第18話 ダンジョンでの戦い
『グルルル』
最初に現れたのは、黒い狼が二匹。
一匹は、唸りながらこちらを警戒している。
もう一匹は、静観ってところだ。
「俺が唸る方を相手にするから、もう一匹は任せていいか?」
「了解、何とかやってみる」
「私たちが支援するわ」
「うん」
そう言うと、フローレルとローラは詠唱に入る。
白魔術の何かの呪文だろうか?
剣と盾を構え、唸る狼と対峙する。
俺も銃を構え、静観している狼と対峙する。
「静観している狼だけど、こっちを睨みつけてきているんだよな……」
「ユウタさん! 【プロテクション】」
「カールさん! 【プロテクション】」
「ハァ!!」
カールが、唸る狼に襲いかかり戦闘が始まった。
振り回す剣に当たらないように、避けていく狼。
かなりの素早さだ。
一方、俺の退治する狼はいまだ、動く気配がない。
たぶん、狼の間合いの外だから動かないんだろうと思う。
ならば!
パンパンと乾いた音を響かせ、銃弾を二発発射!
『ギャン!』
弾丸が撃ち抜いたという感じではない!
何かによって、狼が防いだ感じだ。
現に、撃たれて後方に飛び下がった狼は、俺を睨みながら唸り始めた。
『グルルル』
ダンジョンの魔物は強いな!
俺が相手をしたゴブリンとは、段違いの堅さだ。
おそらく、あの毛皮が固いのだろう。
ゆっくりと近づいてくる狼、その間も唸り声は聞こえている。
「単発がダメなら、連続で!」
そう言って俺は、狼に向けて連続で引き金を引く!
パンパンパンと何回も乾いた破裂音が響く、何発かは狼に命中し他は、狼が避けるか外れるかしている。
だが、狼が倒れるまでガンガン続ける。
狼は、横に飛び、前に飛び、斜め後ろに飛びと、避けながら被弾しながら近づいてくる。
そして、狼の間合いに入ったらしく、いきなり咆哮をあげた!
『ウオオーン!!』
「クッ!」
「ああ!」
「ヒッ!」
一瞬、身体が痺れたが、すぐに戦闘に復帰。
だが、俺の後方にいたフローレルとローラが悲鳴を上げて、その場に座り込んでしまった。
だが、今の俺にはどうすることもできず、引き金を引き続ける。
そして、弾切れになる。
カチカチと、引き金を引いても弾は出ない。
一瞬、狼が笑ったような気がしたが、ダメージは確実に蓄積していて足が震えている。
おそらく立っているのもやっとなのかもしれない……。
俺は素早く空になったマガジンを捨て、アイテムボックスから次のマガジンを取り出し、装填し、再び狼に向けて引き金を引いた。
連続する破裂音、狼も必死で避けているが、とうとう倒れこむ。
『グフゥー、グフゥー』
俺は銃を構えながら、ゆっくり狼に近づき、狼の顎の下へ銃口を突きつけた。
すると、狼は観念したのか大人しくなる。
「お前、初心者の相手する魔物じゃないぞ……」
そう言って、引き金を引いた。
パンと乾いた破裂音とともに、狼の顎を撃ち抜き絶命させることに成功。
すると、狼が光り、そのまま光の粒子へと変わっていった。
ダンジョンでは、魔物は死体も残らず消えるというのは本当なんだな……。
「フローレル、ローラ、大丈夫か?」
「わ、私は大丈夫……」
「わ、私も何とか……」
そして、すぐにカールのことを思い出し、そっちを振り向くと、今まさに狼に止めを刺すカールが見えた。
「はああっ!!」
『ギャン!!』
狼の首に剣を突き立て、肩で息をするカール。
身体のあちこちにキズがあることから、結構な死闘だったことがうかがえる。
「ローラ、回復魔法を」
「あ、は、はい!」
ローラがカールに近づき、回復魔法を使う。
少し詠唱があるが、すぐにカールを癒していた。
カールが倒した狼が、光の粒子になり消えると、その場には魔石が残った。
それを見て、俺の倒した狼が消えた場所を調べると、魔石を発見する。
だが、あきらかに俺の倒した狼の方の魔石が大きい。
もしかしたら、あれは上位種だったのか?
「カール、お疲れ様」
「ユウタも、お疲れ様」
「二人ともすごいわね、あの狼に対して一歩も引かないなんて……」
「はい、感心しました」
「はいこれ、魔石」
「おお、ユウタの方が大きいな。
もしかして、上位種だったのか?」
「分からないけど、あの堅さは普通の狼とは違うかな……」
そう話し合いながら、俺たちの後方にいるギルド職員のリルカさんとシャーリーさんを見た。
すると、二人とも近づいて来て拍手してくれた。
「すごいわね~、二人とも。
特に、ユウタ君だったかな? 命中率がすごい銃を使っているわね。
普通の銃だと、ああはいかなかったと思うわ」
「それと、カール君の戦いも良かったよ!
剣と盾の使い方が上手いわ! 初心者で、あそこまで使いこなせるなんて、将来が楽しみだね」
「あ、ありがとうございます」
「お二人にそう言ってもらえて、嬉しいです……」
カールは、少し照れていた。
「それと、フローレルさんにローラさん姉妹も、白魔術師としての支援魔術、結構持続力があるのね。
もう少しレベルを上げて、使える白魔術が増えれば狼の咆哮で倒れることもなかったでしょう」
「……あの、ユウタが相手した狼って、もしかして上位種じゃないですか?」
「どうして、そう思うの?」
「だって、魔石の大きさが違いますし、強さが違いました。
なんていうか、冷静だったようだし……」
「う~ん、もう少しかな。
でも、及第点をあげましょうか」
「シャーリーは、厳しいわね~。
私はそれで十分、魔物を観察できていたと思うわよ。
それで、あの狼のことね?」
「はい」
「カール君が相手をしていた方が、ダンジョンオオカミ。
ダンジョンの浅い階層で出てくる狼よ。
ゴブリンと組んだり、オークと組んだりするから注意が必要ね。
で、ユウタ君が相手をしたのは、ブラックダンジョンオオカミ。
ランクは、ダンジョンオオカミより二つほど上の魔物よ」
「だから、私たちはよく勝てたわね、と感心していたのよ」
な、なるほど、二ランクも上の魔物だったのか。
そんなのが、何故序盤の、それも最初の敵として現れるかな……。
そういえば、ここってギルドが管理していたんだよな……。
てことは、冒険者の実力を見るためのものだったってことか……。
あの狼にもし負けたら、リルカさんとシャーリーさんが出て来て、サクッと倒したんだろうね……。
「さあ、初心者講習は始まったばかりだよ?
どんどんダンジョンを進みましょう~」
「頑張れ~、初心者たち。
私たちも、通って来た道だ……」
そうか、リルカさんたちも初心者講習を受けていたんだ……。
ということは、日本人のコータローも受けたってことだよな……。
何となく、やる気が出てきた気がする。
俺たちは、再び警戒しながらダンジョンを進んで行った。
読んでくれてありがとう。
これからも頑張ります。




