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人探しの調査で異世界に行きました  作者: 光晴さん


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第20話 クランジャパン



「今のは、ユウタ君のスキルなのかい?」

「え?」


見張りに戻ろうとしたとき、後ろから声を掛けられ振り返る。

そこにいたのは、リルカさんだ。

どうやら、俺がガンショップの扉を出現させていたのを見られたらしい。


「リルカさん……」

「どうなんだい? ユウタ君」

「……そうです、俺のユニークスキルです」

「そうか、それで何をしていたんだい?」

「銃の弾薬の補充です。

さっき確認にしたら、ほとんど無かったものですから……」

「なるほど。

それで、なぜ、そんなに警戒しているのかな?」

「そ、それは……」

「それは?」

「……あまり、俺のユニークスキルを見せたくないからです」

「……いいね。

その警戒心、いいよ。日本人のユウタ君」

「! な、何故それを……」


リルカさんの口から、日本人という言葉が聞こえた。

俺はすぐに、腰のホルスターに手を伸ばす。

いつでも銃が抜けるように、リルカさんに向かって構えた。


「おっと、すまない。余計に警戒させてしまったね」

「……」

「私は、クランジャパンのメンバーの一人だ」

「……クラン、ジャパン?

聞いたことないクランですね」

「それはそうだろう、まだ結成されて半年も経ってないからね。

日本人による、日本人のためのクラン。それが、クランジャパン。

メンバーの大半を、この世界に召喚された日本人が占めている。

もちろん、この世界に召喚されたすべての日本人が入っているわけじゃあない。

さっき、ユウタ君が言ったように、まだまだ認知度が低いからね」


そう言うと、リルカさんはギルドカードを見せてくれた。

金ランクのギルドカードだが、そこには所属クランの名前がある。

……確かに、クランジャパンとあった。


「偽造ということは……」

「残念だけど、ギルドカードは偽造できない。

これ自体が、一つの魔道具だからね。

偽造しようと弄った瞬間、ギルドの牢屋に瞬間移動する」

「……それじゃあ、ギルドカードが傷ついたりしたら……」

「そういうときは、瞬間移動しないよ。

ホント、よくできたカードだよ、まったく……」


リルカさんは呆れたという表情で、自分のギルドカードを見ている。

……一応、信用してもよさそうだ。


「あの、一つ質問いいですか?」

「ん? ああ、構わないよ。何でも聞いて?」

「リルカさんと同じ、金ランクのコータローさんも、クランジャパンに入っているんですか?」

「ああ、加入しているよ。

コータローが金ランクになった時、クランリーダーのアヤカ・フジミヤから打診されたそうだ。私たちのクランに入ってほしいってね。

コータローは、アヤカに世話になったことがあるから断れなかったんだろうね」


クランジャパンのリーダーは、アヤカ・フジミヤさんか。

日本人による、日本人のためのクランか……。

あの神殿にいろいろとアドバイスを残しているのも、クランの人たちなのだろうか?


「リルカさんは、神殿のことは知っているんですか?」

「ああ、最初に召喚される場所のことだろう?

あそこに貼りつけてあるアドバイスは、クランのみんながそれぞれで動いて貼りつけたそうだよ。

後から召喚される日本人のためにね」

「なら何故、クランジャパンのことを知らせないんですか?

召喚されたばかりの日本人なら……」

「それは、強制させて入らせるものじゃないからだよ。

……ユウタ君になら、話してもいいだろう。

クランジャパン結成の経緯を」

「な、何ですか?」


クランジャパン結成の経緯?

何かあったのだろうか?

ただの日本人を助けるためのクランじゃないのか?


「おそらくユウタ君も、レベルを上げて強くなってくれば、そのうちこの国を出て世界を見て回ろうと考えるだろう。

世界は広い。ユウタ君が想像している以上にね。

そして、いろいろな人々との交流も予想しているだろ?

君たち日本人なら、まず会ってみたいのがエルフかな?

……でもね、世界には悪人も多いんだ。

そして、世間知らずな日本人はカモになりやすい。

さらに、ある事案がクラン結成に繋がった」

「事案?」

「日本人を奴隷にすることだ。

それもわざと、ね」

「日本人を奴隷って、なぜ……」

「それは、日本人が強力なユニークスキルを持っているからだよ。

中には、国の軍隊とまともに戦えるレベルのものもあるらしい。

もちろん、国を豊かにしてくれるものもあるらしいから、囲いたがる気持ちは分かる」


つまり、召喚された日本人たちのユニークスキルが原因で奴隷にされそうになっているってことか?

それを防ぐために、クランを結成したってことなのか?


「じゃあ、クランを結成したのは日本人を守るため?」

「いや、そうじゃない。

クランを結成したのは、日本人を日本に返すためだよ」

「日本に、返す?」

「そう、日本に返すためだ。

奴隷落ちした日本人の大半が、日本への帰還を切望している。

そんな日本人のために、クランは結成され、日本への帰還方法を探しているということだ」

「日本へ帰れるんですか?」

「ユウタ君も、日本帰還を望んでいるのかい?

だけど、今のところ日本への帰還方法は発見されていない。

それどころか、召喚をした張本人すら発見できていないんだよ」


クランジャパンの目的は、日本への帰還方法を探すことか。

その間、クランメンバーの日本人たちで日本人を支えていこうというわけか。


「……でも、リルカさんはこの世界の人ですよね?

なぜ、日本人の帰還に協力を?」

「私の友人の一人が、帰還を切望している日本人だからだよ。

奴隷落ちさせられ、酷い目に合ったんだろうね。

助け出した時にはもう、心が壊れてしまっていたんだ。

その友人が、日本に帰りたいと呟いたのが切っ掛けかな……」


聞いててなんだけど、いたたまれないな……。

でもそれなら、なおのことあの神殿に貼り出して注意喚起しないといけないんじゃ……。


「それなら、強制してもいいんじゃないですか?

クランへの加入を……」

「クランには、奴隷落ちから助け出された日本人が多くいる。

他にも、同じように奴隷落ちした人達もね。

その人たちの生活を、支えているのもクランのメンバーなんだよ」

「それって、つまり……」

「そう、お金が必要なんだ。

ある程度の資金を稼げる人でないと、加入してもやっていけないんだよ……」


金、金か~。

日本でもお金が無いと、ほぼ生きていけないからな……。

奴隷落ちして、酷い目に合って日本帰還を切望する。

生きていくためには、お金が必要だがこのまま死んでもいいかなと思ってしまうくらい弱っている。

そんな人たちを助けたい。

同じ日本人の私たちが、といったところか……。


「それじゃあ、俺に声をかけてきたのは……」

「ああ、クランに加入を勧めに来たわけじゃないんだよ。

名前を聞いて、コータローと同じ日本人かもしれないと声を掛けたんだ。

今までは、かけるタイミングがなくてね……」

「……」

「ユウタ君、もし困ったことがあったらクランジャパンを頼ってくれ。

アドバイスぐらいなら、できるからね?」

「ありがとうございます……」

「それじゃあ」


そう言うと、自分のテントに帰っていった。

クランジャパンか、一応覚えておこう。








読んでくれてありがとう。

これからも頑張ります。

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