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人探しの調査で異世界に行きました  作者: 光晴さん


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第55話 奴隷の事情

投稿が遅れました。



Side シェーラ


私の村は、北の寒い地方にあった。

でも、今はもう無い。

別に魔物に襲われたからとかではなく、開拓がうまくいかなかっただけ。


寒い地方なので、作物が育たなかったのだ。


そのため、村長は領主さまへの税が払えず村は接収され、村人はバラバラになった。

その時、私たち姉妹は奴隷商に売られたのだ。

でも、売られたのは私たち姉妹だけではない。

村人のほとんどが、今まで払ってなかった税を回収するために、領主さまによって売られたのだ。


『恨むなら、村長を恨め』


奴隷商の人が言っていた言葉だ。

それから転々と奴隷商を渡り歩き、今の場所にたどり着いた。

私が今まで売られずに奴隷商を転々としていたのは、条件を付けたからだろう。

妹と一緒に、という条件を。


奴隷といえど、この国ではある程度人権が認められている。

それで、条件を付けることができたのだ。



コルバナの奴隷商に来てから少したった頃、今のご主人様と出会った。

出会ったといっても、奴隷商に来たところを見たといったほうがいいか。

最初は、お金を持っているとは思えませんでした。

それに、ご主人様の姿から苦労しそうな雰囲気が感じられて、みんな敬遠しているようでした。


中には、露骨に部屋の端によって拒否している者たちもいます。

私は、誰でもいいから妹たちと一緒に購入してくれればいいかなと考えていましたので、その時のご主人様を見てもなんとも思いませんでしたね。


今思い返せば、それが大正解でしたが……。


その後、この奴隷商で七人の奴隷を購入されました。

それも、全員女性ばかりです。

もしかして、そういうことで購入されたのかと思いましたが、妹たちもいるのです。

それは無いと思いたいです。


ご主人様に変われ、宿に着くとすぐに私たちの運命は変わり始めました。

扉を召喚されたかと思えば、その扉の中には素晴らしい世界が広がっていました。


温泉なるお風呂、豪華な食事に服がたくさんあるお店、いろいろな物をくれて、みんなでこの温泉宿なる場所で働くことになりました。


従業員用の宿舎に案内してくれた方に、わがままを言ってみんなで一緒にというと大部屋を用意してくれました。

仕事を覚えるのは明日からということで、今日からはここで寝るようにとのこと。


女将のカナデ様が、ご主人様の元に戻られてから私たちは話し合いました。


「お姉ちゃん、明日から楽しみだね?」

「そうね、どんなことをするのかな?」

「掃除とか荷物運びが主だって、ここに来るまでに言っていたわね」

「私、力ないから自信ないな~」

「大丈夫だよ、トトもリムもすぐに力がつくよ」

「そうだね。

それより、あのお風呂、すごいね!」

「大きかった!」


みんなの話題は、明日からの仕事からお風呂に移っていく。

確か、露天風呂って言ってたかな。

あの二人のように、シャンプーやリンスを使えば、私たちの髪が艶々だ。

それに、ボディソープだったか?

それを付けて身体を洗えば、ものすごくきれいになった。


「お姉ちゃんの髪、きれいだね~」

「ステラの髪も、リディアの髪もきれいだよ~」

「わーい」

「こんなにきれいになって、私たちはご主人様のお相手をするのでしょうか?」

「ど、どうなのかな……」


奴隷商にいたときに、勉強させられた夜のお相手のこと。

私たちはまだ経験が無いけど、ご主人様になる人は必ずするのだとか?

こんなに待遇がいいと、奴隷と主人の関係では心もとなく感じる。


夜のお相手をさせてもらって、繋がりが欲しくなるのかも……。




▽   ▽    ▽




次の日、宿のベッドで目が覚めると、体のあちこちが痛い。

どうやら、ベッドが合わなかったようだ。


そして、周りを見渡せば、昨日寝ていたはずのベッドの下に、さくらと紗香が寝ている。

どうやら、ベッドから落ちてそのまま寝ていたらしい。


俺は、さくらと紗香を起こさないように起きると、自宅の扉を召喚して中に入った。


「おかえりなさいませ、主様」

「ただいま、アニス」


挨拶を交わした後、俺はそのままトイレに入っていく。

やはり、どうにもこちらの世界のトイレには、なれないようだ。


スッキリした後、朝食をどうするか聞かれたので、今日はいらないと答えた。

少し残念がっているようだったが、異世界の食事も経験しておきたかったのでここはあえてスルーする。


次に寝室に入り、服や下着を着替えると宿の部屋に戻っていった。


「行ってらっしゃいませ、主様」

「行ってきます、アニス」


そして扉を抜けると、そこにはサクラと紗香が立って待っていた。


「遅いよ、ユウタさん」

「その扉、どこに通じているの?」

「これは、俺の家の扉だよ。

だから、この先は俺の日本での家に繋がっているんだ」

「もしかして、この扉から日本へ帰れるの?!」

「いや、この扉からは帰れない」

「……どういうこと?」


さくらが難しい表情で聞いてくるので、召喚する扉の正体について答えた。

俺の召喚する扉が、すべて複製であること。

そのため、中の構造も複製であることも教える。


すると、複雑な表情で何とか納得したようだ。


「もしかして、扉の向こうってすべて複製品なの?」

「すべてじゃないんだが、概ねそうなるかな」

「そう……。

あ、そうだ。ユウタさんがいない間に、宿の人が呼びに来たわよ。

朝食をどうぞって」


さくらと紗香は、その声で起きたらしい。

昨日は、宿に泊まってすぐに寝たことになっていて夕食も食べていないことになっている。

朝食は、軽めでお願いしたいが……。


「それじゃあ、さくらと紗香が着替えたら、下に降りて朝食を食べるか」

「それなら、ユウタさんは外に出てください」

「私たちの着替えを、見ないように!」

「分かった」


そういえば、一緒に部屋に寝ていたんだったな。

俺はすぐに廊下に出ると、壁を背にして二人を待つ。


この階は、大部屋が多いから人がいないらしい。

誰も、他の扉から出てくる気配がない。


そうだ、シェーラたちのことはどう誤魔化したらいいかな?

住み込みの働き場所に行かせたと、説明しておくか。

概ね、間違いってはいないしな……。








読んでくれてありがとう。

これからも頑張ります。

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