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人探しの調査で異世界に行きました  作者: 光晴さん


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第31話 盗賊現る



荷運びの依頼をしてきたのは、ローレン商会。

主に、町と町、町と村の間の運搬を生業としている小さな商会だ。

そこで、いつもの荷運びの運搬人が病気になり、急遽募集したらしい。


今回の荷も、運び先の村にとっては大事なものがたくさんあるそうだ。

それに、アイテムボックス持ちか無限鞄持ちに限定したのは、貴重品があるからだとか。


依頼書に書かれた内容を読みながら、待ち合わせ場所の紹介の前まで来た。

すると、商会前の男が声を掛けてくる。


「すまない、ギルドで依頼を受けてくれた冒険者だろうか?」

「はい、そうです。ユウタと言います。

よろしくお願いします」

「……ああ、よろしく。

条件を付けて依頼を出していたが、大丈夫だろうか?」

「はい、俺、アイテムボックス持ちなので」

「おお、では早速こちらへ」


挨拶と握手を交わし、男は商会の裏手に俺を案内した。

するとそこには、一台の馬車と三人の武装した女性たち、そして、商人の男が一人いた。


「カルビン、その男がそうなのか?」

「ああ、こちらのユウタさんがギルドで依頼を受けてくれた人だ。

……そういえば、名乗ってなかったな。

俺はカルビンだ。今俺に話しかけたのが、同じ商人のロビン。

それと、あちらの三人の女性は、商会と契約を結んでいる冒険者の護衛だ」

「護衛のリーダー、キャニーだ。

向こうにいるのが、右からレナン、ローニーの二人だ」

「荷運びの依頼を受けた、ユウタです。

よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそよろしくな」


リーダーのキャニーさんと握手を交わし、挨拶を済ませた。

すると、馬車の後ろからカルビンさんに呼ばれる。


「ユウタさん、こっちです。

ここにある荷物すべてですが、大丈夫ですか?

出来れば、全部ユウタさんのアイテムボックスに入るといいんですが……」


そこには、馬車三台分の荷物があった。

食糧から生活雑貨、衣類や貴重品の箱まで。

さらに、移動中の食糧や水の入った樽までも用意されている。


しかし、俺のアイテムボックスなら大丈夫。

俺はすぐに荷物をすべてアイテムボックスに仕舞うと、カルビンさんに驚かれた。


「すごい! 私どもの契約している荷運びの人も、すべてアイテムボックスには入らないのに……」

「え、入らないんですか?」

「ええ、いつもは少し馬車に乗せて運びます。

優先順位はありますが、全部アイテムボックスに入るなんて、すごいものをお持ちだ」

「カルビン、驚いてないで出発だ。

早く行かないと、村に着くのが遅くなってしまうぞ」

「おっと、そうでした。

ではユウタさん、馬車に乗ってください。

みなさん、出発しましょう!」


そう言われ、馬車に乗りこむとキャニーさんの指示で前の方に乗ることに。


「ユウタは前に座ってくれ。

後方は、あたしたちが座って護衛をするからな」

「はい、分かりました」


御者の席に、カルビンさんとロビンさんが座り、その後ろの荷台に俺が。

そして荷台の後方に、キャニーさんたち護衛の三人が座るとすぐに馬車が動き出し出発となった。


どうやら、本当に急いでいたみたいだ。



町の南門を潜り、街道に出ると真っ直ぐ目的地の村へ向けて走り出した。

馬車移動だと、結構のんびり移動って感じがしていたが実際は違った。

常に、早歩きって速度で移動する。


「早いんですね~」

「ユウタさんは、馬車での移動は初めてなんですか?」

「はい、初めてです」

「なら、驚いて当然でしょう。

でも、この速度で移動するのは、盗賊対策なんですよ」

「盗賊ですか?

魔物ではなく?」

「街道沿いは、魔物よりも盗賊の方が遭遇することが多いんです。

そして、護衛も魔物退治より盗賊退治のためですね」

「へぇ~」

「でもこの国は、まだ治安がいい方なんですよ。

三つほど南の国なんか、内戦続きで大変らしいですよ」

「波及しそうなんだよな、周りの国に」

「ええ、そうなってくるとこの国もどうなるか……」


何だか、大変なことになっているな……。

ファンタジー世界から、急に戦国時代の世界だ。

俺としては、そんな戦争に巻き込まれたくはないな。


「波及って、戦争になりそうなんですか?

この国が……」

「いえ、戦争ではなく逃げてきた人たちのことです。

戦争が始まった国に住んでいた人々は、必ず逃げ出します。

その時、周りの国々に逃げた人々が生きていくために、盗賊や泥棒などの犯罪に手を染めるんです。

それで、治安が悪化して大変になるって話ですよ」

「ああ、なるほど……」


戦争に巻き込まれるってことじゃなかったのか。

でも、難民問題か。

どこの世界でも、大変そうだな……。



それから一時間ほど、馬車で走って休憩を入れる。

街道の脇に馬車を止めて、馬を休めるんだそうだ。


まあ、当然だよな。

馬も生き物、疲れることもあるしお腹が空くこともあるってわけだ。

馬が休憩しながら、下の草を食べている様子を見てそう思った。


「ユウタさん、水の入った樽を一つ、出してもらえますか?」

「あ、はい、分かりました」


カルビンさんにそう言われ、馬車の荷台に水の入った樽を一つ出した。

みんな、出した樽から水を汲み、ごくごくと飲んでいる。

使っているコップは、マイカップか。


俺は、今回初参加ということで、用意してもらったコップだ。

水をくみ、一気に飲む。

喉が潤う感じがする。

どうやら俺も、いつの間にか喉がカラカラだったらしい。


十五分ほど休憩を終えると、再び出発する。

水樽を仕舞い、馬車に乗りこむと走り出した。


こうして、一時間ほど走っては十分ほど休みを繰り返しながら進むのだとか。

馬車の旅は、大変だな……。



「キャニー、前方に人だ」

「了解、注意してくれ」


キャニーさんたちが、周りを気にし始める。

何やら、御者席のロビンさんが街道沿いにいる人を発見したらしい。

俺も、御者席の後ろから見たが、よくあんな遠くにいる人が分かるものだ。


「ユウタさん、街道沿いにいる人は注意が必要なんですよ。

ほとんどの場合が、盗賊ですから……」

「そうなんですか」


カルビンさんたち一緒に、前方を注意していると左から矢が飛んできて、馬車に刺さる。


「うわっ!」

「! まずい!」

「カルビン! 荷台へ!」


手綱を握るロビンさんは、カルビンさんを荷台へ急いで移動させる。

そして、馬が何かに驚き、嘶いて止まってしまった。


「まずい!」

「みんな、降りて戦闘態勢!」

「「はい!」」


三人の護衛が荷台から降りて、馬車の周りを固める。

すると、街道の右側の林から、わらわらと人が出てきた。


「と、盗賊ですよ、ユウタさん……」

「あれが盗賊。初めて見ました……」


現れた連中は、冒険者のような恰好をしていた。

そして、獲物である剣や槍、弓に杖を持っている。

どうやら、魔法を使うやつもいるんだな……。







読んでくれてありがとう。

これからも頑張ります。

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