第65話 パーティーと召喚
「とりあえず、みんなは神殿内の貼り紙を見て回るように。
自分に関係あるものがかなりあると思うから、よく読むんだぞ?」
「「「は~い」」」
しかし、こっちに来ている人が増えているのは驚いた。
探す日本人が増えたのは、何だかと思って力が抜ける……。
みんなが、それぞれで神殿内の貼り紙を読みに行ったが熊野はいまだに俺の側にいる。
「熊野も、貼り紙をよく読んでおけよ?」
「分かりました!」
そう返事をすると、近くの貼り紙から見ていく。
それを確認して、俺も貼り紙をもう一度読もうと周りを見渡す。
すると、ある者が目にはいった。
神殿の中央にそびえ立つ、オベリスクのような石柱だ。
確かここに、俺たち日本人を召喚している元凶がメッセージを残していたな……。
そう思いだし、近くによって確認する。
「やはり、大賢者ルフとゆかいな仲間たちとあるな。
こいつらのおかげで、大変な目に合っている……いや、こいつらはきっかけに過ぎない。
今の苦労は、自分自身が招いたことなのかも……」
「せ、せんぱーい!
大変です、先輩!」
「どうしたんだ? 何かあったのか?」
「何かあったじゃないですよ!
見てくださいよ! これです、これ!」
熊野が目の前の空中を指さすが、俺には何もないようにしか見えない。
どうやら、ステータスを呼び出したらしいな。
「ステータスか?」
「そうです! ここですよ、ここ!」
「指さしても、他人には見えない仕様になっているんだぞ?
何が大変なのか、口頭で説明せよ」
「私のユニークスキルが、『回復魔法』で職種が聖女になっているんです!」
……熊野が聖女?
「ブフッ!」
「あ! 今笑いましたね?! 私が聖女で、笑いましたよね?!」
「す、すまん。
だが、回復魔法とはかなり貴重なスキルじゃないか?」
「ですよね!
先輩、いつでも回復してあげますから、私を頼ってくださいね」
「ああ、そうだな。
熊野を頼りにしているよ」
「えへへ~」
熊野の頭を撫でてやると、笑顔で撫でさせてくれる。
後輩としては、かわいい奴だ。
だが、回復魔法とはかなり貴重なものだと思う。
このまま成長すれば、もしかすると死者蘇生も可能かもしれないな……。
ただ、狙われる危険もあるんだが……。
「自分に関係のある貼り紙を確認しろよ?
聖女なんて、かなりレアな職種かもしれないぞ?」
「分かりました」
そう返事をして、周りの貼り紙を見始めた。
俺も、何か見落とした貼り紙はないか一つ一つ確認していく。
すると、パーティーに関しての貼り紙を見つけた。
「これは……」
貼り紙の中身は、この世界でのパーティーの組み方のようだ。
ただ一緒にいるだけでは、パーティーを組むことにならないらしい。
これでは、レベル上げに必要な経験値とかを吸収できない。
「熊野、ちょっと来てくれ」
「何ですか? 先輩」
俺は、熊野とパーティーを組んでみることにした。
貼り紙に書かれたやり方は、握手をしてパーティーリーダーになる人が、パーティーを組むと念じると組むことができるらしい。
そこで、まず握手をする。
そして、俺がパーティーを組むと念じると何かが繋がる感じがして、熊野の前に浮かぶ透明な板が見えた。
「熊野、ステータス開きっぱなしなのか?」
「え? 先輩、これ、見えないんじゃ……」
「いや、パーティーを組むと見えるようになるようだな」
「ええ! あ、ホントだ。
ステータス画面に、パーティーメンバーとして先輩の名前がある」
「どうやら、これでパーティーが組めるみたいだな」
「……私たちだけなんですね」
そう言うと、なぜか熊野は喜んでいた。
喜ぶのはいいが、この後、他のみんなとも組むんだが……。
俺は、直人たちを呼んで、パーティーを組んでいく。
貼り紙によれば、メンバー上限というものはないようなので何人でも組めるようだ。
ただし、人数が増える分、分配経験値などが減ることにはなる。
「これ、便利ですね。
ステータス画面から、みんなの生存が分かりますし……」
「名前の所を押せば、詳細も分かるみたいだな」
「……あ、ホントだ」
「あ~、絵美さん、聖女なんだ~。いいな~」
「フフ~ン、回復は任せてよ」
「とりあえずこれで、ダンジョンで戦わなくてもレベルが上がるね~」
「だね!」
「お前ら……」
さくらと紗香が、おかしなことを言っている。
まあ、お前たちは戦わなくても側に仕えているメイドさんが戦ってくれるのだろう。
パーティーに関する貼り紙前で、みんなで集まって話していると神殿奥が光った。
そして、男の声が神殿に響く。
「ついにキターーーーっ!!」
「アツシ! うるせぇ!」
「テンション上がるの分かるけど、周りの迷惑考えろよ」
「こんなところに、人なんかいるかよって、いた!」
「何?!」
「ホントだ、いたよ!」
神殿奥から現れたのは、いかにもヤンキーという男三人だ。
派手な服装で、俺たちをジロジロと見ている。
「おいおい、もしかしてハーレムってやつか?」
「いやいや、男が他にもいるじゃねぇか。
ハーレムってやつじゃねぇって」
「あ~、すみません。うるさくて。
ところで、ここは異世界で間違いないっスか?」
「ああ、異世界で間違いないよ」
男三人の中で、一番真面そうな奴が話しかけてきたので俺が応対する。
連中の見る目が、かなり嫌らしい感じだ。
「おお、マジで異世界なのか!」
「ここって、魔法が使えるんですよね?」
「ああ、使えるぞ。
ただ、ゲームと違うところがあるから、ここに貼ってある貼り紙を見たほうがいいぞ」
そう忠告すると、男たち三人は周りをキョロキョロと確認する。
そして、表情を歪めた。
「あ~俺、説明書読まないタイプなんだよね」
「俺も俺も。説明書読まなくても、ある程度できるしな~」
「ところでお兄さんたちは、ここに来たばかりなんスか?」
「いや、ある程度この世界で過ごしてきたけど?」
「おお~」
「それじゃあ、その女の子たちはお兄さんが?」
「……ああ、奴隷商なら町にあるぞ。
かなりかかるが、ちゃんと購入することもできる」
「はは、話が早いや。
情報、ありがとございます~」
そう言って、神殿を出ていった。
神殿内の貼り紙を見ることもなく出ていったということは、どこに町があるのかとか自分がどんな能力を持っているのかも知らないまま……。
あいつら、大丈夫か?
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




