第75話 落ちた者たち
次の日、俺たちは神殿を後にすると街道へと進んで行く。
最初に左右に別れる場所で、今度は右の東へ進むつもりだ。
東の町シュベリー。
神殿の貼り紙情報だと、西の町コルバナとそう変わらないとなっていたが、どんな町なのか楽しみだ。
ただ、歩いて町まで行かないといかないのだが、なぜか今歩いて進むのは俺だけだ。
俺一人で、シュベリーを目指している。
「まったく、さくらの奴がとんでもないことに気づきやがった……」
『……私たちも一緒に歩くこと、ないんじゃないかな?』
『どういうこと? さくら』
『いや、コルバナで奴隷を購入してこうして温泉宿で働いているよね?』
『いるね』
『て、ことは、扉の中にいれば私たちも一緒に移動できるってことじゃない?』
『………はっ?!』
『そうだよ! 一緒に移動せずに、私たちは扉の中にいて目的地に到着したとき、扉を召喚してもらえれば……』
『私たちも、一緒に移動したことになる!!』
『さくら、よく気づいた!』
『ということで、先輩。よろしくお願いしま~す』
『『『『お願いしま~す』』』』
何が、お願いしま~すだ!
みんなで移動するのは、盗賊などの対処をするためだろうが!
俺だけでは、良いカモではないか!
そんな風に考えていると、悪いことは起こるもので……。
「はい、金目のものを置いていってもらおうか~」
と、今現在、盗賊に襲われている。
「盗賊か?」
「当たり~、俺たちは盗賊だ。
一人旅か? おっさん、運が悪かったな」
六人の男たちは、俺から少し距離を取って取り囲んでいる。
ナイフに剣に槍、どれもボロイ武器だ。
どこかで盗んだものだろうか?
着ている鎧もボロボロで、ゴブリンが持っていたものに近い感じがする……。
だが、俺の前にいる三人は、どこかで見たことがあるんだが……。
「おい、おっさん!
早く金目のものを出しな! 殺されたいのか?」
「おい、久しぶりの獲物だ。
たっぷりと可愛がってやれよ?」
「「「へい、親分!」」」
三人は、若いのに従順な手下となっている。
可愛がるって、ボコボコにでもするのか?
俺は、肩掛けにしている鞄からお金の入った子袋を取り出し、盗賊の前に投げた。
ここは一応、逆らわないように渡す。
お金で解決するなら、安いものだからな……。
「お?!」
すぐにその子袋を拾い、中を確認する盗賊。
後ろの三人はともかく、前の三人は盗賊としての迫力がないように感じる。
「どうだ?」
「へい、銀貨が五十枚ほど入ってました!」
「結構もっていましたよ」
「よし、んじゃずらかるぞ!」
「へ? こいつ殺さないんで?」
「バカ野郎! こいつを殺したら、騎士団に狙われるだろうが!
こういうヤツは、貴族にコネとかあるから手出ししにくいんだよ」
……どうやら、一人でいることが盗賊を恐れさせていたようだ。
盗賊たちの会話から、一人で旅をしている奴は貴族なんかと繋がっている行商人が多いそうだ。
支配地域の辺境の村なんかに、貴族からの依頼で行商人を派遣しているからすぐに盗賊に襲われると分かるらしい。
そこで、殺されていなければ盗賊討伐とはならずにすむが、殺したりしていると行商人が貴族の頼みを聞いてくれないとかで、街道の安全確保のため騎士団を派遣して掃除するらしい。
「わ、分かりやした。
おいおっさん、命拾いしたな!」
「あばよ!」
そう言うと、盗賊たちは街道から走って逃げていった。
俺のお小遣いにしていた銀貨だったが、役に立ってよかった。
命が助かったわけだし……。
▽ ▽ ▽
「先輩、そこに正座してください」
盗賊に襲われた後も歩いて、西の町シュベリーを目指していたが、一日で到着することもなくガンショップ経由の温泉宿に移動した。
そして、食事の時にみんなに盗賊の顛末を話すと、絵美が、静かに立ち上がり、怒りながら俺に正座を要求する。
俺は、その迫力に逆らえず、その場に正座した。
「先輩、盗賊にお金を渡すとはどういうことですか?!
先輩の持っている銃は、飾りですか?」
「いや、お金で解決できるなら……」
「言い訳しない!!
それに、渡したお金が銀貨五十枚?!
バカですか? バカなのですか!」
バカバカって、そんなに言わなくても……。
絵美の周りにも、さくらや紗香、優香に翔子さんも一緒に俺を白い目で見てくる。
俺に味方はいないのかと、周りを見て直人を発見。
助けを求めると、そっと目をそらされた……。
「先輩! 聞いているんですか?!」
「は、はい、聞いています!」
その後、俺はみんなから盗賊に対する対処の仕方を説教された。
足が痺れて、大変だったが今後移動には、何人か一緒に行くことになった。
全員で一緒にとは、ならないんだな……。
俺は、温泉に入りながら、今日のことを思い出す。
あの盗賊の手下の三人、どこかで見たことあるんだが思い出せない。
どこで会ったかな……。
「どうしたんですか?」
「ん、直人か。
いやな、今日の盗賊の中に、会ったことがある三人がいたような気がしてな、どこで会ったか思い出していたんだ……」
「知りあい、ですか?」
「分からない。だけど、どこかで見たことが……」
どこで見たかな……。
確かに、どこかで見たことあったんだが……。
「ユウタさん、あまり考えこむとのぼせますよ?
いい加減に、出ないと……」
「……そうするか」
考え込んでもしょうがない。
こういう時は、ふとした時に、思い出すものだからな。
風呂から出て、タオルで体を拭き、服を着て脱衣所を出て思い出した!
そうだ! 俺たちが神殿で貼り紙情報を話し合っている時に召喚された、あの粋がっていた三人。
説明書読まずにゲームするとか言っていた、あの三人だ。
あいつら、盗賊に落ちていたのか……。
救出、しないとダメなのか?
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




