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九惨の力

「ク、九惨が出たぞォーーーッ!!!」

「皆、道を開けろッ!!! 巻き添えくらうぞ!」

「隊長、九惨出す時は合図してくれっていつも

言ってるのに!!!」



特務部隊の皆が悲鳴をあげながら九惨の通る道を空ける。



不気味な仮面に上半身裸に鎖を巻き、奇妙な装飾をぶら下げた九惨。


その風貌だけでも敵味方問わず戦慄する。



「楓! 下がるよ!!!」


「わ、わかっただよー!!!」



「黒槌先輩ッ! 九惨先輩が出ました!」


「・・・・・・えっ? あ、うん。 様子見ながら戦おうか」



幹部達でさえもその場を退く。



この戦場で今一番危険な人物は敵では無い。

間違いなく九惨である。



だから、零二と美沙は片時も九惨から目を離すことは無かった。




そんな中、恐れ知らずの相手が九惨の前に立ちはだかる。



「そんな見た目に恐怖すると思ったか?

俺はナンバー11の金朗キンロウ!勝負だ!!!」



敵軍を指揮していた者自ら九惨の前に立ちはだかる。


ナンバーは九惨よりも上である。


とはいえ、ガルズ王国のナンバーとスヴァルト王国のナンバーには大きな差があることを思い知らされることとなる。




だが、九惨にとって相手のナンバーなど関係ない。

目の前を塞ぐ者があるなら壊すのみ。



九惨はそのまま勢いを止めることなく走り続ける。




「猪武者が!!! 私のスキルで瞬殺してくれるわ!・・・・・・

ぐはッ!」




金朗がスキルを発動しようとしたその時、突如後方から鎖が飛び出し、金朗の首を締め上げる。

そして、地面へと引っ張り倒す。



更に追加で四本の鎖を出現させ、両手両足を鎖で繋ぐ。



これで金朗は何も手出しが出来なくなった。



ここからは惨劇が始まる。


鎖を両手に持ち九惨は空高く飛ぶと、手に持った鎖でもって

金朗目掛けて何度も何度も振り下ろしたのだ。



鞭のように振られる鎖。

よく見れば、鎖は色々な形状があり、敢えてボロボロにしたり

棘付きにしたりで、金朗の皮膚は抉られていた。



戦場に響き渡る断末魔。



この光景に、味方はもちろん、敵でさえもただ見ている事しか出来なかった。


止めようとすれば殺される。 助けようとすれば殺される。


敵味方の頭に浮かぶ恐怖の文字。



ただただ指揮官が殺られていくのを見ている事しか出来なかった。



そして、断末魔も無くなり、金朗の命が尽きる。



そこに立つのは返り血を浴びた九惨の姿。

地面には、元々は人だと思われる亡骸が一つ。



先程まで戦場に怒声が響き渡っていたが、それも全て消えた。

まるで墓場のように。



皆が九惨の一挙手一投足を見つめている。



ボーッと金朗の亡骸を見つめていた九惨が急に顔を上げる。

次なる敵を見つけたようで、突然駆け出したのだ。



そして、皆の時が進む。


先程の惨劇を目の当たりにした敵軍に最早戦意は無い。

指揮官もやられ完全に喪失した。



その場から一斉に退却するスヴァルト軍。

だが、尚も攻撃の手を緩めない九惨。


幹部達が後ろを振り返り、皆が零二を見つめる。



止められるのは零二だけだからだ。



だが、零二は何故か止めようとすらしなかった。

むしろ、九惨さえも見ていなかったのだ。


もっと奥を見ているような、そんな気がした。



そして、零二が見つめる先を唯一知っていたのが、直ぐ後ろに控える美沙。



「隊長、わかりました。 あの人の名は『陳塊』スキルは

『虫』です」



美沙の千里眼により、敵の名前とスキルを看破する。

情報の有利はでかい。

だから、美沙は女性でありながらもナンバー11まで登り詰めることができたのだ。



美沙の言葉に頷く零二。



「ありがとう美沙。 あの九惨の攻撃を見ても眉一つ動かさねぇ

恐らく、余裕で九惨を対処できるんだろうな。

悪いが美沙、後のことは任せる。 九惨を殺させる訳には

いかねぇからな」



美沙にあとのことを頼むと、零二は光の如くその場を後にした。






「ふむふむ。 あんなに威勢よく出た割には自分よりも格下の

相手に殺られているではないか。

スヴァルト王国の恥晒しめ。 そして、兵士達もそうだ。

仕方ない。 私の虫で少しは使えるようにしてやろう。

行け、寄生虫達よ」



すると、陳塊の手から何百匹もの寄生虫が飛び出し、逃げ惑う

兵士達のあらゆる穴から侵入を始めた。



最初こそ叫び逃げ惑っていたスヴァルト兵達も、急に静まり返る。


まるで生きた屍のように。



その光景には流石の九惨も一度止まり、警戒をした。



「ふふふっ、最初から私がやっていれば直ぐに終わっていたの

だ。 さぁ、役に立て兵士共!」



陳塊の言葉に反応するように一斉にスヴァルト兵が九惨目掛けて飛び掛る。


敵はまだ百人以上はいる。

それが一斉に九惨に飛び掛かれば、流石の九惨も苦戦を強いられる。



だが、九惨が逃げることは無かった。


むしろ百名以上の敵に鎖を手に持ち突撃したのだ。



「ま、まずいわ! 皆急いで九惨の援護を!!!」



相手のリーダーの行動に驚き出鼻をくじかれた幹部達は出遅れる。


このままでは九惨と敵がぶつかる前にたどり着けない。



「楓ッ!!! 急いで九惨に結界をッ!!!」



響がそう叫ぶも九惨に結界が張られることは無かった。



「何度もやってるだよッ!!! でも、距離が遠くて届かないだ

よ!!! 急いで走らなきゃだよ!!!」



楓が目に涙を浮かべながら必死にそう伝え走る。



「九惨先輩っ、、、」



冬夜や黒槌は既に走っていた。

岩丈や京水、阿吽兄弟もだ。



だが、皆距離を開けすぎており完全に間に合わないとわかっていた。



そして、敵が九惨とぶつかるその時だった!




「どごおおおぉぉぉッ!!!」




雷撃が一閃。


数多の敵を消し炭にした。




九惨も驚いたのか、立ち止まっていた。

そして、幹部達にも安堵の表情が。




「た、、、隊長!!!」





ハンナが涙ながらにそう叫ぶ。


雷と共に現れたのは隊長である零二の姿が。



「こっからは、俺の時間だ」



ここにきてようやく、隊長である零二自ら攻勢にでるのであった。

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