第54話 二人のレベルと今後
「どうして、もっと早く教えてくれなかったんですか!」
「いや、何を怒っているのか分からないんだが……」
「それは、怒るでしょ?
もっと早く言ってくれれば、あんなに服とか選ばなかったのに~」
「選びすぎて、アイテムボックスの容量をかなり取ってしまったんだよ……」
「知らんがな」
思わずツッコんでしまったが、彼女たちのアイテムボックスって容量制限があるんだな。
もしかしたら、俺のアイテムボックスも容量制限があるのかもしれないな。
まあ、今のところ限界は感じないんだが……。
「そういえば、さくらと紗香のレベルって今いくつだ?」
「え、私たちの?」
「いくつだったかな? 今、確認する……」
そう言うと、ステータスと唱えて自分のレベルを確認している。
俺のレベルは、前確認して三十ちょいだったな。
「私は、レベル六だったわ」
「私も同じで、レベル六よ」
「……そんなものなのか?」
「そうよ、悪い?」
「ユウタさんは、レベルいくつなの?」
「俺は今、レベル三十五だ」
「はぁ?!」
「レベル三十五って、どうやったらそんなに上がるのよ!」
「ちょっと前に、ダンジョンに行くパーティーのポーターとして参加したことがあったんだ。
その時に、俺も一緒に戦ってレベルが上がったって感じか……」
「戦ったって……」
「ポーターって、荷物持ちでしょ?
何で、戦う必要があるのよ……」
「まあ、成り行きって感じかな」
必要に駆られて、戦っただけだからな……。
でも、ダンジョンで戦えばかなりレベルが上がるようだからさくらと紗香を連れて行くことは決定だな。
問題は、二人の装備か。
そういえば、二人はどんな戦闘スタイルなんだ?
「なあ、さくらと紗香は、どんな戦闘スタイルなんだ?」
「戦闘スタイル?
それって、どう戦うかってこと?」
「そうそう、魔物とかと戦ったことはあるんだろう?」
「あるけど、あの時はみんなと一緒だったからな~」
「そういえば、あの戦いだけだったね、みんなと一緒に戦ったのは」
「あの後、別れちゃったんだよね~」
「やりたいことが違うとか言って別れたけど、みんなどうしているかなあ~」
「それで、さくらと紗香の武器は何を使うんだ?」
「あの時は、弓を使っていたわね」
「私も同じく、弓だったよ」
「なら、銃が使えるか」
俺がそう言うと、二人は驚いた表情をする。
これは、もしかして、銃がこの世界の魔物に効かないことを知っているって表情だな。
「ユウタさん、知らないの?」
「この世界の魔物に、銃は効果がないんだよ?」
「普通の銃ならな。
日本から持ってきた銃は効果ないが、スキルで召喚した銃は効果があるんだよ」
「え、そうなの?!」
「それは知らなかった……」
確か、最初の神殿の壁に銃についての貼り紙があったはずだ。
日本から持参した銃が、この世界の魔物に効果がなく死ぬ思いをしたとか。
仲間が助けてくれてよかったが、ソロだと死んでいただろうとか書かれていたな……。
「まあ、後で武器を選んでみるか」
「お待たせしました、主様」
そこへ、カナデが案内から帰ってきた。
だが、カナデ一人で帰ってきたのだ。
シェーラたちは、どうしたんだろうか?
「カナデ、シェーラたちは?」
「宿舎の、自分たちの部屋を整理しています。
私はそれぞれに個室を用意したのですが、シェーラたちが、みんなで一緒の部屋にいたいと言ったので大部屋に案内して遅れました」
「それじゃあ、今は大部屋に?」
「はい、明日からのことを話しておいたので、今日はもう寝るはずです。
主様たちも、お休みになりますか?」
「ユウタさん、私たち旅館に泊まるの?」
「いや、俺たちはここには泊まらないぞ」
「ええ~」
「何で~」
「お泊りにならないのですか?」
泊ってもいいが、誰かが宿にいないと不審がるだろう?
それに、俺たちは明日、買い物に出かけないといけない。
「ああ、宿の部屋に誰も泊まらないと宿の人に不審がられるだろ?
俺一人で泊まるならごまかしはきくが、大勢で泊まることになったからな。
だから、俺たちが泊まらないとな……」
「それなら、ユウタさんだけでいいんじゃないですか?」
「そうね、私たちは旅館の方に泊まるということで……」
そう言って、カナデの方を見るがカナデは指でバツを作っていた。
「主様が泊らないのに、主様の奴隷だけ泊まらせるわけにはまいりません」
「そんな~」
「せっかくの温泉旅館なのに~」
「ほら、早く旅館を出るぞ~」
俺は、さくらと紗香を促して、温泉旅館の扉から出ることにした。
二人には、後で武器になる銃も選んでもらわないとな……。
旅館の玄関まで移動すると、カナデが一礼して挨拶する。
「またのご利用をお待ちしております、主様」
「ああ、また奴隷を購入したらここにくるよ。
その時は、よろしくな」
「はい、お待ちしております」
笑顔のカナデと別れて、俺たちは宿の部屋に戻ってきた。
さくらと紗香が、足取り重くゆっくり扉から出てくると、温泉旅館の扉が床の魔法陣に吸い込まれるように消え、魔法陣も消える。
「ああ~」
「残念……」
俺は、二人の嘆きを聞きながら宿の部屋の窓から外を見る。
外はすでに暗く、どうやら夜中のようだ。
外の明かりはほとんどなく、人の気配もなかった。
また、宿の部屋の扉を開けると、廊下も暗かった。
どうやら、他の宿泊客も寝静まっているようだ。
「さて、俺たちも寝るか」
「その前に、明日は、何をするんですか?」
「明日は買い物だな。
さくらと紗香の装備に、追加の奴隷購入を考えている」
「まだ、奴隷を購入するんですか?」
「俺の扉の中には、人手がいるものが多いんだよ。
だからこそ、秘密の守れる奴隷がいいというわけだ」
「へぇ~」
そう言いながら、さくらと紗香は部屋の端にあるベッドにもぐりこんだ。
俺は、その反対側の端にあるベッドに入る。
手を出さないという意思表示だな。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




