第67話 ダンジョン探索へ
とりあえず、落ち着かせてからこれからのことを話し合った。
すると翔子さんは、すぐにでも妹たちを引き取りたいと言ったが、借金奴隷になっていることを聞くと、その場に座り込んでしまった。
「そんな……」
「だから、今すぐ解放とはいかないんですよ。
妹の菜月自身で借金を返済するまで、解放することができないんです」
「それなら私も、妹の借金返済に協力させてください」
そう力のこもった瞳で、俺を見つめてきた。
この姉、翔子さんは本気で妹と一緒に借金返済をしようとしているようだ。
「分かりました。
では、俺たちと一緒に行きましょう」
「はい! ありがとうございます」
翔子さんと握手を交わし、俺たちのパーティーに加わってもらった。
この後は、俺の扉召喚でまず服屋ホーネスの扉を呼び出し、着替えや普段着、それに靴をそろえた。
その後、銃砲店ガンショップで、護身用のベレッタМ9のファンタジー仕様を人数分そろえ、ついでにホルスターも同じようにそろえた。
また、その際にショットガンを二丁と弾薬を百発ずつ頼んで、俺のアイテムボックスに収納しておく。
「武器や鎧の件を任せろというのは、こういうことだったんですね、先輩」
「俺のユニークスキルだからな。
結構、便利なものだろう?」
「便利ですけど、先輩のレベル次第で品揃えが変わるとか何なんですか?」
「さあ、そういう仕様じゃないのか?」
熊野が、なぜか文句を言っていたがそういうものなのだからと言っておいた。
こればっかりは、俺の意思でどうにかなるわけではない。
そしてこの後、神殿裏にあるダンジョンへ潜ることを教えると、賛成か反対かの意見を聞くことにした。
「私は賛成!」
「私も!」
「さくらと紗香は、賛成か。他のみんなはどうだ?」
真っ先に賛成したのは、さくらと紗香だ。
この二人は、ノリで答えていることがあるが今回はそうでないと思いたい。
「俺も賛成です。
早く、レベルを上げておきたいですし」
「私も賛成よ」
「直人と優香は賛成。熊野はどうだ?」
「先輩、私は賛成です。
この世界では、レベルを上げておかないといけないのは当然ですし、ここの貼り紙にも書かれていました。
レベルが低いのは、罪だと」
「あ、絵美さん、あの貼り紙見たんだ~」
「私も見たよ~」
熊野とさくらに紗香が、貼り紙のことで盛り上がり始めた。
確かに、レベルが低いといろいろなトラブルが起きたとき、対処の数が限られるからな。
そういう意味では、対処の数を増やすためにもレベルはあげておいた方がいい。
とりあえず、今は放置して他のメンバーの意見を聞く。
「菜月たちはどうだ?」
「……私たちは、借金の返済があるんだ。
当然、賛成」
「……そうだね、私も借金返すために賛成」
「危険なことに、首を突っ込もうとしているのは分かります。
でも、妹たちの借金返済をするには、ダンジョンに行かなくてはならないなら私も賛成です」
菜月とひより、そして菜月の姉の翔子さんは、借金返済のために俺たちと一緒に戦う覚悟をしてくれたようだ。
全員賛成ということで、俺たちはダンジョンへ向かった。
神殿を出て、その足で、神殿をぐるりと回りこむ。
すると、神殿の裏手にたどり着いた。
「なるほど、アイテムボックスとは便利なものですね……」
「ね? さっきまでの荷物が収納できるでしょ、お姉ちゃん」
「ええ、教えてくれてありがとう、菜月」
姉に褒められ、菜月は笑顔で喜んでいる。
ああいうところを見ると、年相応の女の子なのだと理解する。
「先輩、何見ているんですか?」
「いや、姉妹っていいな~と思ってな」
「先輩、兄弟いないんですか?」
「いないぞ。俺、一人っ子だし」
「へぇ~」
そんな、雑談をしながら、神殿の裏にあるダンジョンの側まで移動してきた。
神殿裏のダンジョンは、洞窟型のダンジョンのようだ。
入り口が、洞窟そのものである。
「それじゃあ、中へ入るぞ?
先頭は直人と俺、真ん中に熊野と翔子さんを据える。
その両脇に、さくらと紗香、菜月と優香だ。ひよりは殿をお願いする。
いいか?」
「ちょっと待ってください先輩。
優香ちゃんとひよりちゃんを、交代してください」
「ん? 何かあるのか?」
「いえ、何となくです」
「……まあ、分かった。
それじゃあ、優香とひよりの位置を交代する。
これで大丈夫だな?」
俺は全員の顔を見渡すと、文句はないようだ。
ひよりは、菜月の隣ということで少し安心しているようだ。
熊野は、これが分かっていたのか……。
「それじゃあ、出発!」
それぞれで武器を構えて、洞窟の中に入っていく。
ダンジョン内は、最低限の明かりは確保されているとのことだったが、確かに真っ暗というわけでもない。
前入った、氷結のダンジョンとは少し明るさが違うが見えないわけではない。
「さくら、紗香、それと菜月、メイドさんを召喚しておいてくれ。
いろいろと役に立つからな」
「「は~い」」
「分かったわ」
三人がメイドさんを召喚している間に、俺はトイレと断ってダンジョンの端に寄っていったが本当にトイレのために来たのではない。
ここには、メイドさんが倒した盗賊の亡骸を捨てるためだ。
いつまでも、俺のアイテムボックス内に収納しておくわけにもいかないからな。
ダンジョンは、いろいろな物を吸収している。
特に、死体などは跡形もなく吸収するため、ダンジョン内で襲われることがあるとか。
まあ、それもダンジョン都市での話だがな……。
ダンジョンに出していくたびに、盗賊の死体は吸収されていく。
どうやら、こちらの意図が分かってすぐに吸収してくれたみたいだ……。
「さて、これでスッキリした。
ダンジョン探索を、進めていこう」
そう言って、みんなの元に戻った……。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




