第73話 巨大な魔物
一通り準備を終えると、俺たちは気合を入れて丁字路を右へ進んだ。
千佳ちゃんの気配察知によれば、この先にいる魔物は三体。
だが、この三体が怪しいと、俺は睨んでいる。
第四階層の終盤で、魔物が三体しかいないとはどうもおかしい。
絶対何かあると思うのだ……。
そして、通路を先に進んでドームのような部屋に出ると、甲高い声が響いた。
いや、これは超音波か?!
『キーーーー!!』
とっさに全員が、顔を歪め耳を抑える。
そして、辺りを見渡せば、天井にオオコウモリの十倍くらいの大きさのコウモリがそこにいた。
その側には、通常のオオコウモリが二体いる。
「こいつが、三体の正体!」
「ユウタさん! こいつ中ボスじゃないですか?!」
「おそらくそうだろう。
ああ! 五月蠅い!!」
俺は、銃を構えると、天井にいる巨大コウモリに向けて撃ちまくった。
すると、奇声を上げるのをやめた巨大コウモリは、大きな翼を広げて飛び回り始める。
その大きい翼を何度もはためかせると、地面から風が舞い上がり始める。
舞い上がった風は、地面の砂を巻き込みながら舞い上がらせた。
「これって、目くらまし!」
「構うな! 敵は上にいるのは間違いない!
撃って撃って撃ちまくれ!!」
弾の続く限り、撃ちまくる。
すでに、通常のオオコウモリは地面に落ちて魔石に変わっている。
残るは、巨大コウモリだけなのだ。
俺は、サブマシンガンからデザートイーグルに持ち替えて、上空の巨大コウモリに向けて発砲している。
そして、何度目かのマガジンを交換している中、巨大コウモリが地面に落ちた!
漸く、仕留めたようだ。
地面に落ちた巨大コウモリは、光の粒子に変わり、その場に大きな魔石が残る。
その魔石を拾い上げると、俺はアイテムボックスの中へ収納する。
「移動するぞ!
いつまでもここにいると、さっきの巨大コウモリが復活するかもしれない」
「じょ、冗談じゃないわよ。
ユウタさん、早く移動しましょう」
「うんうん」
倒すまで大変だった巨大コウモリが、もし復活してしまったらと考えてしまい、みんな急いでこの場を離れる。
ダンジョンだと、そういうことがあるらしいからな。
ドーム状の部屋を後にして、少し進むと下層への階段が出現した。
が、すぐに下層へ進むわけにはいかない。
「それじゃあ、弾薬などの補充のために扉を出すか」
「ユウタさん、お願いします」
俺は、ガンショップの扉を召喚すると、扉を開けて中へ入る。
俺に続き、みんなも中へ入ってきた。
「いらっしゃい、主」
「ロバート、みんなの銃のメンテナンスと補充をよろしく頼む」
「あいよ。
それじゃあ、このカウンターに銃と空のマガジンを出してくれ」
ロバートにそう言われ、みんな銃と空のマガジンを、カウンターに置いていく。
こうしてみると、サブマシンガンを持つ者が多いな……。
「それじゃあ、少し時間を貰うぞ」
「ああ」
そう言うと、すべての銃とマガジンを箱に入れて、店の奥へと移動した。
俺たちは、その間に温泉宿への扉を召喚し、休息をとることにする。
▽ ▽ ▽
ゆっくり温泉に浸かり、食事も済ませてガンショップに戻ると、カウンターには銃と補充されたマガジンが並べられていて、ロバートが暇そうにしていた。
「おかえり、主」
「すまないな、つい長居をしてしまった……」
「構わないさ。休息はしっかりとらないと、今後の行動に響くからな」
「ロバートさんは、本当に大人ですよね~」
「確かに、人ができているというかなんというか……」
俺とロバートとの会話から、他のみんなが感心する。
ロバートの懐の深い対応に……。
みんなそれぞれ銃を受け取り、マガジンをアイテムボックスに収納すると俺の方を向いた。
「さて、次はいよいよ第五階層だ。
これで一区切りとし、俺たちは町へ向かうことにする」
「え? もっとレベルを上げるんじゃないの?」
もっともな疑問を、翔子さんが言ってくれた。
確かに、このままレベル上げを続けることもできるのだが、俺たちはやるべきことがある。
「レベル上げもいいんだが、俺たちには他にしなければならないことがある」
「しなければならないこと?」
「それは、他の日本人探しだ」
ここにいる全員、レベルはある程度上がっているが、それだけなのだ。
魔力はあるのに、魔法は使えない。
スキルも、ユニークスキルのみ。
「みんなも、ここまで戦ってきて気づいたかもしれないが、銃で戦い続けるには限界がある。
もっと、この世界に合わせたスキルや魔法を覚えて戦うべきだろう。
そのためには、町に行ってスキルや魔法を購入しなければならない!」
神殿の貼り紙情報に、この世界ではスキルや魔法は購入する物なのだ。
スキル屋という所や魔法屋という所で、必要なスキルや魔法をお金を出して覚えるのだとか。
「幸い、今俺はお金を持っているし、今度のオークションでさらにお金が入ってくる。
今のうちに、みんなにスキルや魔法を購入しておきたいのだ」
「つまり、奢ってくれるってことですか?」
「やった~」
「ユウタさん、太っ腹~」
「さすが先輩! 宵越しのお金は持たない主義ですね~」
何かもてはやされているが、金の切れ目が縁の切れ目ということにはならないでほしいな……。
とりあえず、今後の予定を話し終えると俺たちは五階層へ向かう。
「それじゃあ、生きてみんなで町へ行くぞ!
五階層へ、出発~!」
「「「オー!!」」」
こうして俺たちは、第五階層への階段を下りていった。
その先に、何が待ち受けているのかも知らずに……。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




