特務部隊の成長
「ぎゃああああッ」
「お前何してんだ?! 俺達は味方だろうが!!!」
突如スヴァルト軍の一人が味方であるスヴァルト軍目掛けて
剣で切りつけたのだ。
スヴァルト軍も何が起きたのか理解出来ず、切った者に
叫び続ける。
が、反応すること無く更に剣を振り上げていた。
スヴァルト軍も味方を殺せるはずがなく、ただただ
その剣を捌きながらみんなで止める。
そんな様子を遠くから不敵な笑みで見つめる一人の女性が。
「ふふふっ、、、私の魅了に酔いしれるがいいわ。
男なんて皆私の虜なのよ」
響のスキル、魅了であった。
敵兵の一人に近づき魅了をかける。
あとはその敵を操り遠くからその光景を眺める。
それが響の技であり、男に対しては無類の強さを発揮していた。
だが、弱点もある。
響に対して一本の矢が飛んでいく。
そう。バレれば当然響が狙われる。
響自信には対した力もなく、そこら辺の女性となんら
変わりは無いのだ。
だが、今までも生き残ってきた。
その理由が、、、
「ガキンッ」
「な、なんだ?! 矢が何かに弾かれたぞ?!」
そう。確かに響に矢は突き刺さるはずだった。
それなのに、透明な何かに阻まれたのだ。
敵兵は何が起きたのか分からず、再び響の操った兵士によって
切り裂かれていた。
「いつもありがとう楓。 貴女の結界には何度も救われて
いるわ。 でも、自分も気を付けなさいよ?」
振り返るとそこには楓が立っており、響目掛けて結界を張っていた。
楓の結界は最強の守りであり、その防御力は絶大な力を誇る。
「ま、任せるだよ!!! 響の事も皆の事も楓が守るだ
よ!!! あうッ!」
楓は気合いを入れるも躓いてまたコケていた。
楓がコケるのは皆見慣れており、またか。と思うだけであった。
「うぅーーー、痛いだよーーー、、、」
そんな中、響の魅了により混乱しているスヴァルト軍の所へ二人の男が波状攻撃を仕掛ける。
「な、なんだッ?!!! 何に斬られてるんだ?!」
「そ、ソイツから距離を取れ!!!」
「ぐあっ!」
「その二刀流使いもかなり強いぞ! 皆で囲め!!!」
年少コンビである黒槌と冬夜のコンビである。
黙って黙々と敵を葬り去る黒槌と零二をチラチラと見ながら
敵を殺していく冬夜。
共に、近接のプロである彼等。
そして、彼等の連携に敵は為す術もなくその数を減らしていく。
「黒槌先輩! あの強そうなのは僕がやりますね!」
「・・・・・・えっ? うん。 なんて言ったか聞いてないけど
なんでもいいよ?」
二人の会話は成立しないが連携は確かに取れていた。
そして、一番後方からフラフラしながらスヴァルト軍へと
近付く男。
手には酒の入ったひょうたん。
誰から見ても酔っ払いだと直ぐに気付いた。
「な、なんだアイツ?! 戦場で酒を飲むなんて、、、」
「ふざけやがって・・・・・・俺達で直ぐに殺すぞ!!!」
スヴァルト軍の三名が京水のそのふざけた行動に怒りを
燃やし三人で飛び掛る。
「やれやれ、、、男を肴に飲む酒はまずいんだよねぇ。
こんな見たくれだけどさ・・・・・・私は強いよ?」
そう言うと京水の先程までの雰囲気ががらりと変わり
敵の剣や槍を避けながら、敵の急所目掛けて秘孔を突く。
そして、気付けば三名のスヴァルト軍は地面に伏していた。
京水の流れるような攻撃はまさに酔拳であった。
「うぃーーーっと、、、さてと、次の肴を探そうかね」
そのまま京水は酒を飲みながら次なる敵を探すのであった。
そんな特務部隊幹部達の戦いを後方から眺める零二と美沙。
敵は最早初撃で瓦解しており、こちらが勝つのも時間の問題に
思えた。
「どうですか零二隊長? 皆本当に強くなったんですよ?」
美沙は誇らしげにそう語り掛けた。
確かに美沙の言う通り、一年前よりもだいぶ強くなっていた。
特に冬夜だ。
まだ成人していない分成長が凄まじい。
恐らくまだまだ伸びるだろう。
次々に敵の攻撃を捌き、反撃に倒していく。
今の冬夜なら零二でも倒すのに十秒くらいはかかるかも
しれないと心の中で思う。
「そうだな。 皆しっかり強くなってる。それに幹部だけじゃな
い。 隊員達も誰もやられてねぇな!
隊長として鼻が高いぜ!」
零二は自分の隊の成長を喜んでいた。
全員ではないが・・・・・・。
零二は先程から気付いていた。
後ろから刺さるような視線を飛ばす男を。
「隊長? 今にも九惨が飛び掛りそうですけど、、、」
美沙も先程から分かっていた。
隣にいる九惨が戦場ではなく、ずっと零二を睨んでいた事を。
しかし、これも今に始まったことでは無い。
九惨を最初から出すと、敵味方問わず被害が拡大する。
初めて戦場に行った時は酷い有様だった。
味方を攻撃してでも敵の方へと突き進む九惨に
味方の被害も拡大したのだ。
だから、まずは味方にある程度倒させて、味方に余裕が
出来てから九惨を出すことにした。
そうすれば零二も常に九惨を監視することが出来る。
零二は戦場をよく観察し、敵の数が最初よりだいぶ減った事に気付いた。
「ふむふむ。 これだけ減ればもういいだろう!
よし、九惨よ! 行ってしまいな・・・・・・さぃ、、、」
九惨の名前を呼んだ頃には既に前の方へと突き進む姿が見えた。
「隊長? いつも格好付けてるけど、最後まで言えてませんよね」
九惨は名前を呼ばれた時には既に戦場へと走り去っていた。
「皆まで言うな・・・・・・」
零二は遠い空をただ眺めるばかり・・・・・・。
九惨の出陣により、戦況は更に大きく傾くのであった。
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