第44話 ダンジョン探索 帰還
「リーダー、それって……」
「いや、階層を戻ろうと思ったら、鍵を使えば戻れると声が聞こえたんだ。
で、鍵と言ったらこれしかないだろ?
取り出して鍵を見たら、こう使うんだって何故か理解できていた……」
「じゃあ、その虹色のドアを潜ればダンジョン入り口ってことなのか?」
「どうやら、そうらしい」
そして、リーダーは鍵を外して、ドアノブを回して開けるとその向こうに見えた景色は、ダンジョン入り口にある研究所の建物だった。
どうやら、本当にダンジョンの入り口に戻れるらしい。
「わ、忘れ物はないか?
何もないなら、戻ろうか……」
「だな……」
リーダーとジョーさんだけが会話をして、みんなドアを潜って行く。
俺たちポーターの四人も、ドアを潜って行った。
「本当に帰ってきたな」
「ああ、今でも信じられない。
こんな魔道具が存在するなんてな……」
ブルーさんとレブラントさんが、驚いた表情のまま会話していた。
聖剣の集いのメンバーでさえ、こんな魔道具の存在は知らなかったのか。
ミスリルランクの人でも知らないとなると、かなりレアな魔道具なんだな……。
「あら? お帰りなさい、みなさん。
いつの間に帰ってこられたんですか?」
「ああ、レイラさん。
フロイドさんはいるかな? 話があるんだが」
「所長ならこちらです。
それにしても、みなさんかなり汚れていますね……」
「話があるのは、俺だけだ。
他のみんなは、宿で休んでもらうつもりだよ」
「そうでしたか。では、こちらへ」
「そういうことだから、ジョー。
みんなを、宿で休ませてやってくれ」
「分かった」
リーダーとレイラさんが、研究所の建物に向かった所で、ジョーさんが俺たちを宿へ案内した。
宿の場所ぐらい覚えているが、みんなを休ませたいからなんだろうな……。
宿について、それぞれの部屋に移動して今日は休むことにした。
俺は、自分の部屋でステータスを確認する。
「前確認したときは、レベル二十二だったが今はいくつだろう?
ダンジョンに潜って戦ったからな、かなり上がっているかも……って、三十五?!」
レベル三十五とは、すごく上がったな。
やっぱり、並のダンジョンではなかったってことか……。
ドラゴンゴーレムが、出現するだけのことはあるな。
そして、レベルが三十を超えたことで、召喚できる扉がまた増えた。
「え~と、医療院ホスピルの扉。
これって、病院ってことかな? ファンタジー世界に病院とは珍しい。
次が、温泉旅館みなし屋の扉。
……これ、ホテルビリーブと同じ感じだな。
人手不足で、宿が回ってないから使えないってパターンだな。
最後が、ベーカリーくにしだの扉。
ベーカリーってパン屋だな。
……もしかして、飲食店の扉もこの先出てくるのか?
何だか、趣味に走り出した気がするんだが……」
とりあえず、一つ一つ確認していかないといけないな。
と、その前に俺はガンショップの扉を召喚して、銃のメンテナンスと弾の補充をしていた。
「そうだ、主。
召喚できる扉が、順調に増えているようだが、その他のスキルは確認しているのかい?」
「その他のスキル?
……この扉固定とか、同時召喚とかいうスキルか?」
「そうそう、今は使い道がないかもだけど、使い方は常に考えていた方がいいぞ?」
ロバートの言うことも分かる。
スキルは、どこで使うことになるか分からないからな。
レベルが十、上がるごとに増えていく扉。
それを複数同時に召喚できれば、一つの町が出来上がるかもしれない。
そんなことを考えながら、ガンショップの扉を出ると宿の部屋に扉が叩かれる。
―――――ドンドンドンッ!
『ユウタ、いるか?! 起きているか?!』
「は、はい! 起きてます!」
『おお、起きたか?
すぐに鍵を開けてくれ、話がある』
「は、はい」
すぐに部屋のドアに近づき、鍵を開けてドアを開けた。
すると、リーダーと研究所の研究員と思われる人が一緒に入ってきた。
「あ、あの、何かありましたか?」
「すまない、寝ているところを起こしてしまって。
実は先ほど、ポーターのエリカの所へ行って聞いたのだが、例の宝箱から出てきた石板は君が持っているそうだな」
「え~と、はい。
俺のアイテムボックスに入っていますけど……」
「すぐに出してもらえるか?」
「ああ、はい。分かりました」
そう言って、俺はアイテムボックスから二枚の石板を取り出した。
一枚は、リーダーたちが転移した後の十二階層で、氷ガイコツや氷ゾンビと戦って手に入れた物と、神殿のボスを倒して手に入れた石板の二つだ。
「フムフム、こっちの石板は何かの物語か?
所々、分からない文字があるな……」
「こっちはどうだ?
十三階層の、氷の神殿で手に入れた物だが……」
「例の英雄がボスだったとかいう話か?
どれどれ……」
リーダーから渡された石板を手に取り、じっくりと眺める研究員。
そして、何かに驚き目を見開いた!
「こ、これは!
すごい発見だ!!
すぐに、みんなに所長に知らせないと!!!」
そう叫んで、石板を持って走って部屋を出ていった。
「あ、おい!
す、すまない。何やら、大発見があったようだな……」
「追いかけなくていいんですか?」
「……まあ、大丈夫だろう。
それより、ジョーから聞いたぞ。
氷ガイコツや氷ゾンビとの戦いの様子を」
「いや、あの時はレイモンドさんが守ってくれましたから……」
「それでも、一撃のもとに氷ガイコツを倒してしまうとはな。
ポーターよりも、探索者として今度は参加してほしいな」
「か、考えておきます……」
俺は、募集されたポーターとしてここにいる。
つまり、臨時のバイトみたいなものだ。
ダンジョンから出たら、それで終わりなのだ。
だからこそ、今度はと、リーダーは言ったのだろう。
この後、聖剣の集いと俺たちポーターは町へといったん戻る。
そして、改めて聖剣の集いはポーターを募集して、ダンジョン探索を続けるらしい。
そこに、俺が参加するかは分からないが……。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




