第24話 揉め事
第六階層に入った。
懸念された、第六階層への階段前にいたオークは、どうやらあの追いかけてきていたオークで全部だったようだ。
すべて倒せてよかった……。
この第六階層も洞窟のような階層で、出てくる魔物もオークだ。
それを、俺たちのパーティーとクロードのパーティーで相手をしながら進んで行く。
二つのパーティーの戦力は、かなりのもので、オークが出現しても軽くあしらえるほどだ。
また、二つのパーティーの交流も、概ねうまくいっている。
ただ、クロードだけは交流を拒んでいるようだ。
俺やカールが話しかけても、返事はあるもののクロードから何か言ってくることはなかった。
そんな関係でも、俺たちは階層を進みついに第七階層へ入った。
「ほあ~~」
「すごいわね……」
第七階層は、フィールド階層だった。
今までは、狭いとはいえなかったが洞窟のような場所だったので、まるで解放されたような感覚だ。
草原が広がるフィールドで、敵が見やすい。
今も、こちらに向かってくる六体のオークが丸見えだ。
「オークが来たわ! カールは前へ、ユウタは援護よろしく!
支援は私とローラに任せて!」
「了解」
「おう」
「はい」
「こっちも行くぞ! マリアは俺と一緒に前へ、今日は後方のオークを!
サヤは俺とマリアに支援を!」
「分かりました」
「了解」
「は、はい」
俺は銃を構え、向かってくるオークの足を狙って撃ち始める。
パンパンと乾いた音が響き、弾はオークの膝に命中した。
次々とその場に倒れていくオークに、カールたち剣士が止めを刺していく。
安全な戦い方だが、戦闘終了後、クロードが俺に意見を言ってきた。
「なあ、オークの足を狙うの何とかならないか?」
「ん? 何か悪かったか?」
「これじゃあ、オークと戦っているような感じがしないんだよ。
倒れたオークに、止めを刺しているだけなんて……」
「ん~、それなら数を絞るか?
何体か無傷でやり過ごすか、腕を狙うとか……」
「そうしてくれるか?
どうしても、戦った感が欲しくてな……」
「分かった、次からはそうしてみるよ」
「頼む」
どうやらクロードは、簡単に勝てる状況に不満があったようだ。
もっと自分の手で、戦って倒したいようだな……。
戦った感か……。
「カールは、クロードの意見は分かるか?」
「俺も剣士だからな、一応わかる。
分かるが、パーティーのメンバーに寄るかな……」
「パーティーのメンバー?」
「俺たちのパーティーは、剣士に召喚術師、白魔術師二人のパーティーだ。
このメンバーで、オークとまともに戦えば全滅するかもしれない。
だから、ユウタの射撃は結構助かっている」
「そうか」
「でも、クロードのパーティーは剣士二人に、黒魔術師と赤魔術師だ。
火力があるなら、まともに戦っても十分渡りあるだろう。
そうやって今まで戦ってきたのに、二つのパーティーが合流して回復薬と剣士が増えたから足りない所が補充されて、戦いやすくなったんだ。
それで、正面から戦わないのは、どこか納得いかないんだろうな……」
「簡単に勝てて、何が悪いのよ。
死ぬよりましでしょうに。私には、まったく分からないわ」
俺とカールの会話を、側で聞いていたフローレルが怒っていた。
俺たちは宥めながら、次は腕や頭を狙うようにしていくことにした。
草原を進んでいると、左の方の丘からオークがこちらに向かってくるのが見えた。
数は、七体。
前と同じような戦闘態勢を取り、オークたちとの戦闘が開始される。
俺は今回は、クロードの意見を取り入れ腕や頭を狙うようにした。
パンパンと発砲音が響き、弾はオークが武器を持っている腕に当たったり、頭に命中したりしているがどちらも致命傷になっていない。
やはりこの、ベレッタM9タイプのファンタジー仕様では火力が足りなくなってきている。
店に並んでいた、散弾銃でももってくるべきだったな……。
そんな後悔を今してもしょうがない。
とにかく、撃って撃って撃ちまくる。
前方では、クロードやマリア、そしてカールが剣を振り戦っている。
と、そこへ後方にいたオークが爆発した。
どうやら、黒魔術師のキョウが魔術を使ったようだ。
かなりの威力が出て、剣で戦っていたクロードたちにも影響があったようだ。
「キョウ! 威力がありすぎだ! もっと抑えろ!」
「抑えたら、オークに効かないじゃない!」
「もっと、周りのことを考えろって言ってんだ!」
「それならそうと、最初から言いなさよ!」
「クソ!」
パーティー内がうまくいってないのか?
その後、オーク七体は倒すことができた。
だが、この戦い方は全然ダメだったようで、クロードとキョウの間で言い争いが始まった。
「あんな近い位置で、強力な魔術を使うんじゃねぇ!」
「私は言われたとおり、オークの後方に向けて撃ったわよ!
文句を言われる筋合いはないわ」
「味方がいたんだぞ!
前線で戦っている、俺たち剣士にまで影響があるような魔術を使うなって言ってんだ!」
「威力を抑えたら、効かないから使ったんじゃない!
あれ以上抑えたら、何のための魔術か分からなくなるわ!」
「だったら、俺たちに影響のない場所で使え!」
「詠唱に時間がかかるのよ!」
「ぐぬぬ……」
「ム~……」
二人の言い争いを、俺たちや他のパーティーメンバーが距離を取って見ている。
その中でも、フローレルが特にいらだっていた。
これ、解決策って黒魔術を撃つ前に声を掛けるしかないんじゃないのか?
今から撃つよーって。
……でもそれって、敵にも知られるってことなんだよな。
あ、魔物は大丈夫……か?
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




