第9話 冒険者ギルドにて
「では、森島様。
まずはご依頼を、何か受けていきますか?
それとも、ギルドが定期的に開催している初心者講習なるものを受けてみますか?」
「初心者講習ですか?」
「はい、冒険者ギルドでは、新人冒険者のための冒険者に関する講習を行っています。
ベテランといわれる冒険者に講師になってもらい、ある程度の知識を教えるものです。
また、その際に、ダンジョンにも潜って体験することもあります」
新人冒険者に、いろいろ教えるための講習会だ。
これは、ぜひとも参加しておいた方がいいだろう。
「分かりました。講習会に参加します」
「では、こちらの紙をお渡しします。
用意するものなど、詳しいことが書かれていますので。
それと、集合は二日後の朝の鐘が鳴り終わるまでです。
間に合わなかった場合は、次回へと繰り越されますのでご注意ください」
「ありがとうございます」
カウンターから離れて、掲示板を見るついでに渡された紙を見る。
そこには、二日後に行われる新人講習会のことが書かれていた。
日時は、受付嬢が言っていた二日後。
集合場所は、南門の外で待つこととある。
南門とは、俺が最初に入ってきた門だ。
つまり、あの門の外で待つことになる。
次に、必要な道具などだ。
汗を拭くタオルなど、最低でも三枚。
替えの服と下着。用意できるなら、もう一式用意する。
火を起こせる道具、もしくは火種。火魔法が使えるなら不要。
二日分の食料。そして二日分の水。生活魔法が使えるなら不要。
ギルドカード。それと、この書類。
以上の物をしまえる鞄。
リュックタイプが理想だが、肩掛けタイプでも問題なし。
結構もっていくものがあるんだな。
これを、二日後の集合場所に行くまでに用意するということか。
……お金のない俺に、用意できるかな?
……考えても始まらない、とりあえず依頼を受けてお金を稼ごう。
「さて、何にするか……」
大きな掲示板をざっと見渡すが、すごい数の依頼書が貼ってある。
さらに、右隣の掲示板にはパーティーメンバーの募集もしていた。
高ランクから低ランクまで、幅広く募集されている。
さてここで、冒険者のランクについて説明しよう。
冒険者のランクは、よくあるアニメは漫画のようにS・A・B・C・D・Fで分かれているわけではない。
ランクは、鉄・銅・銀・金・ミスリル・オリハルコンの金属で分けられている。
現に、ギルドカードの真ん中に縦線が入っているが、それがランクごとの金属に分かれていて自分が今何ランクが示しているのだ。
依頼書にもまた、何ランクの方を募集していると明記されているから、分かりやすいのだ。
俺は現在鉄ランク。
ならば、受けられる依頼も限られてくる。
しかも、今はお昼を過ぎたところだ。今から受けられる依頼で、報酬がいいものはない。
「どうしたものかな……」
俺が悩んでいると、後ろから声を掛けられる。
「あんた、新人の冒険者か?」
「え?」
声の方へ振り向くと、そこには三人の冒険者がいた。
声を掛けてきた、剣士タイプの男。全身鎧のフルプレートを身に纏い、大きな大剣を背中に背負った男だ。
その後ろには、魔法使いのように黒っぽいローブを纏って金属製の杖を持つ女性。
そして最後は、大きな盾を後ろに背負い軽鎧で身を守る小柄の女性だ。
見た目、剣士・魔法使い・盾戦士といったところか?
それとも、盾戦士ではなく僧侶ということもあるか……。
「それで、新人なのかな?」
「あ、はい。さっき登録してきた新人冒険者です」
「そうか、君の職種を教えてくれるか?」
「召喚士ですけど」
「召喚士? ああ、召喚術師か。
シャル、ローゼ、どうかな?」
「ん~、新人にしては老けてない? あんた歳は?」
「二十五ですけど」
「二十五?! 私たちより、年上じゃない!
アステル、私はパス!」
「私も、年上で新人なのは問題があると思います。
それに、この歳まで何をしていたのかも……」
「聞いていいかな? 今までどんな仕事をしていたのか」
何か、雰囲気が良くないな。
それに、二人の女性は変質者を見るような目だ……。
「特に何もしていませんでした」
「……すまない、有望な新人に声をかけていたんだが、間違っていたようだ。
本当に、申し訳ない」
そう言って、三人は俺の目の前から去っていった。
そしてそのまま、冒険者ギルドを出ていく……。
俺は、何だったんだと疑問に思いつつも、再び掲示板の方を見る。
だが、周りからは笑い声が聞こえていた。
それも、大声で笑っているものや、笑い声を抑えるように笑っているものまで。
さらに耳を澄ませれば、俺の陰口を囁いていた。
老け顔召喚術師、無能召喚術師、召喚術師なのかも怪しいとか、二十五の新人? 冗談はよせ、など。
俺が探偵の調査員という仕事で、慣れていなければすぐにギルドを出ていっていたところだ。
今は、手持ちがないのだ。
どうにかして、お金を稼がなければならない。
というわけで、冒険者の定番である薬草採取で凌ぐことにした。
「あの、常時依頼の薬草採取を受けたいんですけど」
「はい、薬草採取ですね?
では、こちらをお持ちください。
そこに載っている薬草を採取してもらいます。
また、採取の方法も書かれてありますので、その方法で採取をお願いします。
採取個数は、十個から受け付けます。
それ以下の場合は、受け付けていないので注意してください。
それと、この依頼には上限がありません。
だからといって、根こそぎ採取することはやめてください。
今後、薬草が育たなくなりますので……」
「分かりました」
俺は、採取方法と薬草の写真がついた紙を渡され、冒険者ギルドを後にする。
▽ ▽ ▽
薬草採取の場所は、南門から出て少し西へ行った森の中とある。
どうやら、群生地があるようだ。
それと、注意書きとしてゴブリンに注意とあった。
門番の人に挨拶をして、町の外へと出る。
身分証代わりの三日間だけの木の身分証は、ギルドカードを作った際に渡し、ギルド経由で返却されるそうだ。
だから、ここでは挨拶だけとなる。
町の外を少し歩き、森の手前で立ち止まる。
そして、装備を確認しホルスターから銃を取り出し準備良し。
薬草の群生地まで続く、獣道を通って森に入っていく。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




