第77話 資金調達
シュベリーの町の冒険者ギルドは、東門から入るとすぐの場所にあった。
どうしてこんな場所に? と不思議に思うが、まず俺たちは冒険者ギルドに寄って登録や依頼を受けたりして資金を得なければならない。
そう思って、俺たちは冒険者ギルドの建物の中へ入っていく。
入り口から中へ入ると、どこにでもある冒険者ギルドの光景だ。
大きな掲示板には、依頼書がたくさん貼り出されていて、受付にはやはり美しい女性が対応をしている。
そして、なぜか併設されている食堂では食事をしたり、お酒を飲んでいる人たちもいる。
「ユウタさん、何か依頼を受けるんですか?」
「いや直人、今日はお金を受け取りに来たんだよ。
ギルドを通してオークションに出していた品物があって、それの売上金を受け取りにね」
「へぇ~」
「ねぇねぇ、何をオークションに出してたんです?」
さくらが、興味津々に聞いてくる。
直人も、興味があるのか俺の方を見ている。
「遺跡で見つけた、古いお金をオークションに出したんだよ。
ギルドで聞いたら、かなり価値があるみたいだったからね~」
「へぇ~」
ギルドの受付嬢に、声をかける。
「すみません、オークションに出品したものですが結果を教えてもらえますか?」
「あなたのお名前と、ギルドカードを提示してください」
「はい」
俺は、自分の冒険者ギルドカードをカウンターの上に置き、名前を名乗った。
「ユウタ モリシマといいます」
「ユウタ様ですね、少々お待ちください」
受付嬢はそういうと、カウンターの後ろの事務仕事をしている職員さんに声をかけて聞いている。
すると、一枚の紙を手渡され、それを確認して驚いている。
もしかして、かなりの金額になったのか?
そして、すぐにカウンターに戻ってくる。
「お待たせしました。
ユウタ様が出品しました、古代魔法国のミスリル金貨三枚ですが、一枚白金貨二枚の値がつきまして全部で白金貨六枚になりました。
……それでお願いなのですが、このお金はギルドに預けるということにしてもらえないでしょうか?」
「ギルドに? 何故ですか?」
「はい、今このギルドには、白金貨六枚をお支払いできるほどお金がありません。
なので、お預けをお願いしたいのです……」
「ん~、ならば白金貨一枚分だけ払えませんか?
後は、ギルドに預けてもいいんですが……」
「それならば、大丈夫です。
ご無理を言って申し訳ございません。
では、今ご用意いたします」
そう言うと、受付嬢はカウンター後ろの事務仕事をしている職員さんに話しかける。
すると、その職員さんが別の職員さんを呼び止め、何か指示を出していた。
その指示を聞いて、職員さんが奥へと入っていった。
「ユウタさん、ユウタさん」
「ん?」
「何ですか、その大金は!
いつの間に、そんなお金持ちになったんですか?」
「ユウタさん、すごいお金持ちだったんだ~」
直人が驚き、さくらが何やら猫なで声を出している。
ここにいないメンバーに、知らせるつもりだな?
まあ、構わないが、必要ない物は買わないぞ?
「お待たせしました。
こちら、白金貨一枚になります。
残りは、ギルドでお預かりということですが、お引き出しする場合は事前にお知らせください」
「分かりました」
「今日は、ありがとうございました」
そうお礼を言われ、俺たちは冒険者ギルドから出ていく。
これから宿を探し、明日からの予定をみんなと話し合わなければならない。
▽ ▽ ▽
「せんぱ~い、何か奢ってください!」
普通の宿に泊まり、部屋から温泉宿の扉を出して、みんなと合流後、さくらが俺の懐事情をみんなにばらすと、さっそく絵美が言い寄ってきた。
普段から、一緒に食事することもあるので気軽にこういうことが言えるみたいだ。
「このお金は、使い道がもう決まっています」
「ええ~、何に使うんですか?」
「明日、奴隷商に行って奴隷を購入する予定です」
「ユウタさん、また奴隷を買うんですか?
いくら異世界だからって、奴隷商に足しげく通うっていうのは……」
直人だけではなく、他のみんなもいい顔しなかった。
だが、これには訳があるのだ。
「まあ、みんながいい顔しないのは分かるんだけどね?
さくらや紗香、他にも奴隷として売られているかもしれないだろ?
そういう日本人を保護するためにも、行かないといけないんだよ」
「な、なるほど……」
「そういえば、私たち、奴隷として売られてたっけ……」
「最近の生活に満足していたから、すっかり忘れてた……」
温泉宿で、寛ぎ過ぎじゃないのか?
でも明日俺は、奴隷商に行くことになるが、みんなには冒険者ギルドに行ってもらう。
「絵美には、冒険者ギルドで登録してもらう。
他にも、奴隷落ちした人達も登録し直すこと」
「じゃあ、私たちもってこと?」
「そうだよ、さくら。
君たちも、冒険者ギルドで登録し直しだ。
まあ、登録情報を書き換えるだけだから、すぐに終わるだろう」
奴隷落ちした後に、冒険者として活動を許されたときは、登録情報を書き換えて活動することができる。
しかも、借金奴隷ならば借金返済を自身の手でできるので、再び冒険者として依頼を受ける人が多いそうだ。
ただ、報酬の三分の一が主人へ、三分の一が返済へ、最後の三分の一が手取りということになるが……。
「それじゃあ明日は、直人、優香、みんなのことを頼むぞ?」
「分かりました」
「はい!」
「先輩は、奴隷商で日本人探しですか?」
「それもあるが、人手不足の扉はまだあるからな。
今、召喚できる扉は全部、使えるようにしておきたいんだよな」
扉召喚は、使えなければ意味がない。
契約精霊だけでは、まわらないから奴隷という情報をもらすことのない人を使うのだ。
各街にある奴隷商には、必ず寄って行かないとな……。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




