第72話 第四階層を行く
さくらたちそれぞれが、自分に合った銃を選んだ後、温泉宿で一泊する。
翌日、朝食を食べ終えるとダンジョン探索を再開する。
温泉宿から出て、ガンショップを通ってダンジョンに戻ると、それぞれの装備を確認する。
俺は、新しく手に取ったサブマシンガン。
スペクトラM4のファンタジー仕様を装備した。
そこに、俺と同じサブマシンガンを手にした絵美が近づいてきた。
「先輩、メイドさんたち以外全員が銃を使うみたいですよ」
「銃は、使える時に使ったほうがいいからな。
この先、魔物が強くなればなるほど、今の銃が使えなくなるんだよな……」
「やっぱり、ファンタジー世界では銃って使えない武器なんですかね?」
自分の銃を眺めながら、絵美はふと呟く。
ある意味、ファンタジー世界では銃は固定ダメージ武器に近いからな。
敵の強さに合わせて、銃も変えていかないと使えなくなるみたいだ……。
「でもまあ、対人戦は結構効果があるんだがな……」
「対盗賊用ってことですか?
それとも、人同士の戦争用とか……」
落ち込む絵美の頭に手を置いて、俺は励ます。
そして、ゆっくりと撫でてやった。
「どんな武器でも、使い方次第だ。
絵美が、人同士の戦争に使わなければいいだけの話だろ?
それに、この銃を他人に流す気はないからな」
「先輩……」
絵美の気持ちが持ち直したところで、俺たちはみんなに声を掛けて第四階層へ進んだ。
「前から来るよ! 数は六」
「了解、千佳ちゃん!」
「ベル、ケイ、ソフィ、警戒して!」
「「「はい!」」」
メイドさんたちが、周りを警戒するも魔物の姿が見えない。
もしかして、透明になれる厄介な魔物か?
「……魔物はどこ?」
「! 上だよ、みんな!」
千佳ちゃんがそう叫び、みんな一斉に上を見る。
すると、大きなコウモリが六匹、俺たちの頭上を飛び回っていた。
普通なら、襲ってくる時を狙って戦うのだけど、俺たちの武器は銃だ。
「フッ、飛んで火に入る何とやらね!」
「良い的になるわ!」
そう言いながら、引き金を引き、オオコウモリたちを次々と撃ち抜いていく。
そして、撃ち抜かれたオオコウモリは、次々と地面に落ちてきた。
地面に落ちたオオコウモリは、ダンジョンに吸収され魔石のみが残る。
俺は、その魔石を拾い集めながら直人と話をする。
「この階層に出てくる魔物は、オオコウモリで間違いないな」
「だとすれば、俺たちにとって相性のいい相手ってことになりますね」
「まあ、残りの弾薬と相談だな……」
「さくらたち、かなり無駄弾を撃っていますからね……」
とりあえず、さくらたちに注意しておき、この階層を進んで行く。
この第四階層も、洞窟型のダンジョンで高さがあった。
おそらく、オオコウモリという空を飛ぶ魔物しかいないためだろう。
「ちょっと待って!」
「優香、どうしたの?」
「……この床、落とし穴になっているわ」
「ええ?!」
「紗香、動かないでね?」
「う、うん」
紗香の足元を、膝まづいて確認しながら罠解除を試みる。
優香のユニークスキル、忍術には罠解除の効果もあるようだ。
一分ほどで、罠を解除した優香が立ちあがり笑顔で紗香に言った。
「もう大丈夫だよ。罠は解除できた」
「ありがとう、優香ちゃん!」
優香の話では、紗香がもう少し左側を歩いていたら罠が作動して、落とし穴に落ちていたそうだ。
結構、危なかったんだな……。
「優香、罠の発見と解除をお願いできるか?」
「分かったわ。
先頭を歩いて、対処するから魔物の方はお願いね」
「了解だ。千佳ちゃん、頼むよ」
「はい!」
それぞれで、自分のできることをしながら第四階層を進んで行く。
俺たちは順調に、探索をしていくと丁字路に到達する。
「先輩、どっちの道ですかね?」
「千佳ちゃん、それぞれの先に魔物の反応はあるかな?」
「えっと……、右に三体、左に十四体の反応があるよ」
今までの階層の大きさから考えるなら、もう第四階層は終わりの方だ。
なのに、ここに来て三体は少なすぎる。
「優香、罠の方はどうだ?」
「ん~、左の通路に罠がありそうかな。
右は、何もない感じがする……」
「そうか……」
俺が決めかねている雰囲気を感じて、直人が話しかけてきた。
「ユウタさん、何か気になることでもあるんですか?」
「いや、今までの階層の広さからいって、もうこの階層は終わりだ。
さらに罠が無いというのも気になるが、一番気になるのは魔物の数なんだよ」
「魔物の数?」
「さっき、千佳ちゃんに気配で探ってもらっただろ?
で、右に三体の魔物の気配がすると答えてくれた。
少ないと思わないか?」
そう話すと、俺の意見を聞いていた全員が考え始める。
腕を組み、考えるふりをしている者もいるようだが、ここは無視しよう。
「さすがに、気にしすぎじゃないかしら?」
「まあ、そうかもしれないがどうも気になるんだよな……」
「……もしかして、中ボスがいるかもしれないと考えているんですか?」
「ああ、その可能性があるかもと思ってな」
こういう時、強い魔物が存在している可能性がある。
今まで、オオコウモリは十匹以上で出現していた。
それが、三匹。絶対何かがあると、警戒してしまったのだ。
「でも、進まないわけにはいかないでしょ?」
「ならば、装備を確認しよう。
みんな、弾薬は余裕があるか?
無ければ、ガンショップの扉を出すが」
「「「お願いします!」」」
さくらと紗香、それに直人が手を上げた。
どうやら、残りの弾薬のことを気にしていたらしい。
俺は、一旦ここで休息をするために扉を出した。
銃のメンテナンスや、弾薬の補充のために。
食事と、仮眠をとるために……。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




