第43話 ダンジョン探索 試練
頭と両腕のない像を調べていると、小さな文字で何か書かれていた。
ちょうど、像の足元だ。
「リーダーさん、ここに何か書かれていますよ」
「リーダーさんはやめてくれ。
リーダーか、ガーロンドと呼んでくれ。
それより、何か書かれているって?」
「はい、ガーロンドさん。
ここです、ここに小さな文字で」
俺が指さして、説明するとリーダーは、のぞき込むようにして文字を発見した。
「確かに、文字が書かれている。
え~と、キャ、ル、ダ、イ、ン。キャルダインと書かれているな」
「てことは、この像はキャルダインということか」
レイモンドさんが、像を見ながらキャルダインだと言ったとたん、像が光りはじめた。
そして、神殿の入り口付近に翼を持った一人の男が姿を現した。
『我が神殿によく来た!
さあ、その方たちの力を示せ!!』
そう叫ぶと、構えた両手に大剣が出現する。
それと同時に、風の刃が俺たちに向かって飛んできた!
「うわっ!」
「キャッ!!」
「エリカ!」
「あぶねぇ!」
すぐにアーバンが、結界の魔道具を起動させエリカとクーデリアを結界内に入れる。
また、俺だけ結界の外かよ!
聖剣の集いのメンバーは、すぐに戦闘態勢を取り武器や盾を構えて風の刃をしのぐ。
だが、俺は無防備なため、太ももに風の刃が当たってしまった!
「クッ!」
「ユウタ!」
エリカの叫びと同時に、俺はその場に倒れるが、すぐにアイテムボックスからポーションを取り出し飲んだ。
すると、太ももの切り傷はすぐに治ったため、敵と俺の間に結界を挟むように隠れた。
「アーバン、ユウタを結界内に入れられないの?」
「前にも言ったが、一度結界を解くとしばらく使えなくなるって……」
「連続使用、できないんですね」
「す、すまねぇ」
とりあえず、俺にできることはないと聖剣の集いの戦いに注視する。
リーダーのガーロンドが、最初に切込み、その後をジョーさんたちが続く。
レイモンドさんは、敵の攻撃から魔術師であるナナカさんたちを守るため、どっしりと盾を構えて動かない。
ナナカさんたちは、支援魔法を駆使しリーダーたちの底上げをした。
さらに回復魔法などで、傷を癒していけば負けはないだろう。
『ほう、なかなかやるな!
だが、これはどうかな!?』
「まずい! レイモンド!」
「任せろ!」
翼を持つ敵が、大剣を両手で掲げると大剣が光輝き範囲攻撃になった。
アーバンの結界が、俺への光を遮断する。
「グッ!」
「あ、熱い……」
「ね、熱線か……」
その時、ナナカさんが呪文を唱えた!
「【氷壁】!」
すると、氷の壁が聖剣の集いと翼を持つ敵との間に出現し、熱線の範囲攻撃を防いだ。
だが、それも一瞬のことですぐに氷は解け蒸発する。
「ならば! 【永久氷壁】!」
再び氷の壁が出現し、今度は熱線を防ぎきった。
だが、ナナカさんは魔力を使いすぎたせいで、息も絶え絶えだ。
「ナナカ!」
「私は大丈夫よ。ちょっと、魔力を使いすぎただけ」
『なかなかやるではないか』
そう声を掛けてきた敵は、魔法で氷の壁を崩した。
氷の壁が、音をたてて崩れていく。
「リーダー、反撃だ!」
「よし!」
ジョーさんの合図で、聖剣の集いの反撃が開始された。
敵の魔法に気をつけ、両腕に狙いを定め、攻撃していく。
そして、ついに、敵の両腕を切り落とした。
『ガアッ!!』
「たたみかけろ!!」
「うおおおおっ!!」
いつもは盾を構えて、防御に回るレイモンドさんも攻撃に加わる。
そして、ついに、ジョーさんの剣が翼を持つ男の首を切り落とした!
『其方たちの力、しかと見た!』
切り落とされた首が喋ると、光が辺りを包み込む。
そして、光が収まると何事もなかったかのような神殿の内部だった。
聖剣の集いは、戦闘態勢を取っていたが、すぐに武器を収めると辺りを見渡した。
俺たちも、結界を解くと辺りを見渡す。
先ほどまで、翼を持つ男と戦っていたとは思えないほど神殿の中は静かだ。
そして、何の傷跡もなかった。
何がどうなっているのか、混乱しているとゴゴゴと地響きが像から聞こえる。
全員が振り向き、像を見ると横へ動いていた。
「う、動いた!」
「え? どうなってんの……」
横へスライドしていた像が止まると、今まで像があった床から宝箱がせりあがってきた。
金色の宝箱だ。
「た、宝箱?」
「……もしかして、あれは試練だったのか?」
「と、とりあえず、サレン。
宝箱を調べてくれ、罠があれば解除も頼む」
「了解」
サレンさんが宝箱に近づき、周りを確認して鍵を確認した。
そして、鍵を普通に開ける。
どうやら、罠の類はなかったようだ。
「罠はないわね。
どうぞ、リーダー。もう開けれるわよ」
「よし、開けるぞ」
ゆっくり宝箱の蓋を開けていく。
少し重そうな蓋が開くと、リーダーが宝箱の中を覗き込んだ。
そして、中身を確認後、手を入れて中にある物を取り出す。
リーダーが掴んで取り出した物は、石板だ。
そして、石板を側にいた仲間に渡し、再び手を中に入れて掴んで取り出したのは、虹色に輝くカギだった。
「鍵と、石板か」
「石板はともかく、その鍵はどこの鍵だ?」
「虹色に輝くカギとは、珍しいわね……」
「どこの鍵か、さっぱり分からないな……」
「リーダー、いったん戻って、調べてもらった方がいいんじゃないか?」
リーダーは、周りにいる仲間を見渡した。
先ほどの戦いで、疲れのためか顔色の悪いものが何人かいる。
さらに、転移罠の影響で持ってきたポーション類も心もとない。
それに、この先の神殿が今回と同じなら、ボスクラスの敵と連戦することになる。
そう考えて、リーダーは一旦地上に戻ることを決意した。
「よし、いったん戻る……ん?」
「どうした? リーダー」
リーダーは、虹色の鍵を持って歩きだした。
そして、神殿の外へ出ると、何もない空間に虹色の鍵を差し込んだ。
「……え?」
「何!?」
みんなが驚く中、リーダーは鍵を回す。
すると、何もない空間に虹色のドアが出現した……。
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これからも頑張ります。




