第22話 宝箱の罠
第四階層に進むが、いまだ洞窟型のダンジョンのままだ。
ただ、敵が大きく様変わりした。
ガイコツが出現したのだ。
全身骨の人が、武器も持たずに胸の所と骸骨の目を赤く光らせながらこちらにゆっくりと向かってくる。
速度は遅いが、数が多い。
「カール、数が多すぎる!
まとめて引きつけて、フローレルやローラの白魔術に任せた方がいい!」
「分かった、ユウタ!」
俺とカールが後ろを振り向くと、すでにフローレルとローラは詠唱に入っていた。
それを見て、俺とカールは頷き骸骨たちを引き付ける!
『こっちだ! かかってこい骨野郎ども!』
挑発するカールにどんどん群がるガイコツだが、すべてがカールに群がるわけじゃない。
骸骨たちの中から、カール以外を狙う骸骨が出始めると、俺がその骸骨を始末する。
パンパンと乾いた発砲音が響き、骸骨はバラバラになって崩れていく。
そして、再生することもない。
何故なら、俺が狙っているのは胸に見えている赤い魔石を狙っているからだ。
弾が当たり、胸の魔石が砕け散る。
すると、骸骨はその場に崩れ落ちるのだ……。
これを繰り返していると、俺たちの後ろから声がかかった。
「二人とも、準備完了よ!」
「よし! カール!」
「早くやってくれ!」
「いくわよ! 【ターンアンデッド】」
呪文を唱えた、フローレルの身体から聖光が放射線状に放出された。
そして、カールが引きつけている骸骨たちが、この聖光に触れるとすぐにその場に崩れ落ち灰となって辺りに散らばった。
だが、すぐにダンジョンの奥から骸骨が集まってくる。
「ダメだ、すぐに集まってきやがる!」
「どうする?」
「このまま進みます! カールは骸骨たちを集めつつ、道を押し開いて!
ユウタはカールの援護を!
私とローラは、集まったガイコツに聖魔術を使いつつ支援を!」
「分かったぜ!」
「了解」
「分かりました!」
「私とシャーリーのことは気にしなくていいわ」
「では、突撃!」
わらわらと集まってくるガイコツに、カールが突貫して道を切り開きながら、俺が援護射撃をする。
フローレルとローラは、俺たちの後ろから援護の治癒魔術や聖魔術で援護してくる。
そして、フローレルとローラの魔力がつきかけた時、ようやく下への階段を発見。
すぐに、階段へ突入し第五階層へ入った!
「ハア、ハア、ハア、何よ、さっきの階層は!」
「ハア、ハア、ハア、もしか、して、暴走か?」
「ハア、ハア、あんなに、ガイコツって、いるんだな……」
「そんなわけ、無いわよ!
リルカさん、これってギルドの仕掛けた試練なのですか?」
「それにしては、ガイコツが多かったわ。
もしかしすると、意図的に増やしたってことかしら?」
「……先の階に進ませないために?
だとしても、私たちに連絡なかった」
「ちょっと、連絡取ってみるわ……」
リルカさんは、腰のバッグから手のひらサイズの水晶を取り出し握りしめる。
すると、淡く光りはじめると話始めた。
何度か話していると、話し終えたのかバッグに水晶を仕舞った。
「分かったわ、どうやら宝箱の罠を発動させたパーティーがいたらしいわ。
そしてそのまま逃げて、ガイコツが無限に湧き出たようよ」
「うわぁ、それで、どうするんですか?」
「大丈夫よ。ガイコツの無限湧きは、対処したそうよ。
私たちはちょうど、対処し終わった直後にあの階層に突入したみたいね」
「それで、あんなにガイコツと戦闘することになったのか……」
「だから、はい、これはギルドからのお詫びね」
そう言って、腰のバッグから二本のポーションをフローレルとローラに渡される。
色は少し淡い光を放つ水色。
「これは?」
「上級マジックポーションよ」
「ギルドからのお詫びだから、遠慮することなんてない」
「あ、ありがとうございます……」
「ありがとう……」
マジックポーションを受け取った二人は、恐る恐る口をつける。
そして、一気に飲み干した。
「ッはぁ、……美味しい」
「……確かに、マジックポーションなのに美味しい」
「覚えておいて、淡く光るポーションはすべてにおいて美味しいわよ」
「ん、ポーション特有の苦みがない」
「へぇ~」
どうやら、上級ポーションだから特別美味しいというわけじゃないみたいだ。
どんなポーションでも、淡く光るものは美味しいらしい。
そんな情報を得ている間も、カールは油断なく周りを見渡し警戒している。
俺は、銃のマガジンを交換して、次の戦闘に備えていた。
「さ、出発しましょう。
このままでは、十階層に到着するのは明日になってしまうわ」
「だな。それじゃあ、進むぞ」
「ええ、カールを先頭に、いつも通りに!」
「了解!」
休憩を終えた俺たちは、第五階層を進んで行く。
この第五階層も、洞窟型で続いている。
また、出現する魔物は、ガイコツではなくオークだ!
豚の頭に脂肪たっぷりの大きな体。
かといって、素早さもあり戦闘では、カールが大変そうだった。
何せ、攻撃を一身に受けていたし、剣が脂肪のおかげで通りにくい。
また、オークは基本三体で出現して、持っている棍棒で攻撃してくる。
ただ、連携は取ってこないからバラバラに相手ができた。
パンパンと何度も乾いた破裂音が響き、オークの頭に弾丸が何発も命中する。
だが、どれも致命傷とならず一匹のオークを倒すのに六発から十発使ってしまう。
「く、火力不足か!」
「ユウタ、足や腕を狙ってくれ!
動けなくするだけで、俺が止めを刺せる!」
「分かった!」
カールのアドバイスを受けて、狙いを頭から足の関節や腕の手首に切り替える。
すると、弾丸が当たるたびにオークの動きが鈍り、カールの負担が減っていった。
どうやら、俺は一人でオークを倒そうとして無理をしていたようだ。
今はパーティーで戦っているんだ、みんなを頼って戦おう……。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




