戦いがあったんだろ?
また10日くらいは居られるの?」
暖かいお茶を出しながら零二に訊ねる。
「大したこと無かったよ! なんたって俺は強いからね!
うん! だから、ギリギリまではここでゆっくりしようと
思ってる!」
零二のその言葉にホッとする。
そんなおばちゃんの表情に零二もなんだか、心が暖かくなっていた。
少しの間他愛もない会話で弾んでいると、一人の女性の声が
零二の耳に入る。
零二はその声に直ぐに反応した。
忘れるはずがない。
「雪乃ちゃんッ!!!」
零二は勢いよく部屋を出て雪乃の元へと走る。
おばちゃんはというと、話してる最中ではあったものの
そんな無礼息子の零二を暖かい目で見送った。
「レ、、、零二さん?・・・・・・」
雪乃は零二の登場に驚く。
ただ、買い物をしていただけであり、零二に会えるなんて思いもしなかったから。
そんな困惑している雪乃に対し、零二は雪乃の前に立ち
頭を下げた。
「ごめん雪乃ちゃん!!! この前はなんの説明もなしに
いなくなっちゃって・・・・・・。 よかったらゆっくり話したい!
この後時間貰えないかな?」
頭を下げる零二。
そして、未だ整理のつかない雪乃。
少しの間が空き、雪乃は零二の頬を両手で覆う。
雪乃にゆっくりと顔を上げられ、目の前に居たのは優しい表情で
こちらを見つめる雪乃の姿が。
「大丈夫ですよ零二さん。 せっかくなので食事しながらでも!
その代わり零二さんの奢りですよ?」
雪乃の言葉に零二は舞い上がる。
怒られるかもしれない。
最悪、もう二度と会ってくれないかもしれない。
だというのに結果はこうなった。
零二の頭は既にお花畑である。
「ほ、本当にッ?!!! ありがとう雪乃ちゃん!!!
おばちゃん!!! ちょっと出掛けてくるね!」
そう言って、零二は雪乃が買っていた野菜達を代わりに持ち
雪乃と共に八百屋を後にする。
雪乃を一度家へと送り届け野菜を置いて再び街へと繰り出す。
席についてからゆっくり話そうと思い、道中は他愛もない会話で
少しずつ距離を縮めていた。
そうして、少しの間歩を進めていると、雪乃の視界には見慣れない街並みが。
「ここって、、、高級店が立ち並ぶ区画ですよ?
レ、零二さん?!!!」
余程の金持ちじゃなければ来られないような高級区画。
雪乃の家は良くも悪く無普通であり、こんな場所来たこともなかった。
すれ違う人皆が高そうなタキシードやドレスに身を包んでいる。
装飾品だけでも家が買えそうな宝石を散りばめて。
雪乃は場違い感に苛まされ、零二を必死に止める。
だが、零二は平気平気とそのまま雪乃の手を握り、道を進む。
歩きなれているかのように、歩を進める零二の手をしっかりと握りついて行く。
周りの目を気にしながらも、ようやく零二は歩くのをやめた。
そうして、目の前にある建物はいかにも高そうなお店。
高級料理店だ。
「さっ! 入るよ雪乃ちゃん!」
心の準備も出来ないまま零二の言われるがままに一緒に店へとはいる。
中に入って改めて思う。
物凄い場違いだ。
冷たい視線が飛び交うと思い、雪乃は周りの客をよく見れない。
そうして、店員が一人やって来る。
(きっと追い出されちゃう)
雪乃は身構えているも、店員の態度に驚かされる。
「これはこれは零二様。 本日はようこそおいでくださいまし
た。 ここ最近顔を見せていただけないので私共も心配して
おりましたよ」
「すまんすまん! そもそも、しょっちゅう来れるほどこの店の
食べ物は安くないだろ? でも、味は信頼してるからまた
利用させてもらうぞ」
雪乃は二人の会話に驚いていた。
店員もどうやら零二を見知った様子であり、零二は何度もこの店を利用している様子。
言われてみれば当たり前なのかもしれない。
何せ零二は、、、
「これはまたご謙遜を。 零二様はこの国のナンバー2。
貴方様ほど金貨を貰っている人など極わずかでしょう」
そう。零二はこの国のトップに近い人物なのだ。
それに命を懸けて戦っているのだから、たくさん稼いでいるのも
当たり前。
零二はナンバー2なのだから。
雪乃は驚きの反面、零二が遠い存在になってしまった事を
少し寂しく感じていた。
いや、元々遠い存在だったのだ。
零二と雪乃は店員に連れられ、一つの個室へと入る。
恐らく重客用の個室だろう。
雪乃はまたも驚かされるが、零二への対応なら当たり前なのだと
頭に叩き込む事にした。
そして、少し落ち着くと次々に運ばれて来る高級料理の数々。
一品一品で大量の金貨を動かす程の料理。
そんな料理にも関わらず零二は普段と変わらず、がつがつ口にほうばる。
そんな零二の姿を目の当たりにして、雪乃も少し落ち着いたのか
ゆっくりと口へと入れていく。
その味は正に至極の味。
今までに味わったことの無い食感に味。
今までに食べたことの無い料理ばかりだ。
そうして、談笑を交えながらも雪乃は次第に落ち着きを取り戻し
笑顔になっていた。
零二の経緯を聞いたりと、深く彼を知ることも出来た。
料理も終わり、話も終わりそろそろ店を後にしようという時。
零二がソワソワしながらも、雪乃の目をしっかりと見つめる。
「雪乃ちゃん! も、もしよかったら俺と、、、お付き合いして
ください!!!」
零二は頭を下げ、右手を前に差し出す。
突然の告白。
だが、零二は今しかないと思った。
ここを逃せばまたしばらく会えなくなる。
だったら今自分の気持ちを伝えようと。
それに、やらしい話零二は確かな手応えを感じていた。
高級料理に連れて来て、好感度を上げるという訳では無い。
今までの感じからして、確かに雪乃からの好意を少なからず感じていたのだ。
そして、その零二の手応えは確かなものであった。
雪乃にとって、零二との時間は毎日が楽しい時間であり、驚きの日々となっていた。
それに零二の事を一目惚れしていたから。
だが、零二の告白の応えは思いもしない返事を待っていたのだ。
暫くの沈黙が続いたと思うと、、、
「ありがとうございます。 本当に嬉しいです。
だけど・・・・・・ごめんなさい、、、」
まさかの拒否に零二は思わず顔を上げる。
「・・・・・・えっ?・・・・・・」
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