第35話 ダンジョンへ
盗賊の死体を次々と並べていく。
その間、受付嬢が連れてきた四人の男たちは死体を見て、いろいろと話し合っていた。
受付嬢は、その話を聞いて、何かメモを取っている。
そして、盗賊の死体十五体が並べ終わった。
「以上が、討伐した盗賊です。
ほとんど、キャニーさんたちが倒していましたが……」
「この、最後の死体の傷は何の傷だ?」
俺はそれを聞かれ、腰のホルスターから銃を取り出し説明した。
「この銃の、弾痕です。
この銃で攻撃して、俺が討伐しました」
そう説明して、銃を腰のホルスターへ戻した。
終始、四人の男たちは、俺の見せた銃をじっと見ていた。
たぶん、珍しいものなのだろうな。
「なるほど、了解した。
確認したところ、賞金がかけられていた盗賊は三人だな」
「ああ、裏切り者の冒険者ゴルバン。義賊の弓使いブレンゲル、そして、こいつ」
そう言って、最後の男を弱く蹴った。
「卑怯者のペレドロだ。
こいつは、人質を取ったり後ろから攻撃したりと、卑怯な手ばかりを使ってくる。
だが、盗賊としたらそんな卑怯な手もありなんだろうがな……」
「他の盗賊も賞金はないにしても、報奨金は出そう。
キャニーたちと山分けになるが、構わないか?」
「は、はい、俺は構いませんが……」
俺は、報奨金などの受け取りはキャニーさんたちの意見を聞いてからがいいのではないかと目で訴えてみる。
すると、それを察したのが受付嬢だった。
「あの、配分はキャニー様たちの意見も聞いて決めたほうがよろしいかと思います」
「ん、そうだな。
キャニーたちがほとんど討伐したんだ。
彼女たちの意見を聞いてからでも、遅くはないだろう」
「君も、それで敵わないか?」
「はい、お願いします」
よかった、さすが受付嬢。
察しがいいのは、いつも冒険者たちを相手にしているからだろうか?
「この死体は、こちらで処分しておく。
ご苦労だったな」
「はい、ありがとうございました」
俺は一礼して、四人の男たちを見送った。
そして、受付嬢に声を掛ける。
「あの、先ほどの四人はどなたですか?」
「ああ、紹介していませんでしたね。
先ほどの四人は、見分部署のギルド職員です。
それぞれ、かなりの上にいる人たちですが、暇そうにしていたので連れてきました」
「は、はあ」
少しトゲのある言い方だが、重鎮ってことなのだろう。
まあ確かに、偉くなると暇そうに見える人たちもいるよな……。
「あの、それで俺はどうすれば……」
「そういえば、荷運びの報酬をお渡ししていませんでしたね。
カウンターまで案内します」
「よろしくお願いします」
受付嬢に案内され、カウンターに戻るとすぐに報酬の話になった。
「ではこちらが、荷運びの報酬、銀貨十枚です。
盗賊討伐の報奨は、キャニーさんたちに聞いてからということでしたので、保留となります」
そう言って、カウンターに銀貨十枚の入った子袋を置かれる。
俺はそれを受け取り、アイテムボックス内へ仕舞った。
「依頼、お疲れさまでした」
「ありがとうございました」
そう言って別れて、俺は冒険者ギルドを出ようとした時、掲示板にふと目がいった。
そして、そこのダンジョン探索の仲間募集に注目した。
募集しているのは、ポーターという荷運びの人だ。
パーティーが用意した荷物を運び、ダンジョンに一週間近く潜れる人を募集していた。
俺は、ダンジョンに潜ってレベルを上げたかったし、これは渡りに船というやつだろうか?
ここは、即断即決だとばかりに掲示板から剥がし、受付嬢の元へ持っていった。
「あの、これ、今も募集しているんですか?」
「えっと……、はい、まだ募集していますね。
最後の一枠ですが、応募されますか?」
「はい、お願いします」
「では、ギルドカードを出してください」
そう言われて、俺はアイテムボックスからギルドカードを出し、カウンターの上に置いた。
受付嬢は、そのカードを受け取ると何やら作業をする。
そして、一枚の紙を取り出して、カウンターに俺のギルドカードと一緒に置いた。
「では、こちらに書かれている場所に、明日集合してください。
時間厳守でお願いしますね」
「分かりました」
俺は、その紙を受け取りギルドの端にあるベンチに座って読み込んだ。
内容は、パーティーの紹介と募集に応じてくれたポーターたちへの感謝の言葉。
今回のダンジョン探索は、パーティーにとって未知の階層へ行くことになるので、もしもの時の注意などが書かれている。
さらに、ポーターの運ぶ荷物の詳細も書かれていたし、ポーター側が用意する物も書かれていた。
後は報酬のこととか、ポーターの人数も書かれている。
そして最後に、集合場所と時間が書かれていて終わっていた。
「……つまり、自分が用意する物は忘れずにということかな?
後、受付嬢が時間厳守とか言っていたな」
遅れずに、集合場所に行こう。
集合場所は、北門の外で午前八時までに、か。
それと、俺がもっていくものは、食糧と水、後は毛布などの防寒着か。
どうやら、寒いフィールドがあるのかもしれないな。
野営のためのテントなどは使わない予定だが、安全地帯を見つけたら使うかもしれないので、一応持ってくるようにと。
後は、初心者セットの中身と同じか……。
おっと、一応自身の身を守るために武器防具は用意することとある。
防具はないが、冒険着は用意しておく必要があるな。
俺は、ベンチから立ち上がるとギルドを出ていき、いつもの宿屋へ直行した。
そこで、扉召喚をして、明日の準備をしておくつもりだ。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




