第71話 第三階層を行く
「左から五体くる!」
「了解! 翔子さん、囮を!
さくら、紗香、菜月、ひより、そっちの敵は任せたぞ!
絵美、千佳ちゃんと芳江さんを頼む!
直人、優香、俺と一緒にこっちの五体を対処するぞ!」
「了解です!」
「足止めは任せて!」
俺は、それぞれに指示を飛ばして向かってくる五体の魔物と対峙する。
温泉旅館での話し合いで、近藤さん親子も一緒にダンジョンでレベル上げを行うことになった。
そこで、一緒に仲間となったのだが、問題は仲間の多さだ。
それぞれが強くなり始めているので、指示を出すこともないはずなのだが、話し合いの末、どの魔物と戦うかについては指示することになった。
後、呼び方も話し合うことになった。
近藤さん親子を、名前で呼ぶことになると熊野が注文を付ける。
熊野だけ、名前でなく名字呼びなのが気に入らないと。
で、俺が全員を名前で呼ぶことになったのだが……。
「何か変な感じだな……」
「ユウタさん!」
「任せろ!」
直人に呼ばれ、目の前の魔物に集中する。
ショットガンを構えて、向かってくる灰色の狼に照準を合わせ、ギリギリまで近づいてきたところをズドンと撃ち抜いた。
ギャインと悲鳴を上げて撃ち抜かれ、地面に倒れるとそのまま動かなくなる。
ショットガンで撃ち抜くと、一発で仕留められて便利だな。
「次々、行くぞ!」
「はい!」
第三階層の敵は、ダンジョンオオカミだ。
灰色の狼で、そんなに強い魔物ではないが、とにかく素早い。
そのため、直接攻撃が基本となるのだが、俺たちのパーティーは、安全面から遠距離攻撃を推奨しているため、銃での対処が主になる。
だからか、なるべく引きつけて戦うしかなかった。
そこで、戦えるメイドさんたちを前面に出し、翔子さんの作りだしたゴーレムを囮にして、狼たちを足止めして対応することになる。
戦闘が終わり、魔石を集めているとさくらが話しかけてくる。
「ねぇねぇ、ユウタさん。
私たちの銃の威力って、上げることできない?」
「そうそう、この銃だと当たっても倒すことができないんだよねぇ~」
「確かにそうです、先輩!
敵も強くなっているんですから、私たちの武器も強くしてください!」
どうやら、ベレッタM9のファンタジー仕様の威力が弱いようだ。
まあ、銃は成長しないからな。
「それなら、ガンショップに行ってみるか。
ちょうど、ここで三階層も終わりだし、今日はもう終わるぞ」
「は~い」
俺は、下層への階段側の壁に扉を召喚させる。
ガンショップの扉だ。
この扉が、召喚できる扉の中で一番頑丈なので、ダンジョン内で召喚するには便利なのだ。
重厚な扉を開けて中に入ると、店長のロバートが迎えてくる。
「いらっしゃい、主。
今日はもう終わりか?」
「ああ、それと新しい銃を選ばせてくれるか?
ベレッタだと、威力が合わなくなってきてな」
「なら、そこに並べられている銃を手に取って確かめてくれ。
使いやすいものを選ぶのが、基本だぞ」
「分かった」
さくらたちは、棚に並んでいる銃をそれぞれで手に取り、構えては考え、棚に戻して次の銃を手に取っている。
使いやすいもの、構えてしっくりくるものを真剣に選んでいる。
そんな中、芳江さんと千佳ちゃんが近づいてきた。
「ユウタさん、温泉宿の扉を出してもらえますか?
私たちは、先に休みますので……」
「はい、分かりました。
今日は、ゆっくり疲れをとって休んでください」
「ありがとうございます」
「ありがとう~」
ガンショップのカウンター側の邪魔にならない所に、温泉宿への扉を召喚して、近藤さん親子を先に行かせる。
後、店内にいるみんなにも休みたい人は温泉宿に行くように知らせた。
そうしてから、俺も棚に並んでいる銃を見ていく。
俺のレベルが上がり、棚に並んでいる銃も増えている。
選べるものは、確実に増えているようだ……。
「これは、自動小銃だな。
こっちは、サブマシンガンだろ?」
「ああ、そうだ主。
自動小銃が、M16A3のファンタジー仕様だ。
装弾数は、三十発。
サブマシンガンの方は、スペクトラM4のファンタジー仕様。
装弾数は、五十発で、サプレッサー装着仕様もあるぞ?」
「なるほど、これはいいな……」
連射で敵を倒すなら、こういうのもいいかもしれないな。
一撃必殺とはいかないが、乱射で敵を怯ませることもできるし持っていて損はないだろう。
「ところで先輩、ファンタジー仕様って何ですか?」
「ファンタジー仕様ってのは、ファンタジー世界でも使えるという意味だ。
地球から持ってきた銃は、この世界では使えない。
使えないというより、効かないが正しいな。
魔物を含めて生物には、魔力による層が体の外側にできているんだ。
その層が、バリアーの役目をしていてな?
通常兵器が、効きにくくなっている。
もちろん、近接兵器も同じなんだが、近接兵器には装備者によるプラスがあるだろ?」
「それって、力とかですか?」
「そう、そのおかげで攻撃が通るわけだ。
で、銃の弾丸にはそういうのがないから、魔力の層を中和させなければならない。
その中和をするのが、弾丸に魔力を纏わせるということだ。
これをすることによって、弾丸が直接相手に届いて殺傷能力を発揮する。
その魔力を纏わせた弾丸を発射できるのが、このファンタジー仕様された銃というわけだ」
「はぁ~、そんなことになっているんですね~」
絵美が、感心しているようだが、あまりわかってないな?
この表情は、難しい話をした時によく見る表情だ。
「まあ、ファンタジー世界でも使えるようにした銃だと分かっていればいいよ」
「了解です!」
ファンタジー世界に、ロマンを求めて銃を取り入れるのもいいけど、使えるようにするのも大変なんだよな。
この世界にも、確か魔導銃なる物があるようだし……。
銃という概念は、元からあるからこうして受け入れられていると思う。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




