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人探しの調査で異世界に行きました  作者: 光晴さん


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第45話 新しい扉の確認



リーダーが、部屋を去ってからもう一度ドアに鍵を掛ける。

今度は、新しく召喚できるようになった扉を確認するためだ。


「さて、まずは医療院ホスピルか。

たぶん病院だと思うが、どんな精霊が契約しているのかな……。

【医療院ホスピルの扉 召喚】」


そう唱えると、床に魔法陣が表れ、白い扉が出現した。

白い扉には、曇りガラスがはめ込まれていて、中の様子を見ることはできない。


「これが病院の扉か?

病院というよりも、診療所の扉って感じだ。

それに自動ドアじゃなくて、手で押すタイプの扉だな」


俺は、扉を押して中に入った。

医療院ホスピルの中は、小さな待合室に受付があり、その奥に部屋がいくつもある。

たぶん医者と対面で問診する場所だな。

そこの扉が開き、一人の男性が出てきた。


背格好は俺と同じぐらい、年齢も同じぐらいかな……。


「ようこそ、医療院ホスピルへ、主殿。

私が、医院長の契約精霊ホーリーだ。

これからよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくホーリー」

「早速、主の健康状態とか見てやりたいのはやまやまなんだが、看護師がいなくてね。

医療院が回っていないんだよ。

主殿、まずは人手の確保をお願いできるかな?」

「……了解。何とかしてみるよ」

「すまないな、看護師が一人でもいれば、いろいろとできることもあるんだがな……」


ここも、人手不足か。

これからも、召喚できる扉は増えていくが、どの扉でも人手不足が起こっているんじゃないのか?

となれば、どうすればいいのかな……。


「ここは、病院という認識でいいのかな?」

「ああ、その認識で間違っていないぞ主殿。

どんな症状か診察して、その病気にあった治療ができる場所だ。

また、手術もできるから、人手さえあれば結構出来ることは多いな」

「へぇ~。

ところで、ポーションなども扱っていたりするのかな?」

「主殿の言いたいのは、治癒魔法とか錬金魔法薬は使えないのか? だろ?

もちろん、使うこともできる。

さらに、再生医療も今後することができるかもしれない」

「再生医療? 無くした腕とか足を生やすみたいな?」

「そうだよ、主殿。

人手と主殿のレベル次第では、何でもできるようになるぞ」

「すごいな! マジで」

「まあ当分は、この医療院は心身ともにケアをする場所と思っていてくれ。

心に傷を負った患者も見れるから、とにかく一人でもいいから連れて来てくれ」

「わ、分かった、分かったから」


切実に頼んでくるホーリー、顔が近いぞ!

でも、心のケアとか治療は、魔法とかにはないものだな。

もしかしたら、結構、需要があるのかもしれないな。


人手を何とかすることを約束させられ、扉から出てきた。

すると、医療院ホスピルの扉は魔法陣に飲み込まれて、床の魔法陣も消えた。



「つ、次は温泉旅館みなし屋か。

ここも、人手不足を言われそうだな……。

【温泉旅館みなし屋の扉 召喚】」


魔法陣から現れたのは、木でできた引き戸の扉だ。

この扉にも、大きなガラスがはめ込まれていて、そこに白い文字で旅館みなし屋と書かれていた。

俺は早速、扉を引いて開けると中へ入った。


旅館みなし屋の玄関は、大きくたくさんのスリッパが並べられている。

さらに観葉植物が置かれていて、癒しがあった。

そこへ着物を着た女性が、しずしずと現れた。


「ようこそおいでくださいました、主様。

温泉旅館みなし屋の女将を務めます、契約精霊のカナデと申します。

以後、お見知りおきを」

「あ、ああ、こちらこそよろしく頼むよ。カナデ」


三つ指ついて、頭を下げる女将のカナデ。

どこか懐かしい、昭和の温泉旅館って感じだ。

だが、旅館の中は奥に行くほど暗い感じがする。


「あ~、聞いてもいいかな?」

「分かっております、主様。言おうとされていることは……。

しかし、この旅館も人手不足のため、私一人では回りません。

他でも言われたと思いますが、どうか、どうかお願いいたします。

人手を、人手を集めてくださいませ、主様」


うん、やっぱりだった。

女将一人で、温泉旅館は無理がありすぎるよな……。

そりゃあ、旅館内が暗くて当たり前だ。


「分かっている。

何とか、人手が確保できるようにしているつもりだから、ね?」

「ありがとうございます、主様。

この温泉宿に人手が集まったおりには、この私の身体をどうぞ好きになさってください……」

「そ、それは、遠慮しておくよ……」

「私の身体では、ご満足いただけませんか?

それでしたら、キレイどころを用意させて……」

「……女将、分かっていて言っているだろ?」

「あら、バレましたか」


契約精霊と関係を持つことはタブーとされている。

特に肉体関係は、もってのほかだ。

あくまでも、契約精霊との関係は平等だ。

だから、特別な関係を作ってはいけない。

もし特別な関係になれば、契約精霊は契約解除となり別の精霊と契約することとなる。


女将が、自分の身体を差し出すようなことを言ったとき、俺の頭の中に警告が流れたから断れたんだよな……。

こいつ、もしかして自分からこの契約に納得していないのか?

だから、契約解除になるようなことをしているとか……。


「とにかく、人手の件は考えておくから。

少し待っていてくれ……」

「分かりましたわ。

どうぞ、よろしくお願いします、主様」


そう言って、頭を下げる。

所作は、旅館の女将そのものなのに、どこか違うように思えてきた。

こういう精霊もいるんだな、気をつけよう。


旅館の扉を出ると、魔法陣に旅館の扉が消えた後、魔法陣自体も消えた。


「しかし、少し考えさせられたな。

契約精霊の中には、望んで契約した精霊だけじゃないってことなのだと。

中には、契約を破棄したい精霊もいるらしい……」


なんだが、望んで入社したのに思っていたのと違うからやめる社会人の姿とダブるな。

俺も、探偵事務所で働く前はいろいろと仕事を転々としたな~。

結局、今の仕事が一番長く続いているだけなんだが……。


まあ、俺のことはいいや。

次、次の扉だ……。







読んでくれてありがとう。

これからも頑張ります。

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