第42話 ダンジョン探索 神殿
「だああぁっ!!」
氷ガイコツたちの後ろから、人の叫びが聞こえたかと思ったら、次々と氷ガイコツが倒されていく。
そして、氷ガイコツをすべて倒して現れたのは…。
「リーダー!」
「迷惑かけて、すまん!」
「他のみんなは?」
「もうすぐ来る!
今は、ここを乗り切るぞ!」
「「「おお!」」」
ジョーさんを含め、聖剣の集いのメンバーの表情が晴れた。
やはり、リーダーがいるのといないのとでは、聖剣の集いの勢いが違うな!
今まで苦戦気味だったのに、一気に盛り返しすべての敵を倒してしまった。
「みんな、すまない。
宝物庫に、あんな転移罠が仕掛けられていたなんて気づかなかった」
「リーダーのせいじゃない!
斥候の俺が、気づかないといけなかったんだ……」
「まあまあ、失敗は次に繋げなければいいんだ。
反省するところは反省して、次に起きないようにするにはどうしたらいいか考えよう」
「だな、サレンの言う通りだ。
失敗は繰り返さない。そうだな、リーダー?」
「ああ、ブルーもそれでいいな?」
「ああ、次は失敗しない。
斥候として、油断なく探索をする」
「よし、休憩したら、先に進もう。
ここまで、急いで来たから探索を行っていなかったんだ……」
聖剣の集いのメンバーが、次々と合流する中、エリカとアーバンの姿を発見した。
向こうもこちらを見つけたようで、近づいてくる。
「エリカ、大丈夫でしたか?」
「クーデリア、大丈夫よ。
転移させられたけど、聖剣の集いのリーダーをはじめ主力が一緒だったからね」
「よかった~……」
「ユウタも、かなり活躍したそうじゃない?
戦力として、ずいぶん助けられたって話していたわ」
「レイモンドさんのおかげだよ。
あの人の盾が、俺を守ってくれていたからできたことだよ」
「だよな~。そうじゃなきゃ、ポーターが活躍するわけないよな~」
「アーバン!」
「……何だよ、だってそうだろ?
こいつはポーターなんだぜ?
俺たちポーターは、戦いに来ているんじゃないんだ」
「ま、まあ、緊急事態だったってことで、しょうがないよ」
「ユウタ……」
「ユウタさん……」
「ケッ!」
アーバンの態度が、かなり悪いな。
転移後に、もしかしたらエリカに声をかけてフラれたのかもな……。
聖剣の集いと俺たちポーターは、少し休憩を取った後、さらに下の階層へ向かうため出発した。
全員がそろった後の戦闘は、俺の出番はなく、苦戦せずに下層への階段を発見する。
「次は、十三階層だがどんな場所なんだ?」
「十三階層は、フィールド階層だ。
ただ、神殿があちこちに建っていてな、何やらありそうだったぞ」
「神殿に入ってないのか?」
「ああ、合流を急いだからな。
上への階段を探して、フィールドを走り回っていた」
「そうか……」
「まあこれから行くんだ。
神殿の謎や遺跡に関しては、みんなで確認していこう」
「……ああ、そうだな」
その後、全員で十三階層へ足を踏み入れると、リーダーの説明通り雪原のフィールド階層だった。
そして、あちこちに神殿が建っている。
それも、一つや二つではなく見えるだけでも十はあった。
「エリカ、あの神殿には何が祀られているんだろうな?」
「そうね……。
このダンジョンの傾向を考えるなら、古代の英雄ってところかしら?」
「英雄、ですか?」
「そうよ、クーデリア。
このダンジョンにある遺跡はね、古代の英雄たちが活躍した時代の物が多く発見されているらしいの。
一階層とにあった壁画を覚えている?」
「ええ、覚えているわ」
そういえば、何が描かれていたのか分からなかったけど壁画があったな。
それも、かなりの量の壁画が……。
「これは私の推測だけど、浅い階層にあった壁画の数だけ神殿があるのかもしれないわね」
「……つまり、それだけ英雄の数もあるってこと?」
「たぶんね。
そして、遺物の存在もあるってことだけど……。
あ、聖剣の集いが移動し始めたわ。私たちも行きましょう」
「はい、エリカ」
「了解」
「……」
アーバンは、何も言わず俺たちの後をついてきた。
エリカをあきらめて、クーデリアに声を掛ける気なのかな?
それとも、エリカを力ずくで?
何があるか分からないから、一応注意しておこう。
聖剣の集いと俺たちは、最初の場所から一番近い神殿に近づいた。
すると、神殿の様子がよく分かった。
「これは、氷でできた神殿か……」
「ということは、他の神殿も氷でできているってことかもしれないな」
「リーダー、神殿の中に入るのか?」
「ああ、一つ一つ調べないとな。
これも依頼の条件の一つだ、行くぞ!」
そう言って、神殿に入っていく。
氷でできた神殿なのに、地面はやはり土で作られていた。
神殿の床も、滑らないように工夫されているみたいだし……。
「おい、あれ!」
「何の像だろうな……」
「頭と腕が両方ない像とは、何だかかわいそうだな」
「でも天使のような羽があるということは、天使族の像なのかな?」
「天使族で有名な英雄っていたか?」
「俺は二人知っているぞ。
一人は、ローセン。
もう一人は、キャルダインだ。
二人とも、歴史の書物によく登場しているから有名のはずだよ」
天使族の英雄か。
どの種族にも、英雄はいるみたいだが、異世界人の中にも英雄はいたのかな?
「あ~、俺二人が何をやって英雄になったか知らないんだ。
教えてくれないか?」
「ブルー、お前って本とか読まないだろ。
読んだ方がいいぞ? 勉強になるから」
「いいか? 天使族のローセンは、戦争の英雄だ。
といっても、敵を何人も倒してなったわけじゃない。
戦争に巻き込まれた人々を、種族関係なく救ってきたから英雄になったんだ」
「じゃあ、キャルダインは?」
「キャルダインは、自分の命と引き換えに聖域を作った英雄だ。
ほら、ブセンクル地方にある精霊の森の聖域がそれだよ。
当時、精霊狩りが盛んだったころに精霊たちを守るために作ったそうだぞ」
へぇ~、自己犠牲で精霊たちを守った英雄か~。
どちらも、何かを守って英雄になったってことか。
で、この像はどっちなんだ?
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




