第56話 護身用に
朝食を食べ終えて、一階の食堂から部屋に戻るとさくらと紗香が五月蠅かった。
「旅館の食事を思い出してしまうと、この宿の朝食はね~」
「硬いパンにシチューだものね。
おまけに飲み物は、ミルクか水しかないんだもの。
この世界の食事事情は、改善できないのかな?」
「そうね、よく漫画とかアニメだと、異世界の食事とかで無双しているものがあるわよね」
「知ってる~。
ここの料理人も、もっと勉強しろって言いたいわ」
「「アハハハ」」
こいつら、何を言っているんだ?
とりあえず、まずはガンショップの扉を召喚して中へと入る。
「何、この扉!」
「すっごい頑丈にできてる……」
「とりあえず、入るぞ」
「「は~い」」
コンコンと叩いて、扉の頑丈さを確かめるさくらと材質を確認するように触る紗香を促して、三人で店の中へ入った。
「いらっしゃい、主。
それと、二人のお客さん」
「うわ、すごいイケメンな声!」
「イケメンボイスってやつね」
「騒がしくてすまない、ロバート」
カウンターに立っているロバートに謝るが、気にするなという感じだ。
俺はすぐにカウンターに行き、所持している銃をアイテムボックスから取り出してカウンターの上に置いた。
「まずは、メンテナンスと弾薬の補充を頼む」
「あいよ」
そう言って、カウンターの上に出した銃を一つ一つ丁寧に、奥へと持っていく。
さらに、空のマガジンもカウンターの上に出すと、同じように持っていった。
「ねえ、ユウタさん。
もしかして、私たちにも銃を使わせようとしている?」
「もしかしても、使わせようとしている。
というより、護身用に一丁持つようにしてもらうつもりだ」
「私たち、銃なんて扱えないと思うけど?」
うんうんと、紗耶香の意見にさくらが同意している。
確か、二人が使っていたのは弓だった。
ならば、銃もいけると思うのだが……。
「とりあえず、これを持ってみてくれ」
「これ?」
俺は、予備でアイテムボックスに収納してあった、ベレッタM9のファンタジー仕様のマガジンと装填したあった弾を抜いてカウンターに置く。
それを見て、まず、さくらが銃を持ってみる。
「うわ、重い……」
「扱えそう? さくらちゃん」
「う~ん、少しなら大丈夫かな。
でも、この重さがネックになるかも……」
「次、私ね。
……重さはそうでもないよ?
うん、私は大丈夫みたい。扱える」
「紗香って、力あるのね~」
さくらは、もう少しレベルを上げれば扱えるようになりそうだ。
紗香は、今でも扱えるみたいだから持たせておいてもいいかも。
俺のレベルがもっと上がれば、ここの品ぞろえも良くなるし、その中からならばいいのが見つかるかもしれないな。
この先、俺の仲間も増えるかもしれないしな……。
「待たせたな、主。
銃のメンテナンスとマガジンへの弾の補充が終わったぜ」
「ありがとう、ロバート。
ついでに、この二人用にベレッタM9のファンタジー仕様を頼む。
それと、ホルスターも用意してくれ」
「了解、少し待ってな。
それとついでに、マガジンも用意しておくぜ、主」
「おお、ありがとう」
店の奥へ行き、さくらと紗香用の銃を持ってくるとカウンターの上に置く。
それと、ホルスターに予備のマガジンを十個ずつ持ってきた。
「あれ? ユウタさんのと、形は同じだけど色が違うね」
「あ、ホントだ。黒じゃなくて薄い茶色?」
「ロバート、これって材質が違うのか?」
「当たりだぜ、主。
こいつは、主と同じベレッタでも材質を変えて軽量化してあるんだ。
だから、この二人でも扱いやすいはずだ」
「わ~、ありがとう、ロバートさん」
「本当に、軽い! ありがとう、ロバートさん!」
「何、ガンショップの店長として当然のことをしたまでよ」
すごい照れてる、こんなロバート初めて見た!
それにしても、材質を変えて軽量化か。
そういうこともできるんだな……。
とりあえず、カウンターに並ぶ俺の銃をアイテムボックスに収納して、マガジンなども同じように収納する。
「さくらと紗香は、ホルスターを装着して銃をホルスターに仕舞え。
予備のマガジンはアイテムボックスに収納できるだろ?」
「分かったわ」
「うん」
ホルスターの付け方を教えた後、銃の仕舞い方も教える。
そして、二人はアイテムボックスにマガジンを収納した。
「それじゃあ、ロバート。
また、寄らせてもらうよ」
「ああ、待ってるぜ。
それと主、うちのガンショップにも従業員をよろしくな」
「ここは、男手が欲しいってところか?」
「男女にこだわる気はないぞ?
どこもやることは多いんだ、人手はあった方がいいに決まっているさ」
「了解、考えておくよ」
こうして、俺たちはガンショップの扉を出る。
そして、俺たちが出ると扉が閉まり、床の魔法陣に吸い込まれた後、魔法陣が消えた。
「へへ、似合っているわよさくら」
「紗香ちゃんだって、似合っているよ~」
「はいはい、とりあえず二人のは護身用だからな。
メイン武器になる弓を見に行くぞ。
それと、鎧も見たほうがいいいか?」
「軽くて、動きやすい鎧ってないかな?」
「防具屋に行けば、分かるんじゃないか?」
「それなら、出かけましょうよ」
「そうだな」
俺たちは部屋を出ると鍵を掛けて、一階へ降りていく。
そして、一階のカウンターで鍵を預けて、宿の外へ出た。
それじゃあ、まずは武器屋へ行ってみるか……。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




